恋ってウソだろ?!

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恋ってウソだろ?! 40

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「佐々木さん、『桜プロ』さん、北海道ロケからさっき戻ったって」
 浩輔が携帯を切って、佐々木に告げた。
「そうか。楽しみやな。ええもん、できるで、きっと」
 雪はホンモノが撮りたいと言ったのは佐々木だ。
 これで自分のギャラはなしになったとしても、思ったものができれば構わないのだ。
 撮影は何とか一日で終わった。
 妥協という言葉を知らない下柳のお陰で、皆がげっそり疲れきったようすでスタジオを出た。
「さすがだな、下柳さん」
 いつの間に来ていたのか、藤堂がボソリと言った。
「佐々木さんの世界を見事に具現化してる」
「良太ちゃんが前、ボヤいてました。ヤギさん、半端ないって」
 浩輔の言葉に、横で聞いていた佐々木もふっと笑う。
 そういえば、高橋何某氏を紹介すると、藤堂に言われていたが、なかなかその機会は訪れることがなかった。
 むしろ佐々木は会えない方がいいような気がしていた。
 
  
  
 
 十一月の週末は全て、佐々木はトモと箱根で過ごしたことになる。
 初旬に色づきかけていた庭の見事な紅葉が、最後の週末は落葉となってこれもまた趣のある風情を見せてくれた。
 佐々木は近所のスーパーで仕入れた材料でトモのリクエストに合わせて料理を作った。
 カレーやオムライスという案外子供っぽいリクエストを、佐々木も楽しんでいた。
 とりわけ、朝のフレンチトーストにトモが大感激をして、何回か作らされた。
 まるでずっと昔から、二人でそうしているかのような錯覚さえ覚えることもあった。
 スカッシュをやった時は、トモの並外れた身体能力を実感させられた。
「すごい、俺も自信あったんやけどなー」
 トモにことごとく返されて決められてばかりで、ムキになってやっていたら、トモにそろそろやめた方がいいと止められた。
「いきなりやり過ぎたらダメだよ。身体に負担がかかる」
 二人でシャワーを浴びながら、トモの身体が見事に鍛えられた隙のない美しさを持っていることに、佐々木は密かに嘆息した。
 硬く厚い大きな胸板、無駄のない筋肉に覆われた腕や長い脚、身長や脚の長さは変えられようもないが、これだけの鍛え方はちょっとやそっとの年月では無理だろう。
 高橋何某氏はラグビーをやっていたって、藤堂さん言ってたな……。
「何?」
 トモが問いかける。
「いや………トモの横に立つと、大概の男はコンプレックスに苛まれるな、て」
 するとトモはいきなり裸の佐々木を後ろから抱きすくめた。
「……おい……」
「あんまり見つめてるから、もうおさまりがつかなくなった」
「そんなジロジロみてない……」
 だが、尻に熱いものを押し当てられて、佐々木はトモがどういう状態にあるのか知らされる。
「あなたの横にいて襲い掛かりたくならないほうがどうかしてる」
 佐々木の耳朶に囁きながら、トモはシャワーを止めて佐々木をいたぶる。
 佐々木はとっくにトモを欲しがっている身体が浅ましい。
 ただ、いつとはなくこらえ性もなく求めてくるようになったトモを抗いがたい自分がいて、佐々木は少しずつ得体の知れない焦燥感を持つようになった。
 
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