前世の記憶を取り戻したら、かつて好きだった男の子孫に嫁ぐことになった

Adria

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婚約披露パーティー①

「国中の貴族が集められているとあって盛大ですね」
「なんだ? 緊張しているのか?」
「まさか」

 ニヤリと笑ってルキウスの腕に自分の手を絡める。

(皆をあっと言わせるのはルドヴィカ様の得意とするところだ。今から楽しみでたまらぬ)

 記憶が戻ってからというもの――ずっと魔法を使えることを隠していた。今日からその必要がなくなるなら、嬉しいことだ。ほくそ笑みながら音楽隊の演奏が鳴り響く舞踏場に、ルキウスと共に入場する。


 鮮やかなドレスを身に纏い着飾った貴婦人たちや正装に身を包みバシッと決めている男性たち。その皆の視線が一気に集まった。

(いつの世も、ここで行われるのは馬鹿げた腹の探り合いなのだろうな。だが、今宵は違う。そんなことをする暇などないくらいルドヴィカ様が注目を掻っ攫ってやる)

 下を見下ろしながらニヤリと笑い、ルキウスと共に階段を降りる。すると、あっという間に人に囲まれた。


「陛下。ご婚約おめでとうございます。今宵はお招きに与り光栄です」

 口々に婚約を祝われて、ルキウスも機嫌が良さそうだ。と言っても、お世辞にも愛想はよくないが……

(……)

 訝しげな視線を感じて、ルドヴィカは視線をルキウスからホール内へと移した。
 中には、蔑むような視線すらも感じる。おそらくだが、今まで姿を現さなかったファビアーニ公爵家の長女がルキウスの婚約者の座におさまっているのが気に入らないのだろう。

(やはり気分のよいものではないな。だが、その視線は一気に変わるだろう)

 ルドヴィカはふわりと微笑むと、ドレスの裾を持ってカーテシーをした。

「お初にお目に掛かります。ルドヴィカ・ファビアーニと申します」
「生まれてからずっと病床に伏していたと聞き及んでおりますが、ご回復なされたのですか?」

 その質問にニコリと微笑む。答えようとするとルキウスに制されてしまったので、一歩引いた。彼は満足そうにルドヴィカを見てから、口を開く。

「彼女は病気などではない。公爵に頼み、稀有な彼女を私がずっと隠していたのだ。だが、そろそろそういうわけにもいかぬのでな」
「隠していた……?」

 ルキウスの言葉にどよめきが起きる。すると、彼が目配せをしたので、ルドヴィカはこくりと頷きふふふと笑う。ルドヴィカが手をかざすと、舞踏場内に光が舞った。
 その光がルドヴィカに舞い散り、着ているものを建国の魔女と同じ黒のローブと黒のタイトドレスに変えていく。

 ルドヴィカが肖像画と同じ姿になり、皆が動揺したのが分かって気分がいい。ルドヴィカがふふんと笑うと、ルキウスに肘でつつかれた。

「其方、スリットも大きく入って左脚が丸見えではないか。それに胸もだ。谷間が見えすぎている。もう少しほかの衣装はなかったのか?」
「いやでも、いつもこの格好でしたし肖像画と同じ姿のほうがいいと思いまして。それにこの姿のほうが落ち着くんですよね」

 声をひそめてそう答えると、ルキウスがあからさまに不機嫌な顔になった。

「……?」

(なぜだろう? この服だと露出が多くて場にそぐわないのだろうか? 今まで誰にも何も言われなかったのに……)

 考えても分からなかったので、ルドヴィカはルキウスのことはもう放置することにした。

 何が起きたか分からないという顔で遠巻きに様子を窺っている皆にニッコリと微笑みかける。そして杖をついている年配の男性に手招きをした

「貴方、こちらに来てくださる? その足は若い時に事故で怪我をしたのでしょう?」
「え? わ、私ですか?」
「ええ、治してあげるわ」

 びくつきながら近づいてくる男の足を回復魔法でパパッと治してやる。もう杖なしで歩けることを伝えると、彼は呆けた顔でなくなった傷跡に触れ、おそるおそる杖を手放して歩きはじめた。その彼の姿を見て、再びどよめきが起きる。

 飛び跳ねんばかりに喜んでいる男性を指し示しながら、皆に向き直った。

「回復魔法は生死に関わるほどの重い病には効かないけれど、怪我や軽い病などは治して差し上げられますよ。試してみませんか?」

 ニッと笑ったのと同時にバルコニーに続く舞踏場の窓がすべて開く。そして花火が上がった。すると、またルキウスに肘でつつかれた。

「やりすぎだ、お調子者」
「花火を上げたほうが盛り上がっていいじゃありませんか」

 ふふふと笑って返すとルキウスが大仰な溜息をつく。その時、おずおずと一人の女性が「私の子の火傷を治してください」と歩み出てきた。それを皮切りに皆がルドヴィカの周りに集まってくる。

(魔力を示すならば回復魔法がちょうどいい。扱える者も少ないし、何より同時に恩も売れる)

 ルドヴィカはほくそ笑んだ。機嫌がいいルドヴィカとは対照的に、予想以上の効果が得られているというのにルキウスはなぜか怖い顔をしていた。
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