つまり「増税でPBの価格優位が自動的に広がる」わけではない。差がつくとすれば、税以外の部分、すなわち流通コストや販促費、利幅をどこまで圧縮できるかだ。
参考になるのが2020年10月の改正時の対応である。トップバリュは新ジャンル「ベストプライス バーリアル」を刷新し、350mlの単缶価格を78円に据え置いた。6缶パックやケースは値上げして、負担を分けた形だ。物流面では、全国の物流センターでの通過型配送を広げて効率化を進めたと説明している。「どの価格を守り、どこで吸収するか」を小売が設計できることが、PBの強みだ。
規模の裏付けもある。トップバリュの2025年度(2026年2月期)の売上高は約1兆2000億円の見通しで、イオンは2030年度に2兆円を掲げる。
ただし、PBとNBを単純な対立で見るのは正確ではない。バーリアルは2020年時点でキリンビールが製造していた。酒類PBの多くは大手メーカーの工場が担っており、メーカーにとっては稼働率を支える取引でもある。
「定額課税の下では、低価格帯ほど値上げ率が高く見えます。消費者は円の差より、棚札の変化に反応します。そのうえで、単缶の見せ価格を守れるかどうかが、PBの評価を左右するでしょう」(同)
税額がそろえば、麦芽比率を抑えて税区分を分ける理由は薄れる。大手メーカーは、新ジャンルの看板商品をビールへ移す決断をした。
サントリーは2025年9月、「金麦」シリーズの麦芽比率を50%以上に引き上げ、今年10月からビールとして発売すると発表した。金麦の2024年の販売数量は3041万ケースで、新ジャンル最大のブランドだ。キリンの「本麒麟」(同1360万ケース)もビールへの移行が報じられ、サッポロも「GOLD STAR」などで同様の動きを見せる。
これは棚の構造を変える。NBの主力がビールへ上がれば、従来の「最安値帯のビール風味飲料」の棚は薄くなる。その空白を埋めやすいのが、小売が価格を決められるPBだ。
動きはすでに出ている。イトーヨーカ堂は9月、PBの新商品「セブン・ザ・プライス ラガービール」を発売した。日本経済新聞は1本173円と報じている。減税となるビールの領域で、小売が低価格帯の選択肢を出し始めた形だ。イオンがビールのPBをどう位置づけるかは、現時点で公表されていない。
一方、市場全体は縮んでいる。大手各社の推計では、2026年1〜6月のビール類の販売数量は前年同期比で約3%減。物価高による節約志向が陰を落とす。小さくなるパイのなかで、同じ「ビール」の棚をNBとPBが分け合うことになる。
「メーカーは麦芽比率や味で、小売は価格で勝負する構図がはっきりしてきます。ただ、ビールはブランドへの忠誠度が高いカテゴリーです。安いだけでは定番になりにくいといえます」(同)
缶チューハイなどRTD(そのまま飲める酒)の税額は、350mlあたり28円から35円になる。元の税額が低いぶん、引き上げ幅は25%に達する。RTDは近年、ビール類からの飲み替えで市場を広げてきたが、業界紙は2026年通年の動向を見通せないとする。各社は糖類ゼロや無炭酸など、値段以外の選ばれる理由づくりを急いでいる。
RTDはNBでも安さが選ばれる理由のひとつだった。そこに定額の増税が乗れば、価格帯の棚でPBが比較される場面は増えるだろう。ただし、前述のとおり税額は同じだ。PBが優位に立てるかは、税以外のコストをどこまで抑えられるかにかかっている。
見落とせないのが、酒税のかからないノンアルコール飲料だ。マクロミルの調査では、ビール・発泡酒の購入者の27.2%、チューハイなどの購入者の28.8%が、改正をきっかけにノンアルを買う可能性があると答えた。改正の認知率は全体で39.0%にとどまる。値上げを店頭で初めて知る人は少なくないはずだ。