料金据え置きで容量増、ahamoが仕掛ける「ステルス値下げ」…追随を迫られる競合各社の次の一手は

 ITジャーナリストの小平貴裕氏は、「単月の増収効果だけを見れば値引きの方が分かりやすいが、解約率という中長期の収益指標に効くという意味で、容量拡大は非常に合理的な打ち手だ」と分析する。

容量拡大の先にある「ポイ活・エコシステム」への導線

 今回の施策は、単なる通信料金の見直しにとどまらない意味を持つ。データ容量の制約が緩めば、ユーザーは通信量を気にせず動画視聴やアプリ利用、EC決済を行いやすくなり、結果としてdポイントやd払いへの接触機会が増える。ドコモの発表資料によれば、dポイント経済圏の2025年度取扱高は17兆円を超え、単年で約2兆円伸びている。同社は2026年度のARPU(契約者1人あたり月間平均収入)を前年度比50円増の4,010円とする目標を掲げ、将来的には4,100円超を目指すとしている。あわせて2026年7月には「NTTドコモ・フィナンシャルグループ」を新設し、決済と銀行機能を一体で提供する体制のもと、2030年度に金融事業の収益を倍増させる計画を打ち出した。

 通信料金という単体の収益だけで採算を取るのではなく、決済・金融・エンタメを含めた顧客1人あたりの総収益(LTV)で回収するという発想である。データ容量の拡大は、その導線を太くするための一手と位置づけて読み解くことができる。通信サービス自体の値下げや増量を、顧客との接点を増やすための「入口」として設計する発想は、サブスクリプション型ビジネス全般に通じる論点でもある。

「単体のARPUだけを見ていると、容量拡大は収益を目減りさせる施策に見える。しかし決済や金融まで含めた顧客生涯価値で捉えれば、データ利用のハードルを下げることは、むしろ収益機会を広げる先行投資と言える」(同)

競合各社とMVNOへの波及効果

 2024年の30GB化は、業界内で「ahamoショック第2波」とも呼ばれた。ソフトバンクの「LINEMO」は20GB超過時の追加料金が相対的に割高となり、新規契約者向けに期間限定の対抗キャンペーンで応じたが、既存ユーザーの経年的な利用量増加には対応しきれていない面がある。KDDIの「povo2.0」は20GB相当のトッピングを維持しているものの、他社との差別化がより難しくなったとの指摘がある。2026年時点でも、povo2.0は月額2,780円の30GBオプションを用意するなど、30GB前後が主要3キャリアの一つの「標準的な容量」として定着しつつある。

 より大きな影響を受けているのはMVNO(格安SIM)各社だ。HISモバイルは2024年9月に月20GBを2,090円で提供開始した直後、ahamoの改定によって価格優位性を失う事態となった。これを受けて日本通信は50GBプランへの増量、mineoも30GB増量キャンペーンを打ち出すなど、各社が追随を迫られている。従来、MVNOは「20GB前後の中容量帯を、大手キャリアより数百円〜1,000円ほど安く提供する」ことを主戦場としてきた。しかし主要3キャリアのオンライン専用プランが軒並み30GB前後まで踏み込んできたことで、その中間層の顧客基盤そのものが競争の対象になりつつある。

「大手キャリアがオンライン専用プランで中容量帯まで踏み込んできたことで、MVNOは価格以外の付加価値をどう作るかが問われる局面に入った」(同)

 もっとも、MVNOには大手キャリアにはない料金体系の柔軟性や、特定用途に特化したプラン設計といった強みも残っており、一方的に不利になるとは言い切れない。3大キャリアとMVNOの垣根が薄れつつある2026年の通信市場において、容量競争は今後も続く公算が大きい。