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匂いに関しては譲れない。
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とりあえず「ちぇすとー!」と言ってクラウス君にチョップをかまし、真っ赤になってるマイコちゃんを救出する。
「痛いなぁー、ひどいよエンリさんー」
「うっさいセクハラ男!清らかな乙女を汚すなっちゅーの!」
イケメンキラキラ男の涙目を物ともせず、マイコちゃんを正気に戻しつつ、冷たい飲み物を頼んで三人で話すことにした。クラウス君の良いニュースには私も含まれてるらしい。
あ、もしやアレかな?
「クラウス君の良いニュースって、日本に帰った話?」
「そうそう。俺この前さ、日本に帰ったんだよ。家族に会えたんだよ!」
「…………え?」
マイコちゃんの綺麗な薄茶色の瞳に、みるみる透明な膜が盛り上がってくる。
睫毛長いなぁなんてぼんやり見惚れてたら、クラウス君はひたすらマイコちゃんに両親や妹のことを話す。いやいやそうじゃなくって。
「そう!だからマイコちゃんも帰れるよ!何年もは無理だけど、旅行感覚で帰ることが出来るよ!」
笑顔で語るも、マイコちゃんはポロポロ涙を流すだけで、何も言えないでいる。
嬉しいのかな?家族に会えるから?良かったね?
「マイコ、どうした?嬉しくないの?」
「えっ…えぐ…嬉しいです…クラウス様の…ご家族…喜ばれたでしょう…」
そっちか!!
そうか、クラウス君に恩を感じて頑張って追いかけて、でも頑張っても日本にいるクラウス君の家族に会わせるのは、どうしても出来なかったんだもんね。
「エンリさん、ありがとう、ありがとうございます!!」
わんわん泣くマイコちゃんの隣で、真っ赤になってるクラウス君。レアだ!めっちゃレアだ!!
だよねぇ、自分よりもクラウス君優先の、マイコちゃんの一途さたるやですよぉ。ニヤニヤ。
「…っ!!笑うな!!」
へいへい、すみませんね。
「そだクラウス君、さっき隠蔽とかで見えなくなってたマイコちゃんを、どうやって見つけたの?」
「ん?ああ、俺はマイコの場所なら分かる。前世からずっと分かってたよ」
「へ?ストーカー?」
「あははっ、そうかもな。逆にマイコも俺の場所分かるんだって」
「ぐす……はい、匂いで分かります」
「匂い?もしかして甘かったりする?ベリー系の?」
「な、なんで……エンリさんもしかして……」
「はい違う。私の好きな香りは柑橘系とかシトラスとか。オルがドンピシャなのよう!大胸筋をくんかくんかするのが堪らない!」
「うわ、ヘンタイ…」
「ご、ごめんなさい、私も匂いで、ヘンタイで……」
クラウス君の私を蔑む目を見て、マイコちゃんが落ち込む。
「あ、違う!違うって!俺だってマイコのうなじとかずっと見てたし!」
「うわ、ヘンタイ…」
「やかましい!」
笑顔になったマイコちゃんを見て、ホッとするクラウス君。
「まぁ、お互いの親に挨拶もできることだし、私もちょいちょい帰る予定だから、いつでも声かけてよ。オルがケータイ魔道具持ってるんだし」
「ん、お願いする」
「ありがとうエンリさん」
マイコちゃんの笑顔って癒されるわぁ。
「クラウス君はともかく、マイコちゃんは王都を離れていたって言ってたけど、こっちからも連絡って取れるの?」
「マイコにもケータイ持たせてるから大丈夫。隠密として動いてもらってるし、情報は早い方が良いし、心配だから一日三回は定時連絡必須にしてる」
「過保護だわぁー」
「うるさい!マイコが可愛いからだ!」
どさくさに紛れてマイコちゃんに抱きつくクラウス君。マイコちゃんはアワアワしながらもクラウス君の匂いをくんかくんかするのを、匂いフェチである私は見逃さなかった。ふふふ。
「なんか隠密って大変そうなんだね?危険とか?」
「まぁ、吟遊詩人として動いてますけど、神様に加護ももらってますし、他国と戦争をしているわけでもないので、比較的安全ですよ。ただ……」
マイコちゃんはクラウス君を見た。頷くクラウス君。
「オルフェウスさんの協力も必要だと思うので言いますが、魔王を支持する人間が隣国で見つかりました。最近増えている盗賊も何かしら関係があるかと」
オルは、盗賊退治に向かっていたはずだ。思わず青ざめると、姿を消していた神様たちが現れる。
びっくりしているクラウス君とマイコちゃんはとりあえず置いといて、私は指示を送る。
「シナトベは状況把握して私に連絡。カグツチはオルの援護。タケミカヅチとフツヌシは冒険者として討伐隊に加わって。ミヅハノメはここに残って私達を守って」
「「「「「応」」」」」
すっかりぬるくなった飲み物を前にして、私は『魔王を支持する人間』という言葉に、うっすら寒気を覚えるのだった。
「痛いなぁー、ひどいよエンリさんー」
「うっさいセクハラ男!清らかな乙女を汚すなっちゅーの!」
イケメンキラキラ男の涙目を物ともせず、マイコちゃんを正気に戻しつつ、冷たい飲み物を頼んで三人で話すことにした。クラウス君の良いニュースには私も含まれてるらしい。
あ、もしやアレかな?
