俺のスキルがエロゲー仕様で泣けてくる

藤雪たすく

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初めての従者

抗えない仕様

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……夢?
目を覚ますと見慣れない天井……すらなく。
目に飛び込んでくるのは木と空だ。


「おはよう、宮尾」

横から声をかけられ、その声にぼやけた頭が思考を始める。

勝利……君?
……勝利君っ!?

慌てて起き上がり素っ裸なのに気付いて、布団を引き寄せて隠れた。

そうだ……俺、勝利君と……。
思い出すとなんて事をしてしまったんだろうと後悔に押しつぶされそう。

「ごめん……俺…従者が……『接続』がこんなんだって知らなくて……」

震える指がバレない様に手を押さえる。

「何で謝んの?従者にしてってお願いしたの俺だし」

指先の震えが全身に伝染して、隠せないぐらいガタガタと震え出した。

「宮尾ごめん……そんなに怯えないで……嫌だった…よね?でも俺、ミャオちゃんが本物の宮尾なんて思わなくて『接続』を開始したら止められないから……本当にごめん、あんな噂立てられて宮尾が俺のこと嫌ってるの知ってたのに……」

「嫌いっていうか……気持ち悪い思いさせてごめん……」

勝利君にパシンと軽く頬を叩かれる。

「その気持ち悪いって何?俺は宮尾を気持ち悪いと感じたことなんて一度も無いよ!!」

勝利君の顔には怒りが籠っている。
勝利君にこうして怒られるのは初めて。

「だってあの時……気持ち悪いって……」

……俺の気持ちは気持ち悪いって……。

「あれは、だって気持ち悪いだろ!?あんな汚い体のゲイビ男優に宮尾の可愛い顔をくっつけるなんて失礼じゃん!!」

……ん?

「宮尾泣きそうな顔してたし、やった奴らボコったら一ヶ月も停学くらうし……停学明けたら宮尾学校に来てないし……嫌われたんだと思ってた」

……んん?

「だまし討ちみたいにやった後でごめん……でも、もし俺の事そこまで嫌いじゃ無いんなら……宮尾を守らせて?」

手を握り込まれ顔を寄せられて……ドキドキと心拍数が上がる。

「勝利君……俺の気持ちが気持ち悪いんじゃなかったの?」
嫌われてた……訳じゃない?

「……宮尾の気持ち?」

「勝利君の事……好きだって……みんなにバレて……からかわれて」

「はぁ!?宮尾が俺を好き!?何それ!?俺に直接攻撃出来ない、あいつらの戯言じゃなかったの!?」

勝利君は俺の気持ちに気付いていなかった。
勝利君が気持ち悪いと言ったのは写真の加工の元になった体。
勝利君は変わらず優しかった。

「は……はは……はははははは」

「宮尾?」

何だよそれ……俺の半年って一体……人生終わったとさえ考えてたのに。

急に笑い出した俺を心配そうに見守る勝利君。
ひとしきり笑ったら何だかすっきりした。
いちど死に直面したせいか、全てが俺の勘違いだったと分かったからか、何だか晴れ晴れとした気分になった。

「はぁ…俺バカみたいだった……」
これも若気の至りと言うヤツだろうか?

「宮尾……大丈夫?」
心配そうな顔を向けられる。
「大丈夫、逆に憑き物が落ちた感じでスッキリしてる」

「そ……そう?じゃあ、これからよろしくね。ミャオちゃん」

頭をポンポンと叩かれた。

「何で『ミャオちゃん』?」
さっきまで『宮尾』って言ってたのに。

「だって登録名、ミャオでしょ?もう俺とミャオちゃんはこの世界でコントローラーと従者の関係なんだし……」

勝利君はデレデレと笑って枕に抱きついた。

「……もう一度気持ちを確かめ合いながらしたいなぁ……でも接続したばっかでしばらく無理だし……あぁもう!!何で俺、こんな仕様にしちゃったんだろう!!ミャオちゃん!!早くいっぱいモンスター倒そう!!」

????
何でいきなりやる気?
突然モンスターを倒すぞ宣言をした勝利君はいそいそと鞄からキレイな服を取り出すと俺に手渡してきた。

「俺が着ていいの?」

この世界の服を貰えるのはありがたい。
どうしても元の世界のあの服では目立ってしまう。
着方を教えて貰いながら着てみると勝利君の様ないかにも防具っぽい物ではなく、ふわふわした魔法使いの様なフード付きの服だった。
コントローラーは実際に戦う訳じゃないから鎧はいらないか。
あんな重そうな物を着て動ける自信がなかったので助かる。

着替え終わるなり手を引かれて、ベッドから下ろされた。

「ミャオちゃん離れないでね。昨日のドラゴンまだその辺にいないかなぁ」

「やだよ。もうあんなの会いたくない」

冒険者登録したばかりの初心者は、まずスライムやらゴブリンやらでレベル上げさせていただきたいだろう。

「え~強いモンスターの方が消費早いし……」

サクサク進む勝利君の後ろをキョロキョロそわそわしながらついて歩く。
「勝利君はこの世界の事に詳しいね……長いの?この世界って何なの?」

俺の前にこの世界に来ていて……接続していたコントローラーがいたのかな……。

「ん…?俺の作ったゲームだから、隅々まで知ってるよ」

へぇ~……勝利君の作ったゲームかぁ……。

「は?勝利君の作ったゲーム!?」
聞き間違いかと思って勝利君を二度見する。

「そぉ。ミャオちゃんに嫌われたと思ってたから……ミャオちゃん主役のゲームを作って遊んでた。俺って健気でしょ?」

にっこり笑って振り返られたけど、健気っていうか……。
「……どんなゲームか…聞いても平気な内容?」

『接続』=『セックス』な辺りでお察しだけど聞かずにはいられなかった。

「『接続中毒』ってタイトルでミャオちゃんが従者をいっぱい引き連れて魔王を倒すゲーム」

「………」

思わず立ち止まった俺に気付いた勝利君に手を引っ張られる。

「いっぱい犯られるけど大丈夫!!一番ミャオちゃんと恋愛ゲージ高いのも快感ゲージ高いのも俺だから!!」

イイ笑顔デスネ……。

「勝利君……従者の件、少し考えさせてもらっていい?」

「えぇ!?ミャオちゃん怒ってる?全部ラブエッチだよ?モンスターに負けたらモンスター陵辱シーンもあるけど、基本和姦でミャオちゃん逆ハーものだってば!!」

俺……やっぱり嫌われてたんじゃないか?

「……そんなの作ってどうするつもりだったの?晒し者にする気だった?」

遠い目で勝利君を見つめる。
好きだ、好きだって……俺はこの人の何を見ていたんだろう。

「自分で楽しむ為だけだよ?ミャオちゃんが2体同時接続でトリップして我を忘れて腰振ってる姿なんて誰にも見せたくないじゃん……見せちゃ駄目だよ?」

「俺はそんな事しないよっ!!!」

鞄を思い切り勝利君の後頭部に向けてスイングさせた。
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