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別れと再会
姫をこの手に抱いて
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姫が私の胸に顔を埋めたまま、幼子の様に泣きじゃくるのが落ち着くまで、ゆっくり時間をとった。
近くの椅子へと腰を降ろし、私の膝の上に姫を乗せる。
あれほど私と姫との距離が近いことを懸念していたフェリスが、何も言わないことが気にかかる。
姫からフェリスの方へ視線を移すと、私たちを見ているフェリスの目尻にも涙が浮かんでいるのが見えた。
それほど、戦への不安が大きかったのであろうか。
「クリュスエント様。リーベガルド王はこの戦の責任から処罰されます。他の王族も連鎖により同様の処分が下るかと考えております。もし、クリュスエント様のお気持ちが、リーベガルド王と共にあるのならば、私はこのままカミュート国へと引き返します。」
姫が落ち着きを取り戻したのを見計らって、私はこれからのことを話し始めた。
「もし、そうでないのであれば……」
「あの方と同様の処分など、望みません!」
私の言葉を遮る様に姫が叫ぶ様な声をあげる。
「いかがされました?それほど、戦で怖い思いをなされたのですか?」
「ち、ちが……」
再び、姫の目から大粒の涙が落ちる。
これでは、姫の口から話を聞くのは難しそうだ。
私はフェリスの方へ顔を向け、視線だけで話の続きを促した。
「アイシュタルト様。姫さまはコーゼへ来てからずっとお辛い思いをされて参りました。そのコーゼの王と同様の処分など、姫さまも私も望んでおりません。」
「コーゼへ来てからずっと?此度の戦のことだけではないのですか?」
「えぇ。一年半もの間。姫さまはずっと我慢なされてきました。ア、アイシュタルト様、できればこのまま姫さまを救い出してっ、い、いただけないでしょうか。」
姫が我慢されてきた日々を思い出してしまったのか、フェリスの言葉には途中から嗚咽が混じる。
「かしこまりました。クリュスエント様もそれを望むのであれば、このままここから、お連れ致しましょう。」
私が姫の顔を覗き込めば、腕の中の姫が大きく頷いた。
あぁ。私はこのまま姫のことを連れて戻ることができる。
自分の思っていた通りに進んでいく事態に、つい口角が上がる。
このままカミュートまで、連れ帰ってしまおう。姫もそれを望んでいるのだから。
「アイシュタルト様。どうぞ、姫さまのこと、よろしくお願いします。」
フェリスが私に向けて、深々と頭を下げる。その態度が、お二人がどれほど辛い目にあってきたかを、表しているようだ。
「フェリス様。必ず、クリュスエント様は無事に連れ出します。ご安心ください。」
「ありがとうっ……ございます。」
「フェリス様は、どうされますか?カミュート王は、平民の命を奪うつもりはないようです。このまま城外の兵の下へ出て行かれても、命を取られることはないと思います。ですが、もしもう一度私がここに戻るまでお待ちいただければ、クリュスエント様の元にお連れ致します。」
「本当ですか!?」
「お約束致します。」
「わたくしは、できれば姫さまと共にありたい。」
フェリスの気持ちは、分かりきっていた。私も姫と共に居たかったのだから。
「存じております。それでは、数日かかりますが、お待ちいただけますか?」
「えぇ。下働きの専用通路にでも隠れておりますわ。」
フェリスの声に、以前の様な張りが戻った気がした。
「クリュスエント様。コーゼ国を出ます。私と共に、一度カミュート国へとその身を隠しましょう。」
「はい……わかりました。」
私の言葉に小さく姫が返事をした。
「フェリス様。クリュスエント様はこの戦でその行方がわからなくなったと、その様に触れ回ることに致しましょう。慌てて逃げ出したら、そのままと……」
「アイシュタルト。そのようなこと、必要ありませんよ。」
私の作った話に、すっかり涙の止まった姫が口を挟んだ。
「何故でしょうか?」
「わたくしは、この国では居ない者ですから。」
