(2)グループ再編と取引関係の見直し
太陽ホールディングスの例のように、大株主の持ち分整理と非公開化はセットで起きやすい。親子上場や株の持ち合いの解消が進めば、系列を前提にした取引慣行も見直しを迫られる。仕入れ先や販売先にとっては、価格交渉の前提そのものが変わる可能性がある。
(3)「買われる」ことの意味が変わる
PEファンドは、数年後に売却することを前提に投資する。再上場や事業会社への売却を経て、企業がどう変わったか。その実績が積み上がるにつれて、外資による買収は「身売り」ではなく、成長資金と経営の知見を取り入れる手段として見られるようになっていくだろう。ただし、それは買収後に成果が伴った場合に限られる。市場の評価を決めるのは、これから数年の「出口」の中身だ。
外資による日本企業の買収が増えているのは、為替だけで説明できる一過性の現象ではない。資本効率を問う市場改革と、経営者の世代交代という人口構造の変化が重なった結果だ。金利上昇による資金調達コストの増加は制約になりうるが、当面はこの流れが続くとみるのが自然だろう。
働く側にとって、変化は評価のあり方に表れやすい。ファンドの傘下では、事業ごとの採算と目標がはっきりし、それに対する成果が問われる。社内の調整力よりも、自分の仕事がどれだけの利益やキャッシュを生んでいるかを数字で説明できる力が重みを増すだろう。取引先が買収されれば、自社が当事者でなくても交渉の前提は変わる。
「買収は悪」とも、「外資が入ればうまくいく」とも言い切れない。確かなのは、自社の事業がどれだけの資本を使い、どれだけのリターンを生んでいるのか。それを自分の言葉で説明できる人の価値は、株主がどこの国の資本であっても上がっていくということだ。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=堀野剛志/証券アナリスト)
【主な参照データ・出典】
レコフデータ「2026年1-9月期のM&A件数、3883件で最多更新」(2026年10月2日)
レコフデータ「M&A・グループ内再編による上場廃止案件数、2025年142件」(2026年2月13日)
日本経済新聞「日本企業M&A、1〜9月は過去最多 外資による買収額はや前年超え」(2026年10月13日)
政経フォーカス「外資の買収額6.2兆円、過去最多ペース」(日経報道の紹介、2026年10月13日)
帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」(2025年11月21日)
ジェイ・フェニックス・リサーチ「資本コスト開示の2026年アップデート」(東証資料の整理。一次資料は東証2023年3月31日・2026年4月28日公表)
財務省「外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律」について
M&A Online「太陽ホールディングス、米投資ファンドKKRによるTOBで株式を非公開化」(2026年4月1日)