「クラウス君の良いニュースって、日本に帰った話?」
「そうそう。俺この前さ、日本に帰ったんだよ。家族に会えたんだよ!」
「…………え?」
マイコちゃんの綺麗な薄茶色の瞳に、みるみる透明な膜が盛り上がってくる。
睫毛長いなぁなんてぼんやり見惚れてたら、クラウス君はひたすらマイコちゃんに両親や妹のことを話す。いやいやそうじゃなくって。
「そう!だからマイコちゃんも帰れるよ!何年もは無理だけど、旅行感覚で帰ることが出来るよ!」
笑顔で語るも、マイコちゃんはポロポロ涙を流すだけで、何も言えないでいる。
嬉しいのかな?家族に会えるから?良かったね?
「マイコ、どうした?嬉しくないの?」
「えっ…えぐ…嬉しいです…クラウス様の…ご家族…喜ばれたでしょう…」
そっちか!!
そうか、クラウス君に恩を感じて頑張って追いかけて、でも頑張っても日本にいるクラウス君の家族に会わせるのは、どうしても出来なかったんだもんね。
「エンリさん、ありがとう、ありがとうございます!!」
わんわん泣くマイコちゃんの隣で、真っ赤になってるクラウス君。レアだ!めっちゃレアだ!!
だよねぇ、自分よりもクラウス君優先の、マイコちゃんの一途さたるやですよぉ。ニヤニヤ。
「…っ!!笑うな!!」
へいへい、すみませんね。
「そだクラウス君、さっき隠蔽とかで見えなくなってたマイコちゃんを、どうやって見つけたの?」
「ん?ああ、俺はマイコの場所なら分かる。前世からずっと分かってたよ」
「へ?ストーカー?」
「あははっ、そうかもな。逆にマイコも俺の場所分かるんだって」
「ぐす……はい、匂いで分かります」
「匂い?もしかして甘かったりする?ベリー系の?」
「な、なんで……エンリさんもしかして……」
「はい違う。私の好きな香りは柑橘系とかシトラスとか。オルがドンピシャなのよう!大胸筋をくんかくんかするのが堪らない!」
「うわ、ヘンタイ…」
「ご、ごめんなさい、私も匂いで、ヘンタイで……」
クラウス君の私を蔑む目を見て、マイコちゃんが落ち込む。
「あ、違う!違うって!俺だってマイコのうなじとかずっと見てたし!」
「うわ、ヘンタイ…」
「やかましい!」
笑顔になったマイコちゃんを見て、ホッとするクラウス君。
「まぁ、お互いの親に挨拶もできることだし、私もちょいちょい帰る予定だから、いつでも声かけてよ。オルがケータイ魔道具持ってるんだし」
「ん、お願いする」
「ありがとうエンリさん」
マイコちゃんの笑顔って癒されるわぁ。
「クラウス君はともかく、マイコちゃんは王都を離れていたって言ってたけど、こっちからも連絡って取れるの?」
「マイコにもケータイ持たせてるから大丈夫。隠密として動いてもらってるし、情報は早い方が良いし、心配だから一日三回は定時連絡必須にしてる」
「過保護だわぁー」
「うるさい!マイコが可愛いからだ!」
どさくさに紛れてマイコちゃんに抱きつくクラウス君。マイコちゃんはアワアワしながらもクラウス君の匂いをくんかくんかするのを、匂いフェチである私は見逃さなかった。ふふふ。
「なんか隠密って大変そうなんだね?危険とか?」
「まぁ、吟遊詩人として動いてますけど、神様に加護ももらってますし、他国と戦争をしているわけでもないので、比較的安全ですよ。ただ……」
マイコちゃんはクラウス君を見た。頷くクラウス君。
「オルフェウスさんの協力も必要だと思うので言いますが、魔王を支持する人間が隣国で見つかりました。最近増えている盗賊も何かしら関係があるかと」
オルは、盗賊退治に向かっていたはずだ。思わず青ざめると、姿を消していた神様たちが現れる。
びっくりしているクラウス君とマイコちゃんはとりあえず置いといて、私は指示を送る。
「シナトベは状況把握して私に連絡。カグツチはオルの援護。タケミカヅチとフツヌシは冒険者として討伐隊に加わって。ミヅハノメはここに残って私達を守って」
「「「「「応」」」」」
すっかりぬるくなった飲み物を前にして、私は『魔王を支持する人間』という言葉に、うっすら寒気を覚えるのだった。
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