歩数計から「行動変容エンジン」へ…生成AIヘルスケア、グーグル・アップルvs国内勢

 第三に薬機法および景品表示法である。AIの回答や広告表現において、「○○病が予防できる」「若返る」といった断定的な効能効果を示す表現は、医薬品的な効能効果を標榜するものとして薬機法に抵触するおそれがあるほか、合理的根拠のない優良誤認表示として景品表示法上も問題となりうる。消費者庁も健康食品の広告表現について繰り返し留意事項を示しており、生成AIが自動生成する文章についても、人間の広告表現と同じ基準でのチェック体制を敷く必要がある。

「生成AIの進化により、ヘルスケアデータは『貯めるもの』から『リアルタイムで活用するもの』へと役割を変えた。ただし、AIが示す回答が医行為(診断)と受け取られない仕組み設計と、機微なヘルスケアデータをどう安全にB2B活用するかというデータガバナンスの設計こそが、この事業の成否を分ける最大の境界線になる」(同)

「パーソナルヘルスケアAI」が描く予防医療の未来

 パーソナルヘルスケアAIをめぐる競争は、効果・効能を誇大にうたうことで勝敗が決まる市場ではない。むしろ「データに基づいた客観的な自己管理を、どれだけ地道に、かつ安全に支援できるか」という信頼の積み重ねによって、社会への定着度合いが左右される分野だと言える。

 生成AIによって生体データが「行動変容エンジン」へと姿を変えつつある今、自らの健康データをAIとともにマネジメントすることは、遠い将来の話ではなく、すでに始まりつつある日常の一部になっている。そのデータ基盤を、どの企業が、どのような法的・倫理的な設計のもとで築き上げるか。この攻防の帰趨が、次世代のヘルスケア産業を支えるインフラの姿を決めていくことになりそうだ。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=小平貴裕/ITジャーナリスト)