仙台駅前が“巨大な空き地”に…全国で進む「大型再開発の停止ドミノ」の真相

“巨大な空地”は今後も増えるのか

 結論から言えば、この現象は今後さらに増えるとみられている。

「老朽化した建物の更新時期は日本全国で2025~2035年に集中しており、巨大施設の建て替え需要は高まっている。しかし建設費と労務費の高止まり、需要の変動、施工体制の制限といった要因によって、計画そのものが頓挫するケースが増える可能性が高い。

 ただしこれは、都市の衰退を意味するわけではない。むしろ『無理な再開発を選別し、持続可能な計画だけが実行される時代への移行』とも言える。過剰な設備投資が抑えられ、本当に必要とされる用途に資源が集中する可能性が生まれる。

 建設業界では、2023~26年が建設費の高騰期のピークになるとみられている。この間は大型再開発の停滞が続くが、2027年以降、資材価格の安定や省人化技術の普及によって、施工体制が徐々に安定するとされる。2030年頃には、コスト構造も一定程度正常化し、中規模再開発が中心となる落ち着いた市場に戻る可能性が高い」(同)

 つまり、仙台駅前の計画中止は、構造変動の「真ん中」で起きた象徴的な出来事だといえる。

仙台の空地化は“衰退”ではなく、都市戦略の第二フェーズ

 では、仙台駅前の巨大な空地は、この先どうなるのか。

「現時点では未定だが、都市としてのポテンシャルを考えれば、長期的には必ず再開発の需要は生まれる。むしろ、今無理に建てないという判断が、より良い再開発の“仕切り直し”につながる可能性がある。

 建設業界の常識では、『事業環境が適正でない時期の着工ほど危険なものはない』。仙台駅前は、短期的には空地として残るが、中長期的には、より現実的で収益性のある計画が登場する余地が生まれたと言えるだろう」(同)

 仙台駅前の再開発断念は、単なる事業の失敗ではない。建設費の急騰、人手不足、需要構造の変化など、全国の都市が直面する構造問題を象徴的に示している。今後、日本の都市開発は、量の拡大から質の選別へと重心が移る。仙台駅前の空地は、その転換点を示す象徴的な空白地帯なのである。

 そして空白は、必ずしもマイナスではない。適切な需給のもとで再構築される都市こそ、次の10年に成長する可能性を秘めている。仙台の駅前はいま、“止まった”のではなく、“待っている”のである。都市の新しいフェーズが訪れるその時を。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)