iPhone30万円超えでシェアはAndroid過半に…それでもアップル日本売上は13%伸長

 買い方の変化も効いている。2023年12月の制度改正で、回線契約とセットの端末値引きは原則4万円(税抜)が上限になった。20万円を超える端末の負担を、店頭の割引で大きく圧縮する余地はかつてより小さい。

「若い世代の『iPhoneでないと困る』という感覚は根強く、ここはすぐには崩れないでしょう。動いているのは、スマホを道具として割り切れる層です。価格がある線を超えたとき、その先の差額を払う理由を自分で説明できない人から順に移っている、と見るのが実態に近いと思います」(ITジャーナリスト・小平貴裕氏)

アップルは「台数」より「1台あたり」優先か

 利用者比率が下がるなかで、アップルの業績はどうか。7月30日に発表された2026年度第3四半期(2026年4〜6月)決算で、売上高は1094億ドルと前年同期比16%増えた。iPhoneは約542億ドルで21.7%増、サービス部門は約307億ドルで12.1%増。サービス部門の粗利率は75.6%に達し、有料サブスクリプション数は15億を超えた。

 注目したいのは日本だ。同期の日本セグメント売上高は65億5400万ドルで、前年同期の57億8200万ドルから約13%増えている。円安でドル換算の売上が目減りしやすい環境のなかでの増収である。同セグメントの営業利益は約30億ドル、売上に対する比率は4割を超える。

 この数字から読み取れるのは、アップルにとっての優先順位だ。台数シェアよりも、1台あたりの売上と、その後に続くサービス収入を重く見ている。上位モデルの単価が上がり、iCloudやアップルミュージック、アップストアの課金が積み上がれば、利用者の一部がAndroidに移っても収益は伸びうる。中間層の一部流出は、少なくとも現時点では経営を揺るがす規模ではない。

 ただし、アップルが中価格帯を捨てたわけではない点も押さえておきたい。12万円台のiPhone 17eを残し、標準モデルは春に回すとみられる(メモリー価格の高騰が背景と報じられている)。秋に高価格帯で利幅を確保し、春に裾野を拾う「二段構え」と見るほうが自然だろう。なお、アップルは国別の販売台数を開示していない。

「アップルの強さは、一度囲い込んだ利用者から長期間にわたって収益を得られる点にあります。台数が多少減っても、単価とサービス収入で補える構造になっている。ただ、サービス事業はある程度の利用者規模が前提です。上位機種への偏りが進みすぎれば、将来のサービス収入の土台が細るリスクもあります」(証券アナリスト・堀野剛志氏)

「ラグジュアリー化」の比喩はどこまで当たるか

 値上げを続けても、業績は過去最高水準を更新している。この点だけを見れば、iPhoneは高級ブランドの戦い方に近づいている。ただ、比喩をそのまま当てはめると見誤る部分もある。バッグは1点売れば取引が終わるが、iPhoneは売った後にアプリ課金やクラウドの収入を生む「入り口」だ。開発者が参加するのも、利用者の母数があるからこそである。利用者を絞り込みすぎることは、Appleにとっても得策ではない。

 日本の事情も、単純に「iPhoneが高い国」というわけではない。MM総研が7月に公表した39の国・地域の価格調査では、7月の値上げ後もiPhone 17 Pro(512GB)は日本が最安で、iPhone 17は3番目の安さだった。値札そのものは世界的に見て高くない。重いのは、円安と所得の伸びの弱さが重なった「体感価格」のほうだ。

 実質賃金は2025年度まで4年度連続でマイナスだった。2026年に入ってからは7月まで7カ月連続でプラスに転じ、7月は2.4%増と持ち直しの兆しもある。それでも、数年分の物価上昇を取り戻したと実感できる水準にはまだ届いていない、という人は多いだろう。