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第三章
splash 30
しおりを挟む「は、早坂さっ……?!」
あまりにも不意打ち過ぎて、手にしていたスマホを放り投げてしまった。
ソファの隅の方まで行ったスマホからは『ちょっと、伊織さんって呼ぶって約束したでしょう?』と、意味の分からない言葉が飛んでくる。
「……そんな約束してませんよ、伊織さん。」
仕方なく、手に取り、そう答えると、『あっ、シユン君の声だ』と嬉しそうに弾んだ声で返答する彼の声が耳元にダイレクトに入ってきた。顔を見ずとも、電話だけで凄みが伝わってくるのは何故だろう。
「ていうか。何で俺の番号知ってたんですか。」
『あはは。君から直接教えて貰ったよ。』
………。
「教えてませんよね」と続けて立ち上がり、キッチンの方に行く。どうせマネージャーが勝手に教えたのだろう。勝手な事をしてくれたもんだ、とブツブツ呟きながらカチッと蓋を開ける。
「それで、用件は何ですか?企画内容の変更とか…?」
そういえば、何も食べていなかったな、と冷蔵庫からペットボトルを取り出したタイミングで、『いやぁ』と何かを躊躇う様な声が聞こえてくる。
『マネージャーさんから聞いたんだけどね、シユン君が、俺のファンって。』
「ぶっ!」
思い切り吹いてしまった。
慌てて近くに置いてあった布巾で口元を拭い、「そんな訳じゃ無いです」と弁明するが、時既に遅し、マネージャーは殆ど暴露していた。
『いや、ね。シユン君が仕事に熱心で、俺についてこようとDVDを沢山見て研究してくれようとしてるのも中々唆ったよ。』
「すみません、後半は特に何言ってるか分かりませんでした。」
スパッと言い切る俺の言葉に返答する事無く、彼は流れる様に『でもね、』と続ける。
『君は君らしく、そのままで出てね。俺は、君の歌って踊ってる所を見るのが好きなんだ。たとえ、あのクールキャラが建前でも、君の素が違っていたとしても、全部ひっくるめて、本番では君を受け止めたい。』
「………あ、」
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