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恋ってウソだろ?! 21
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女将がカードを男に返して、二人を見送ってくれたが、その時カードの色が偶然目に入った。
D**のブラックカード。
男がかなりな富裕層に属するのだと、佐々木は見て取った。
車は湾岸線を走っていた。
いろいろ男について考え込んでいたので、ベイブリッジが見えてきた頃、ようやく夜景が随分きれいだと、佐々木は気づいた。
「始めはIT長者かなんかかと思うてました」
男は笑って、ナビシートの佐々木にちらりと目をやった。
「でも、どうやら、成り上がりとか、一気に財を得たとかやない、親の有り余る財を持て余して優雅に遊んで暮らす人種ですやろ、『トモさん』」
気づまりで何か話していないと、佐々木はそぞろな心の内を露呈しそうだった。
「ハハ、どうしてそう思うんです?」
笑い声まで好感を感じさせる。
「金を使うという意識がなく使こてる」
「確かに、親族の財を食い潰す道楽息子ではあります。それから?」
「かなりのスポーツ好き」
「当たり。どうしてわかりました?」
随分鍛えられた身体だったから、などとは佐々木は口にしたくない。
「そら、身体大きいし……サロンに行ったとかやなく日に焼けてるし……」
「フーン。俺もあててみましょうか? 佐々木さんはスポーツは嫌いじゃない、がインドア派?」
「え、色が白いからやいうんでしょ、俺、あまり日焼け定着せぇへんだけですよ。アウトドアも好きやし」
「そう? じゃ、テニスとか?」
「え、何で……」
「筋肉のつきかたとか」
そんなにジロジロ見たのかと、また顔が赤くなるのを佐々木はどうしようもなかった。
「俺に興味がわいてきた?」
聞かれて佐々木の心臓が跳ねる。
「え……それは、俺のことばかり知られているのはしゃくやし」
「ハハ……そう、まあ、いっか」
やがて到着したのは大磯にある名の知れたホテルの駐車場だった。
どこに行くのだと聞いたわけではない。
ご馳走様でした、帰ります、と言えばそれで済んだのかもしれない。
「どうぞ」
ドアを開け、バッグを掴んだままナビシートを動こうとしない佐々木を促すトモはいつの間にか眼鏡をかけていた。
佐々木が降りると、トモはロビーへと繋ぐエレベーターの前に立ちドアを開けた。
「くっそ、ついてこないはずないとか、思うてんのか、あのヤロウ」
ブツブツ呟きながら佐々木はトロトロ歩いてエレベーターに乗った。
エレベーターを降りると、さっさとフロントで手続きを済ませたトモが佐々木を振り返った。
客室へのエレベーターを上がり、トモがカードキーで部屋のドアを開けると想像を覆さないスイートルームだった。
このヤロウ、財布の中のカードの名前を確かめてやろうか。
佐々木はそんなことを思ってみるが、人様の財布を手に取るようなことは、よほどじゃないとできそうにない。
「そうですね、カードを見れば、俺の名前もわかると思いますけど」
心を読まれたかと思うほど、ぎょっとして佐々木はトモを見つめた。
D**のブラックカード。
男がかなりな富裕層に属するのだと、佐々木は見て取った。
車は湾岸線を走っていた。
いろいろ男について考え込んでいたので、ベイブリッジが見えてきた頃、ようやく夜景が随分きれいだと、佐々木は気づいた。
「始めはIT長者かなんかかと思うてました」
男は笑って、ナビシートの佐々木にちらりと目をやった。
「でも、どうやら、成り上がりとか、一気に財を得たとかやない、親の有り余る財を持て余して優雅に遊んで暮らす人種ですやろ、『トモさん』」
気づまりで何か話していないと、佐々木はそぞろな心の内を露呈しそうだった。
「ハハ、どうしてそう思うんです?」
笑い声まで好感を感じさせる。
「金を使うという意識がなく使こてる」
「確かに、親族の財を食い潰す道楽息子ではあります。それから?」
「かなりのスポーツ好き」
「当たり。どうしてわかりました?」
随分鍛えられた身体だったから、などとは佐々木は口にしたくない。
「そら、身体大きいし……サロンに行ったとかやなく日に焼けてるし……」
「フーン。俺もあててみましょうか? 佐々木さんはスポーツは嫌いじゃない、がインドア派?」
「え、色が白いからやいうんでしょ、俺、あまり日焼け定着せぇへんだけですよ。アウトドアも好きやし」
「そう? じゃ、テニスとか?」
「え、何で……」
「筋肉のつきかたとか」
そんなにジロジロ見たのかと、また顔が赤くなるのを佐々木はどうしようもなかった。
「俺に興味がわいてきた?」
聞かれて佐々木の心臓が跳ねる。
「え……それは、俺のことばかり知られているのはしゃくやし」
「ハハ……そう、まあ、いっか」
やがて到着したのは大磯にある名の知れたホテルの駐車場だった。
どこに行くのだと聞いたわけではない。
ご馳走様でした、帰ります、と言えばそれで済んだのかもしれない。
「どうぞ」
ドアを開け、バッグを掴んだままナビシートを動こうとしない佐々木を促すトモはいつの間にか眼鏡をかけていた。
佐々木が降りると、トモはロビーへと繋ぐエレベーターの前に立ちドアを開けた。
「くっそ、ついてこないはずないとか、思うてんのか、あのヤロウ」
ブツブツ呟きながら佐々木はトロトロ歩いてエレベーターに乗った。
エレベーターを降りると、さっさとフロントで手続きを済ませたトモが佐々木を振り返った。
客室へのエレベーターを上がり、トモがカードキーで部屋のドアを開けると想像を覆さないスイートルームだった。
このヤロウ、財布の中のカードの名前を確かめてやろうか。
佐々木はそんなことを思ってみるが、人様の財布を手に取るようなことは、よほどじゃないとできそうにない。
「そうですね、カードを見れば、俺の名前もわかると思いますけど」
心を読まれたかと思うほど、ぎょっとして佐々木はトモを見つめた。
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