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舞踏会

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 仲間の気配一つ気付かないとは。

 浮かれるのは大概にしないと、任務中の失策は命取りだ。

「……わかった。今の俺はとんだ腑抜けという訳だ。ご忠告痛み入る。肝に銘じよう」

 きっとセルゲイも、見るに見かねて声を掛けてくれたのだろう。俺がこれ以上をしでかす前に。

 と、自分のためにもそう解釈しておこう。

「いや、まあ、そうとも言えますが」

 セルゲイは珍しく言い淀む。いつもはっきりとした答えを返す男にしては珍しい態度だ。

「どうした? 遠慮なく言ってくれ」

「団長のご様子ですと……昨夜、どれだけ良いことが起きたのか。とても気になるのですが、教えて頂けないでしょうか」

 ルーカスは、苦笑した。

 確かに、セルゲイが気にするのも仕方がない。

 昨夜まで、ルーカスとオリヴィエの関係はぎくしゃくと微妙だった。

 セルゲイは気を利かせてオリヴィエとルーカスの距離を縮めようと一役買っている。

 ルーカスから頼んだ話でもないが、進捗は気になるだろう。

「そうだなあ」

 ルーカスは、朝日に目を細めつつ話し始める。

「ああして、少し話して、少し打ち解けられたような気がする」

「…………は?」

 長めの沈黙の後、セルゲイに聞き返されて、ルーカスは苦笑した。

 そう何度も、口にしたくない。

「だから、あいつは多分、俺を嫌ってはいない」

「それだけ? ですか」

「やはり、昨夜のアレではまだ距離が遠いか」

「……いえ、まあ、そういうことなら……ちょっと拍子抜けしました。先ほどはとても浮かれたご様子だったので」

 セルゲイは何か言いたげに口ごもったが、それ以上を追及しなかった。

「まあ、いい。散歩もここまでだ。お前と二人で連れ立っても面白くない。戻って朝食でも取るか」

「朝食には反対しません。ですが老婆心ながら……もう一度だけ念を押させて頂きます。この任務中に、はっきりと、オリヴィエに「好きだ」とお伝えください」

「くどいな」

 追及されたのが照れくさくて、ルーカスは目を逸らす。

「好意は伝える。……それか、もう、伝わっている」

「好意とかそのような曖昧なものでなく、はっきりと口にしてください。ただでさえ不利な立場なのですから、手に入れるまで気を抜いてはいけないと認識してください」

 セルゲイの追及に、ルーカスは目を見張る。

 ここまで強く主張されるとは、思わなかった。

「……不利か。そうだな。肝に銘じよう」

 言い得て妙だ。

 彼女を正妃に迎えてやれない分、他の男より不利なのだと、自覚しなければならない。

 それでも「お前が欲しい」と伝えたら、どんな反応を見せるだろう。

 我慢を前提にしているのだから、図々しいと、軽蔑されてもおかしくない。

 軽蔑を覚悟の上で、告白しなければならないのか。
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