俺のスキルがエロゲー仕様で泣けてくる

藤雪たすく

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初めての従者

自炊機能は必要か?

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勝利君を気の済むまで蹴り飛ばして、幾分気持ちがはれた。

ドラゴンのドロップアイテムを拾って勝利君の鞄に勝手に詰めようと思ったけど……入らない。

「俺のアイテムボックスだから俺しか出し入れ出来ないんだ。ミャオちゃんのアイテムボックスに入れなよ」

「勝利君が倒したんだから勝利君の物でしょ」

「もぉ……分かってないなぁ。俺はミャオちゃんの手駒。戦ったのはミャオちゃん。だからミャオちゃんの物!」

この素材やらで手切れ金としていただこうと思ったのに逆に全部押し付けられてしまった。

鞄よりも数倍大きなドラゴンの肉だがローラン達が入れてたのをみていて入れられるのはわかるけど……生肉直接入れて良いのか?
ラップなんてもちろん無いので戸惑いながらも鞄に生肉を押し込んだ。

『初めて食材をGETしました。コマンドに調理が追加されました』

鞄に肉を入れた事でまた新たな情報が出てきた。

「『調理』?俺、料理なんて出来ないけど……」

「生肉そのままは危ないよ?寄生虫とかもあるからね。内臓食い破られちゃう」

「何でそんなとこだけリアルなの?」

寄生虫の前に地べたに生肉問題を考えろ。

「ミャオちゃんの手料理が食べたいからね!」

ド~ンと胸を張る勝利君を無視して他の素材を鞄に詰めていく。

鞄の中は相変わらず空っぽだけどコマンドを開いて『アイテム』欄を見てみると、確かにドラゴンの鱗や牙やらが入っていた。
いくらで売れるのか、通貨の価値なんかわからないけどこれを売ればお金が手に入って食事にありつける!!
昨日から何も食べてなくてもう限界だ。

早く……早く街へ帰ろう!

「ミャオちゃんの手料理~」

1人幸せそうな顔で夢を見ている勝利君を置いて、はやる気持ちで通った痕跡を頼りに来た道を足早に戻った。

……おかしい。
こんなに深く林の中に入った記憶無いのに……。

「……もしかして迷った?」

「今、気づいたの?ずっと街と逆方向に進むから、そんなに俺と二人きりが良いのかと思ってた」

「気づいてたなら教えてよ!!」

勝利君の襟元を付かんで詰め寄ると、人差し指を顎に当ててそっぽを向く。

「だってミャオちゃん俺の事、無視してたじゃん。なのに教えろなんて……ミャオちゃんって我が儘さん」

「………うぅ」

どうしよう……今何処にいるんだろう……。

「何で『マップ』見ないの?チュートリアルから説明あったでしょ?」

「…………」

そう言えばマップがあったな。
無言でマップを開いて、現在地を示す赤い逆三角から一番近い街……『エストリカの街』

縮尺はわからないけど大分林の中の方まで入って来てしまってるっぽい。

『エストリカの街』を選択すると、地面に白く光る線が浮き上がった。
小さな三角が線の上を流れて行き、こっちへ進めと誘導してくれる。
こんな便利機能だったのか。
マップ上には詳細も書かれていた。

『エストリカの街、到着予測時間、徒歩で5時間』

5時間!?

もう無理だ……お腹すいて歩けないよ……。
水分は勝利君が分けてくれたけど……空腹を認識すると盛大にお腹が鳴った。

「ミャオちゃん、諦めて『調理』しよう?ふふ……ミャオちゃんの手料理楽しみだなぁ」

本当はあの鞄の中にすぐに食べられる物が入ってるんじゃ無いだろうか?もう、全てが疑わしい。
持っていたところでこの人は絶対に出してくれないだろうと諦め、渋々メニューから『調理』を選択すると、地面から不釣り合いに現代的なシステムキッチンが現れた。

「油とか調味料とか……俺が思いつく限りで無制限に使えるから……」

勝利君は笑顔で引き出しを開いてみせる。
何か色々並んでるけど俺には使いこなせそうにない物ばかり、塩とか胡椒とか砂糖あたりしかわからない。

「俺、本当に料理出来ない……」

「『失敗しちゃった、てへっ』て、言うのも新婚みたいで萌える」

……ずっと妄想の世界に旅立っていてくれないだろうか。
そういう仕様なのか、強制的につけられたフリフリのエプロンを睨む。

あぁ……ここがその妄想の世界だったんだとため息を吐いた。


教えられるままに『アイテム』からドラゴンの肉を選択して『取り出す』を選ぶと『何キロ取り出しますか?』と聞かれた……肉が1キロどれぐらいかなんてわからないけど、とりあえず1キロで選択すると、調理台に分厚いドラゴンの肉が現れた。

さて……俺、本当に料理出来ないのにどうしたものか。

小さい頃よく視ていたテレビでやってた料理を真似をしてみようと、大きい鍋に油を注いで火をつけた。


「ミャオちゃんがどんな料理作ってくれるか楽しみだなぁ~」

キッチンと一緒に出現したダイニングに頬杖をついて勝利君は夢の世界に入っていた。
あの頭の中で俺がどんな事をさせられているのか想像したら体がブルッと震える。
油からチリチリ音がして煙も上がってきたので、ドラゴンの肉の塊をそのまま投入。

「ミャ……ミャオちゃんっ!?何の音!?」

鍋の中はテレビで笑いながら見ていたのと同じように阿鼻叫喚だった。


「………………」

ダイニングテーブルの上にドンッと出されたドラゴンの肉の素揚げを勝利君はじっと睨んでいた。

「ミャオちゃんは……大胆だね」

何とか絞り出した一言。
だから俺は料理は出来ないと断りを入れただろ。

「異世界に行って料理で魅了とか誰でも出来る訳じゃないか……料理はオートにしておけば良かったかなぁ?でもそれじゃあ手料理感無いし……エプロン姿のミャオちゃん見れないし……」

ブツブツ呟きながら黒い肉の塊とにらみ合っている。

「文句があるなら食べなきゃ良いよ。俺が全部責任持って食べるから」

「食べるっ!!食べたいです!!頂きますっ!!」

お皿を自分の方へ引き寄せると、勝利君に奪われた。
箸も何も用意していなかったので勝利君は手づかみで肉の塊を持ち上げるとワイルドにかぶりついた。

「あ……意外に柔らかい…し……肉の脂がすごい甘い、塩こしょうかければ十分美味いかも……」

塩こしょうをかけて、二口、三口と食べる勝利君を見ているとゴクリと喉が鳴る。
もう一口と肉にかぶりついた勝利君。
俺も顔を寄せて反対側からかじりついた。

「……っ!!?」

「うん……美味しい……」

勝利君の言った通り柔らかくて、空腹だったことを差し引いても美味しいかも。
脂がすごくのっていて……口から溢れた脂が顎を伝った。
手で拭おうとして、勝利君が泣きながら布で拭いてくれた。

「ミャオちゃんひどいよ~!!従者側から強制接続ありにしとけば良かったぁっ!!」

勝利君は机に突っ伏した。
もう、ごちそうさまなら残りは俺が食べていいのかな?


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