もう一つ、日本はもともとiPhoneの利用比率が国際的に見て突出して高い市場だった。大手キャリアの販売奨励策が強力だった時代の名残もある。現在の変化は「転落」というより、世界の標準的な分布に近づく動きとも読める。
「円建ての価格が上がる一方で、家計が使える可処分所得の伸びは緩やかです。スマホは生活必需品ですから、高額機に払えない分は、機種のランクを下げるか、使う期間を延ばすかで調整されます。今回の数字は、家計のそうした防衛行動がデータに表れたものと見ています」(ファイナンシャルプランナー・荒井友美氏)
日本のスマホ市場は、ゆるやかに二層に分かれつつある。上の層は、ProやDuoを選び、アップルのサービスに深く入り込んだ利用者。下の層は、AQUOSやPixel、Galaxy、中国メーカーのミドルレンジ機、あるいは旧型や整備済みのiPhoneで用を足す利用者だ。後者の中には、iPhoneをやめたのではなく「最新型を買うのをやめた」人も相当数含まれているはずだ。
この流れが続くかどうかは、いくつかの変数に左右される。春に出るとみられる標準モデルのiPhone 18がいくらで出るか。36万円台からというDuoが、どこまで数を売るか。円相場と実質賃金の回復が続くか。そして2025年12月に全面施行されたスマホソフトウェア競争促進法(いわゆるスマホ新法)で、代替アプリストアなどの選択肢が広がり、OSをまたぐ乗り換えの手間がどこまで下がるか。
アップルがシェアの数字に慌てている様子はない。決算を見る限り、その判断には合理性がある。一方で、利用者の母数に支えられたサービス事業を持つ以上、「持てる人だけが持つ端末」に振り切ることも考えにくい。54.1%という数字は、日本の消費者が価格に対してより冷静になったことの表れであり、アップルがそれを一定程度まで許容しているという構図を示している。
読者にとっての実務的な結論はシンプルだ。自分の使い方に、その差額を払う理由があるか。OSの名前ではなく、数年間の総支払額と必要な機能で選ぶ。スマホ選びが「見栄」ではなく「計算」で語られるようになったこと自体が、今回のデータのいちばん大きな変化かもしれない。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=小平貴裕/ITジャーナリスト)
【主な参照データ・出典】
MMD研究所「2026年8月スマートフォンOSシェア調査」
MMD研究所「2026年2月スマートフォンOSシェア調査」
すまほん!!(調査対象年齢の変更について)
NTTドコモ モバイル社会研究所(年代別OS比率)
Apple Newsroom「Apple、iPhone Duoを発表」
セレクトラ(iPhone 18 Pro/Duoの容量別国内価格)
ケータイ Watch(9月の既存モデル値上げ)
MM総研「世界のiPhone販売価格調査」(2026年7月)
Apple Form 10-Q(2026年度第3四半期、日本セグメント)
Apple 決算発表(2026年度第3四半期)
日本経済新聞(7月の実質賃金)
かいけつ!人事労務(2025年度実質賃金)