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恋ってウソだろ?! 5
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家具やソファセットは春日がコーディネイトして、佐々木の書斎用にも十四畳ほどの部屋が用意され、壁にかかっている十五号の絵は昔佐々木が描いた油絵だ。
オフホワイトの壁には大画面のモニター、テーブルやデスク、椅子など北欧調で、落ち着いたネイビーとオフホワイトを基調とした色彩で統一されている。
広々とした空間は確かに居心地がよさそうだ。
奥にはトイレ、バスルームやキッチンの他に、手つかずの部屋も一部屋ある。
パソコンや周辺機器もスタンバイし、佐々木の蔵書や愛用のパソコンなど私物も運び込まれ、あとは本人さえおさまれば、このオフィスのパーツは整う。
「仮に、ここで俺が独立したとして、このすばらしいオフィスの部屋代、誰が払うって?」
ため息混じりに佐々木が聞いてみると、春日は「そりゃ、お前に決まってる」と即答する。
「冗談きついで、俺にそないな甲斐性あったら、とっくに…………」
「だから心配は無用だって。ゆくゆくはこのビルごとお前のもんになるんだから」
「はあ?」
「このビルのオーナーは、佐々木淑子殿」
「はあああ?」
いつの間にあの頑固で昔気質な母親を懐柔したんだ、と佐々木は脱力する。
「よう、あのしまりやのおかあちゃんにOK言わせたもんや」
父親が他界した後、一番町の財産は税金にかなり持っていかれたが、それでも尚広い屋敷や庭、それ以外に近辺に土地建物のいくつかを母の淑子と佐々木が相続した。
そのひとつ、かつて父親が事務所として使っていた古いビルを建て直して貸したらどうかと、春日が持ちかけたという。
一階には品のいいカフェが入り、三階と四階にある2LDKの賃貸二戸ずつはほぼ埋まり、五階と六階の3LDKも既に売られて入居済みだ。
お膳立ては何もかも整っているにもかかわらず、佐々木は今でもまだその事実を受け入れられずにこうして自然と古巣に戻ってきてしまうのだ。
デザインセクションの奥にある自分のデスクにバッグを置いて、佐々木はそのまま同じフロアにある社長室へと向かった。
ノックしてドアを開けると、春日がパソコンの画面から顔を上げた。
「よう、独立後の初仕事はどうだ? うまくいきそうか?」
佐々木は壁際のソファに腰を下ろすと、頭の後ろで腕を組む。
「まあ、たぶん」
「何だよ、そのいい加減な返事は」
春日はデスクを離れて佐々木の向かいに座り、煙草をくわえた。
この部屋は社内で唯一、誰にも気兼ねなく煙草が吸える部屋だ。
耐えられなくなったチェーンスモーカーがたまに用もないのにやってきて、コーヒーを飲んだり、煙草を吸ったりしていくたまり場でもある。
当然強力な換気システムも完備されていた。
「お前の可愛い浩輔ちゃんが持ってきてくれた仕事だろうが」
「まあ、そりゃ、しっかりやりますよ…………」
ボソリと佐々木は答える。
オフホワイトの壁には大画面のモニター、テーブルやデスク、椅子など北欧調で、落ち着いたネイビーとオフホワイトを基調とした色彩で統一されている。
広々とした空間は確かに居心地がよさそうだ。
奥にはトイレ、バスルームやキッチンの他に、手つかずの部屋も一部屋ある。
パソコンや周辺機器もスタンバイし、佐々木の蔵書や愛用のパソコンなど私物も運び込まれ、あとは本人さえおさまれば、このオフィスのパーツは整う。
「仮に、ここで俺が独立したとして、このすばらしいオフィスの部屋代、誰が払うって?」
ため息混じりに佐々木が聞いてみると、春日は「そりゃ、お前に決まってる」と即答する。
「冗談きついで、俺にそないな甲斐性あったら、とっくに…………」
「だから心配は無用だって。ゆくゆくはこのビルごとお前のもんになるんだから」
「はあ?」
「このビルのオーナーは、佐々木淑子殿」
「はあああ?」
いつの間にあの頑固で昔気質な母親を懐柔したんだ、と佐々木は脱力する。
「よう、あのしまりやのおかあちゃんにOK言わせたもんや」
父親が他界した後、一番町の財産は税金にかなり持っていかれたが、それでも尚広い屋敷や庭、それ以外に近辺に土地建物のいくつかを母の淑子と佐々木が相続した。
そのひとつ、かつて父親が事務所として使っていた古いビルを建て直して貸したらどうかと、春日が持ちかけたという。
一階には品のいいカフェが入り、三階と四階にある2LDKの賃貸二戸ずつはほぼ埋まり、五階と六階の3LDKも既に売られて入居済みだ。
お膳立ては何もかも整っているにもかかわらず、佐々木は今でもまだその事実を受け入れられずにこうして自然と古巣に戻ってきてしまうのだ。
デザインセクションの奥にある自分のデスクにバッグを置いて、佐々木はそのまま同じフロアにある社長室へと向かった。
ノックしてドアを開けると、春日がパソコンの画面から顔を上げた。
「よう、独立後の初仕事はどうだ? うまくいきそうか?」
佐々木は壁際のソファに腰を下ろすと、頭の後ろで腕を組む。
「まあ、たぶん」
「何だよ、そのいい加減な返事は」
春日はデスクを離れて佐々木の向かいに座り、煙草をくわえた。
この部屋は社内で唯一、誰にも気兼ねなく煙草が吸える部屋だ。
耐えられなくなったチェーンスモーカーがたまに用もないのにやってきて、コーヒーを飲んだり、煙草を吸ったりしていくたまり場でもある。
当然強力な換気システムも完備されていた。
「お前の可愛い浩輔ちゃんが持ってきてくれた仕事だろうが」
「まあ、そりゃ、しっかりやりますよ…………」
ボソリと佐々木は答える。
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