料金据え置きで容量増、ahamoが仕掛ける「ステルス値下げ」…追随を迫られる競合各社の次の一手は

「値上げか値下げか」を超えた令和のプライシング思考

 原材料費や人件費の上昇に直面する業界は、通信業界に限らない。単純に価格を上げる、あるいは内容量を削るという二択ではなく、自社の事業構造上コストを抑えやすい部分に手を入れ、体感価値を引き上げるという発想は、他業種にとっても参考になりうる。もちろん、あらゆる業種で同じ手法が使えるわけではない。データ容量のように「上限を緩める」ことが比較的低コストで実現できる財と、原材料や人手を要する財とでは、前提となるコスト構造が異なるためだ。とはいえ、値上げか値下げかという二元論の外側に、体感価値の引き上げという選択肢があること自体は、業種を問わず示唆に富む。

 ahamoの事例が示すのは、値上げでも値下げでもない「据え置き+増量」という第三の選択肢が、解約防止と収益基盤の強化を同時に実現しうるということだ。ドコモがこの手法を2024年、2026年と繰り返している事実は、これが一過性の施策ではなく、再現性のあるプライシング戦略として機能していることを示唆している。通信料金という単体の採算だけでなく、決済や金融まで含めた顧客生涯価値で収益を設計する発想とあわせて、他業種のマーケティング・価格戦略を考えるうえでも一つの参考事例となりそうだ。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=小平貴裕/ITジャーナリスト)

【主な参照データ・出典】
ahamo 20GB→30GB増量(2024年9月発表・10月開始):日本経済新聞、ケータイWatch、NTTドコモプレスリリース(2024年9月12日)
ahamo 30GB→40GB「データ増量おためしキャンペーン」(2026年8月開始・終了日未定):ASCII.jp、ahamo公式FAQ
シュリンクフレーション動向・食品値上げ品目数:帝国データバンク「食品主要195社」価格改定動向調査(2025年12月26日)
ドコモのARPU目標・dポイント経済圏取扱高・金融事業戦略:ケータイWatch(ドコモ決算関連記事)
MVNO・競合各社の反応:Impress Watch「石野純也のモバイル通信SE」、ASCII.jp