「それは、どういう……?」
居ない者?ここにいらっしゃるではないか。
私には、姫の言葉の意味が理解できなかった。
近くの椅子へと腰を降ろし、私の膝の上に姫を乗せる。
あれほど私と姫との距離が近いことを懸念していたフェリスが、何も言わないことが気にかかる。
姫からフェリスの方へ視線を移すと、私たちを見ているフェリスの目尻にも涙が浮かんでいるのが見えた。
それほど、戦への不安が大きかったのであろうか。
「クリュスエント様。リーベガルド王はこの戦の責任から処罰されます。他の王族も連鎖により同様の処分が下るかと考えております。もし、クリュスエント様のお気持ちが、リーベガルド王と共にあるのならば、私はこのままカミュート国へと引き返します。」
姫が落ち着きを取り戻したのを見計らって、私はこれからのことを話し始めた。
「もし、そうでないのであれば……」
「あの方と同様の処分など、望みません!」
私の言葉を遮る様に姫が叫ぶ様な声をあげる。
「いかがされました?それほど、戦で怖い思いをなされたのですか?」
「ち、ちが……」
再び、姫の目から大粒の涙が落ちる。
これでは、姫の口から話を聞くのは難しそうだ。
私はフェリスの方へ顔を向け、視線だけで話の続きを促した。
「アイシュタルト様。姫さまはコーゼへ来てからずっとお辛い思いをされて参りました。そのコーゼの王と同様の処分など、姫さまも私も望んでおりません。」
「コーゼへ来てからずっと?此度の戦のことだけではないのですか?」
「えぇ。一年半もの間。姫さまはずっと我慢なされてきました。ア、アイシュタルト様、できればこのまま姫さまを救い出してっ、い、いただけないでしょうか。」
姫が我慢されてきた日々を思い出してしまったのか、フェリスの言葉には途中から嗚咽が混じる。
「かしこまりました。クリュスエント様もそれを望むのであれば、このままここから、お連れ致しましょう。」
私が姫の顔を覗き込めば、腕の中の姫が大きく頷いた。
あぁ。私はこのまま姫のことを連れて戻ることができる。
自分の思っていた通りに進んでいく事態に、つい口角が上がる。
このままカミュートまで、連れ帰ってしまおう。姫もそれを望んでいるのだから。
「アイシュタルト様。どうぞ、姫さまのこと、よろしくお願いします。」
フェリスが私に向けて、深々と頭を下げる。その態度が、お二人がどれほど辛い目にあってきたかを、表しているようだ。
「フェリス様。必ず、クリュスエント様は無事に連れ出します。ご安心ください。」
「ありがとうっ……ございます。」
「フェリス様は、どうされますか?カミュート王は、平民の命を奪うつもりはないようです。このまま城外の兵の下へ出て行かれても、命を取られることはないと思います。ですが、もしもう一度私がここに戻るまでお待ちいただければ、クリュスエント様の元にお連れ致します。」
「本当ですか!?」
「お約束致します。」
「わたくしは、できれば姫さまと共にありたい。」
フェリスの気持ちは、分かりきっていた。私も姫と共に居たかったのだから。
「存じております。それでは、数日かかりますが、お待ちいただけますか?」
「えぇ。下働きの専用通路にでも隠れておりますわ。」
フェリスの声に、以前の様な張りが戻った気がした。
「クリュスエント様。コーゼ国を出ます。私と共に、一度カミュート国へとその身を隠しましょう。」
「はい……わかりました。」
私の言葉に小さく姫が返事をした。
「フェリス様。クリュスエント様はこの戦でその行方がわからなくなったと、その様に触れ回ることに致しましょう。慌てて逃げ出したら、そのままと……」
「アイシュタルト。そのようなこと、必要ありませんよ。」
私の作った話に、すっかり涙の止まった姫が口を挟んだ。
「何故でしょうか?」
「わたくしは、この国では居ない者ですから。」
「それは、どういう……?」
居ない者?ここにいらっしゃるではないか。
私には、姫の言葉の意味が理解できなかった。
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