●この記事のポイント
すかいらーくホールディングスは2026年12月期の純利益予想を22.4%増の205億円に上方修正し、10期ぶりの最高益を見込む。約2100店への配膳ロボット導入と卓上タブレット注文による省人化DXが人件費上昇を吸収し、地域別価格制と一人客に気を遣わせない接客が客単価を押し上げた構造を分析する。
「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」などを展開するすかいらーくホールディングス(HD)が、好調な業績を発表した。2026年8月13日、同社は2026年12月期(通期)の連結純利益(親会社の所有者に帰属する当期利益)予想を、従来の195億円から205億円へと5.1%上方修正した。前期(167億円)比では22.4%の増益にあたり、実現すれば10期ぶりの最高益更新となる。配当予想も1株26円から27円へ引き上げた。
背景にある上期(1〜6月)の実績も強い。売上収益は2424億5700万円(前年同期比9.7%増)、営業利益は168億5700万円(同20.9%増)、純利益は101億8100万円(同29.2%増)。既存店売上高は6.4%増で、客数・客単価がともに伸びた。1〜3月期だけを見ても純利益は前年同期比27%増と、四半期を通じて増益基調が続いている。
かつて「安さ」を武器にデフレ期を勝ち抜いてきたファミリーレストランの雄が、原材料費や人件費が上昇し続けるインフレ局面で、なぜここまで利益率を伸ばせているのか。単純な値上げだけでは、この数字は説明がつかない。すかいらーくの決算からは、コスト構造そのものを組み替える「現代の構造改革」の姿が浮かび上がる。
●目次
三種の神器がつくる「無言のオペレーション」
すかいらーくグループの店舗を訪れると、入店から退店までスタッフとほとんど会話せずに食事を終えられることに気づく。入り口の受付、卓上タブレットでの注文、料理を運ぶ配膳ロボット、会計時のセルフレジ・自動つり銭機(グローリー製の機器を全国規模で採用)という一連の仕組みが、注文から会計までを自動化している。
同社は2022年末までに、グループの主力業態を中心に約2100店舗へ配膳ロボットの導入をほぼ完了させた。ロボット本体の価格はメーカーやモデルによって幅があるものの、300万円台半ば(サブスクリプション契約であれば月額10万円程度)が目安とされる。時給1200〜1500円のスタッフが開店から深夜まで16時間稼働した場合の人件費は月50万〜60万円規模になる計算で、業界関係者の試算では導入コストを半年〜1年程度で回収できるとされる。配膳・下げ膳という定型作業をロボットに置き換えることで、店舗当たりに必要な人時(レイバーアワー)そのものを圧縮し、インフレによる時給上昇分を吸収する構造をつくった格好だ。
「配膳ロボットの本質的な価値は、単なる人件費の代替ではありません。スタッフを単純作業から解放し、接客の質や調理のクオリティ管理といった付加価値の高い業務に再配置できる点にあります。人手不足が慢性化する外食業界にとって、省人化投資はもはや選択肢ではなく前提条件になりつつあります」(外食産業コンサルタント・杉田誠氏)
一律値上げを避けた、きめ細かな価格戦略
すかいらーくはインフレ対応として、一律の値上げではなく精緻な価格戦略を採ってきた。2022年9月には「地域別価格制」を導入し、店舗を都市中心部・都市周辺・地方中心部・その他の4区分に分け、立地の賃料や競合状況に応じて価格に差をつけている。2025年7月の価格改定では、ガストの都市型店舗は対象商品の約7割を平均6%、地方型店舗は約6割を平均3%値上げする一方、ジョナサンは対象を約3割・平均5%にとどめるなど、業態・立地ごとに強弱をつけた。グループ全体では全商品の約5割を平均5%値上げする内容だった。