グーグル、フィンランドに2.3兆円投資…ロヴィーサ原発22年契約の裏側

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●この記事のポイント
グーグルがフィンランドに130億ユーロ(約2.3兆円)を投資し、電力大手フォータムと原子力発電所ロヴィーサの22年間PPAを締結。AI電力需要の急増を背景にNATO加盟国の原発を選んだ理由と、北海道・東北の送電網課題を抱える日本への示唆を、一次情報に基づき客観的に解説する。

 グーグルはフィンランドにおいて今後2年間(2027〜2028年)でAIインフラに130億ユーロ(約2.3兆円、1ユーロ=179円換算)を投じると発表した。過去最大級となる欧州投資の柱は、同社が2011年から稼働させてきたハミナのデータセンター(かつての製紙工場を転用した施設)の拡張である。

 だが今回の発表で注目すべきは、金額そのものではない。フィンランドの電力大手フォータムと結んだ、22年間という異例の長期にわたる電力購入契約(PPA)だ。契約の裏付けとなる電源は、同国南東部に立地するロヴィーサ原子力発電所である。運転開始から半世紀近くが経過した加圧水型軽水炉2基(それぞれ出力50.7万kW)の運転延長を支える契約であり、2028年の稼働開始後、2030年代から2040年代にかけて発電量の最大50%をグーグルが調達する計画だ。

 グーグルは同時に、陸上風力の新規開発や94メガワット規模の系統用蓄電池の導入にも合意しており、原子力・再エネ・蓄電池を組み合わせた電源ポートフォリオを構築している点も見逃せない。建設期間中(2027〜2028年)には現地で3万7000人分の雇用を支える見込みで、地域コミュニティへも4年間で3100万ユーロを投じるとしている。単なる箱モノ投資ではなく、電力・雇用・地域社会までを一体で設計している点に、この投資の本気度がうかがえる。

 なぜ「脱炭素」を掲げてきたメガテックが、いまロシアと国境を接する国で原発を軸にした投資に踏み切ったのか。そしてこの決断は、同じく電力制約に直面する日本のビジネスパーソンに何を突きつけているのか。

●目次

「脱炭素」より「24時間の安定」

 生成AIが引き起こしている電力需要の増加は、従来のIT産業の常識を超えている。検索エンジンや動画配信とは桁違いの演算処理が、24時間365日休みなく続く。国際エネルギー機関(IEA)の分析によれば、世界のデータセンターの電力消費量は2030年までに約9450億kWhへと2024年比で倍増し、日本の年間総電力消費量をわずかに上回る規模に達する見通しだ。グーグル自身も今回の発表文の中で「AIサービスの拡大に伴う電力需要の増大」を投資の背景として明言している。

 こうした需要に対し、太陽光や風力といった再生可能エネルギーは出力が天候に左右され、変動が避けられない。フィンランドは北欧の中でも再エネ導入が進んだ国だが、グーグルが最終的に求めたのは「クリーンでありながら24時間途切れない電源」だった。ロヴィーサ原発は年間約80億kWh(8TWh)を安定的に発電しており、この安定性こそがデータセンターの稼働率を左右する。

 もっとも、これは「グーグルが原子力に転向した」という単純な話ではない。同社は再エネ・蓄電池への投資も並行して進めており、原子力はあくまで電源構成の一角を担う「保険」に近い位置づけだ。ただし、その保険に22年という長期の資金と信用を投じた事実は重い。AIをめぐる競争の主戦場が、もはやアルゴリズムやチップの性能だけでなく「電力をどれだけ安定的に確保できるか」に移りつつあることを、この契約は象徴している。