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14.従兄の結婚相手
しおりを挟む「ご苦労だった。どこからだ?ふむ…ジュードレン男爵家からだ」
「珍しいですね」
手紙を受け取り、差出人の名を確かめるとジュードレン男爵家からだった。
ジュードレン男爵家とは、今は亡き実母の生家だ。
母が亡くなってから10年。近頃はあまり交流が無かった。
「何なに…。おお、ハインツが結婚するようだ。ぜひ結婚式に出席して欲しいと書いてある」
ハインツ…。母の兄の子どもで私の5つ上の従兄に当たる。
幼い頃はよく遊んだりもしたものだが久しく会っていなかった。懐かしい。
「まぁ、それはおめでたい事ですね。しかし、婚約を結んだ話を知りませんでした。お相手はどなたでしょうか?」
「そうだな、かなり疎遠になってしまっていたからな…。相手は…ベルモンド子爵令嬢だそうだ…。確かベルモンド子爵は…」
ベルモンド子爵令嬢!?
私の記憶が間違いなければベルモンド子爵に娘は一人しかいない。
シャティ様だ…!!
「はい、お父様。ベルモンド子爵令嬢は、エルカルトがいつも私と比べていたシャティ様に違いありません」
まさかの…私の従兄が元婚約者の想い人と結婚するというのだ。
「そのようだな。アレックス殿からは、エルカルトとシャティ嬢の間に不貞の関係は無いようだと報告を受けていたが…。念の為にハインツには今回の騒動を伝えておいた方が良いだろう」
父はそう言って使用人からペンを受け取り、今回のエルカルトと私の婚約解消に至った経緯にシャティ様が関係する事、シャティ様の名をエルカルトが出していた事を記しジュードレン男爵家へ手紙を送った。
「後はハインツ達がどうするかだ」
「そうですね…」
もうエルカルトにもシャティ様にも関わる事は無いと思っていたが、まさかこんな事になるなんて…。
ーーそして2週間後。
ハインツの家、ジュードレン男爵家から返信があった。
『伯爵、セアラ嬢、ご無沙汰しております。この度は私の婚約者のシャティの事でご迷惑やご心配をおかけしたようで申し訳ございません。今回の件は、シャティも寝耳に水だったようで大変驚いています。シャティとエルカルト殿が不貞関係にあった事はあり得ないようですので、私達は予定通り5ヶ月先に結婚式を挙げようと思っております。』
と書いてあった。
「まぁ、エルカルトも辺境へ行っているし奴に何か出来る訳も無いだろう。私も亡き妻の分まで、甥っ子の幸せを祝いに結婚式に参加しようと思っているがセアラはどうする?婚約解消した直後だ。周りの目が気になるようならば参加しなくても良いと思うが…」
「勿論参加しますわ。私、何も負い目に感じるような事はしていませんもの。それに、あれだけエルカルトが熱心に私に力説していた素晴らしい女性のシャティ様の事も気になりますの」
悪戯に笑ってみせる。
元婚約者が、あれだけ女神だ天使だと崇めていた女性。嫉妬などでは無く興味が湧く。勿論、従兄のハインツのお祝いをしたいという気持ちも強いが。
「そうか、ならば共に参ろう。そしてセアラよ。お前に良い縁談が持ち掛けられているんだ。お前さえよければ会ってみないか」
ーーえっ!?
婚約解消してまだ3週間程。
確かに、勢いのあるこのスティーカー伯爵家を望む家も多いとは思っていたが…。
「お相手はどなたでしょうか?」
「デイアリー公爵家のニコラス様だ」
公爵家…!?
お前さえ良ければと父は言うが、公爵家相手に私に選択権は無いだろう。
「…はい。喜んで」
そう返事する他無いのだった。
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