「RFIDを入れた企業は多いのですが、在庫の数が合うようになった段階で止まってしまうケースが目立ちます。その数字を補充や価格、次の生産の判断にまでつなげられるかどうか。差がつくのはそこからです」(同)
アパレル以外の企業にも通じる示唆は、次の3つに整理できる。
1.月次の数字は分解して読む
売上高だけを見ていると、天候、値上げ、休日数、前年の反動といった要因が見えなくなる。客数と客単価を分け、前年の基準と並べるだけで、「実力」と「追い風」の境目はかなり見えてくる。
2.予測精度より、修正の速さに投資する
需要予測の精度を上げる努力は欠かせない。ただ、気候そのものが変わりつつある今、過去の経験則が通用しない年は必ず来る。発注から店頭に並ぶまでのどこを短くできるか、どこで数量を調整できるかを洗い出すほうが、利益への効き目は大きいことが多い。
3.部門ごとの目標を「在庫」でそろえる
営業は欠品を嫌い、財務は在庫を嫌い、生産は計画の変更を嫌う。SCMがうまく回らない企業の多くは、技術より先に、この目標のずれでつまずいている。
「需要予測のシステムを入れる前に、営業、生産、物流が同じ在庫の数字を見て話せる会議体をつくる。地味ですが、そこからしか始まりません」(SCM領域の研究者)
9月の10.8%増は、ユニクロが需要を取りこぼさない体制を持っていることを示した。一方で、伸びの多くが天候と前年の反動によるものであることも事実だ。
注目したいのは今後の客数の動きだ。岡崎健CFOは7月の決算会見で、円安を受けて秋冬商品の一部を値上げせざるを得ないとの考えを示していた。9月は値上げと秋物需要が重なって客単価が大きく伸びたが、客数は前年を下回っている。価格の上昇を客数が受け止め続けられるかどうかが、この冬の焦点になる。
SCMの面でも課題は残る。同社は4月、中東情勢を背景に、東南アジアの生産拠点からの航空輸送が難しくなっていると説明していた。足元の業績は好調で、2026年8月期の連結業績予想は7月に上方修正され、売上収益3兆9700億円、純利益5000億円と、いずれも過去最高を見込む。天候の振れに強い供給網が、地政学リスクや原料高といった別種の振れにもどこまで耐えられるか。10月以降の月次と、近く発表される通期決算で確かめていきたい。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=永田由紀/流通コンサルタント)