ただし、ユニクロが天候を読み当てているわけではない。今年6月の国内既存店売上高は14.1%減、8月も1.3%減で、いずれも低温や天候不順が理由とされている。天候に振られる点は他社と変わらない。
「天気は当たらない、という前提で組んだ会社と、去年までの傾向に賭けた会社の差が、たまたま今年の9月に出たということです。予測を外さない仕組みより、外れたときの損をどこまで小さくできるか。SCMの実力はそこで測るべきでしょう」(流通コンサルタント・永田由紀氏)
では、天候の振れに対する耐性は、どんな設計から生まれるのか。製造小売の代表的な3社を比べると、それぞれ別の問題を解こうとしていることがわかる。
・各社の比較項目は、主に解いている問題、生産の置き方、強みが出る場面
ZARA(インディテックス)
トレンドの変化
低価格と品質の両立
天候・季節の振れ
ニトリ
消費地に近い国の工場をシーズン中の追加・修正に活用
ベトナムなどの自社工場、物流子会社まで内製
型数を絞った定番・機能商品を大量生産
ユニクロ
流行の早い立ち上がり
計画どおりの安定供給
定番品の販売量の上下
ZARAを展開するスペインのインディテックスは、スペイン、ポルトガル、モロッコ、トルコといった近接国の生産拠点を組み込み、シーズン中に売れ筋を見て追加生産や修正をかける仕組みで知られる。ただ、スペインの業界メディアModaesによると、2025年度の年次報告では取引工場数に占めるアジアの比率が約62%に上がり、近接地域は約38%に下がった。米国の関税政策などを背景に、速さとコストの配分を見直している様子がうかがえる。
ニトリは「製造物流IT小売業」を掲げ、商品企画から海外の自社工場での生産、物流子会社ホームロジスティクスによる配送までをグループで担う。家具は気温で需要が大きく揺れる商品ではない。計画した量を低コストで安定して流す設計は、扱う商材に合っている。
ユニクロの特徴は、ヒートテックやニットのように型数を絞った商品を大量に作る点にある。品番が少なければ、売れ行きの変化を追う対象も少なくて済む。増産か、配分の変更か、値引きか。判断の単位が小さく、季節の立ち上がりが前後しても、同じ商品の販売量の上下として吸収しやすい。トレンド商品が中心の企業では、こうはいかない。
この設計を下支えしているのが、2017年に始まった「有明プロジェクト」だ。同社は同年2月、東京・有明に本部機能を兼ねた物流拠点を開設し、柳井正会長兼社長は自社の目指す姿を「情報製造小売業」と表現してきた。
2018年にはマテハン大手のダイフクと提携し、有明倉庫をEC専用の自動倉庫として本格稼働させた。全商品にRFID(電子タグ)を付け、入荷から検品、保管、出荷までの大部分を自動化している。当時の発表では、入庫生産性は80倍、出庫生産性は19倍、省人化率は90%に達したという。その後、ピッキングの自動化に向けてMUJIN、仏Exotecとも提携した。
RFIDの価値は、作業の効率化だけにとどまらない。単品ごとの在庫が正確に見えていなければ、どの店舗にどれだけ補充するか、いつ、どこまで値引くかといった判断は勘に頼るしかなくなる。ユニクロは毎週のチラシで期間限定価格を打ち出しており、9月下旬から10月初旬にかけてはメリノセーターなどが初めて特別価格になった。値引きは粗利を削る手段でもある。正確な在庫データがあってはじめて、「どこまで下げるか」を数字で決められる。