バッタになった父
「ぼくも、バッタになれたらいいのにな。」
跳び箱が飛べず、保育園へ行くことを嫌がる息子・翔太が、ぽつりと漏らしたその一言。
翌朝――翔太は、本当に一匹のトノサマバッタになっていた。
その声を聞けるのは、父・幸一ただ一人。
なぜなら幸一も数週間前、突然バッタとなり、ネズミやカマキリ、鳥に命を狙われる過酷な世界を生き抜いた経験があったからだ。
しかし、息子を元の姿へ戻せるかもしれない唯一の手掛かりだけが思い出せない。
「ぼく、人間に戻れる?」
時間が過ぎるほど、翔太の体は少しずつバッタとしての本能に支配されていく。
父は失われた記憶をたどりながら、人には見えない草むらの世界へ再び足を踏み入れる。
父がバッタになった出来事には、いったいどんな意味があったのか。
そして、親子はもう一度、人間として笑い合えるのか。
小さな命の視点から、生きることの尊さと親子の絆を描く、涙と冒険のファンタジー。
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