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街に明るい声が響く
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「また……お前は面白いもんを作ったな」
昼ご飯を並べる俺の手を見ながら、隊長は面白いと言うわりに面倒臭そうに頬杖をついて、あからさまな溜め息を吐いた。
見ているのは俺の手……と言うよりも指輪。
確かに右手の指輪は呪いの指輪だが、これのおかげで体力を上げられているからか、疲れにくくすこぶる調子が良いのだが?ただこの呪いは俺の作った物では無いけれど。
隊長にはどう見えているのかと、ジッと呪いの指輪を観察していると首を振られた。
「そっちじゃねぇよ」
ルノさんとのペアリングの方か。
「こちらの文化には無いかもしれないですけど、俺にはただ装飾品として指輪を付けるのも普通ですよ」
俺はアクセサリーは一切つけてなかったけれど、指輪型の駄菓子があるぐらい一般に普及していた。隊長達からしたら、指輪は武具みたいだから戦闘において何の効果も発しないこの指輪の意味はあまり理解できないのかもしれない。
「それをただの装飾品と呼ぶか?いや、うん。お前には見えてないのか」
意味深だな。
俺に見えてないとなるとまた魔力関係の何かか。
「隊長には何が見えてるんですか?……レ……ナタスンさんも何か見えてるんですか?」
隊長の隣に座っていたレフさんに声を掛けようとしてその隣のナタスンさんに声を掛けた。
ハイケンさんほどでは無いけれど、レフさんも『聖女』信者だった様で……どうやら俺のファンっぽいのだ。
隊長から、あまりルノさんにベッタリしているところをレフさんに見せてやるなと注意を受けている。
急に話を振られたナタスンさんはサンドイッチを咀嚼しながら俺の左手を指差した。
「それか?その指輪から副隊長のに似た魔力を感じる。副隊長も同じのしてるけど……あっちは逆に副隊長の魔力を吸ってるな」
「吸ってる!?」
さらりと言われたけど、大事じゃ無いか。魔力を吸うって呪いの指輪と同じじゃん!!
「ルノさん!!魔力吸われるの気付いてたんですか!?そう言う事は早く言ってくださいよ!!」
早く外させようとルノさんの席に走ったけれど、ルノさんは動揺もせず指輪を見せるように手を軽く持ち上げる。
「これぐらいの魔力吸収量なら何の支障にもならない。むしろ余剰分を吸収してくれて助かっている」
余剰……魔力の詳しい事は知らないけれど、ルノさんは魔力量が多過ぎて常に体外に魔力を撒き散らしていると悩みを聞いているけれど……本当に大丈夫なのだろうか?
俺だけルノさんの変化に気づけないのは寂しいけど、見えないからこそ大丈夫と言われても心配でルノさんの体を上から下まで何度も目で往復する。何故スキルはそんな機能をつけてくれたのか……余計な機能だ。
「シーナ……昼間っから見せつけてくれるなよ~」
ニタニタ笑いながらベルンさんに後ろから肩を組まれる。
「何も見せつけてないでしょうが」
そんなに近づいた訳でもないし、普通に会話をしているだけだが……ベルンさんの頭が他人に対しても恋愛脳なのは今更なので仕方がない……恐らくこの人は例え道端の石でも擬人化して萌えられている人だと密かに思っている。
「いやいや、もう指輪から副隊長の『俺のものに近づくな』って想いが溢れてるっての。俺らにも牽制しまくりじゃん?」
「なるほど……そういう効果があるのか」
それはルノさんは思ってもなかった様で感心しながら俺の指輪を見て嬉しそうに微笑むので、その笑顔に俺も曖昧に笑って、鍋を火にかけたままだったと言い訳しながら厨房へ逃げ込んだ。
恥ずかしい。
ペアリングをつけている時点で『付き合ってます』のアピールではあるけれども……『俺のものに近づくな』って……束縛されすぎると嫌になる物だろうが、好きだといいながら放置プレーだったルノさんの細やかな執着は……ちょっと嬉しいかも。
ルノさんが意図してやっている訳では無いにしろ愛されてるって感じるよね、俺にルノさんの魔力は見えないけどさ。
左手の指を見てついつい、にやけてしまった。
ーーーーーー
街が落ち着いてきて、ルノさんも一緒だという事もあり、帰り道は街を散策して帰る事が日常的になってきた。
まだ南区にはあまり近づけさせてもらえないけれど、街の人たちとも顔見知りになってきて、マルトリノさんのお店以外にも、常連店が増えてきた。
……と言ってもこの辺りのお店はマルトリノさんが取り纏めており、ぼったくりなどいわゆる『阿漕な商売』と言われる様な犯罪めいた店が出ない様に目を光らせているらしい。
そうやって取り締まるかわりに、仕入れ先や従業員、借金何かの相談にも乗って面倒を見ているらしい。
レイニート様のお陰で奴隷商の人間も居なくなったし、治安はかなり良くなったとの事。
喧嘩などいざこざは有るものの、それぐらいは日本でだって普通に目にしてきたし、流石にそこまで完全に争いのない社会なんて逆に気持ち悪い。
でも平和になってきたおかげで、街にとてもいい変化が訪れた。
「いらっしゃいませ!!あ、シーナさん。今日のおすすめは西区の畑で採れたパンキュルプンです!!」
元気良くお勧めのパンキュルプンを持ち上げて見せてくれたのは、カカルさんのお姉さん。
カカルさんは故郷から家族を呼んで、お父さんとお母さんは西区で野菜を育て、カカルさんとお姉さんで八百屋さんを始めた。
マルトリノさんがユノスの街以外から仕入れて来た物を扱い、この街で採れた野菜はカカルさんのお店で扱うマルトリノ支店。
「大きなパンキュルプンですね、パンキュルプン3つとメリザンガを6本ください。今日はルーミさんお一人ですか?」
年頃の女性が一人で店番が出来る。
それがこの街に起きた大きな変化だった。
「カカルは丁度見回りに出たところです。もうすぐ帰ってくると思います」
お姉さんに見えない様に、ルノさんから背中を突かれた。
カカルさんはルノさんを見かけると称賛の嵐が始まるので未だに苦手らしい。
受け取った野菜を収納鞄にしまうと頭を下げて店を後にした。
昼ご飯を並べる俺の手を見ながら、隊長は面白いと言うわりに面倒臭そうに頬杖をついて、あからさまな溜め息を吐いた。
見ているのは俺の手……と言うよりも指輪。
確かに右手の指輪は呪いの指輪だが、これのおかげで体力を上げられているからか、疲れにくくすこぶる調子が良いのだが?ただこの呪いは俺の作った物では無いけれど。
隊長にはどう見えているのかと、ジッと呪いの指輪を観察していると首を振られた。
「そっちじゃねぇよ」
ルノさんとのペアリングの方か。
「こちらの文化には無いかもしれないですけど、俺にはただ装飾品として指輪を付けるのも普通ですよ」
俺はアクセサリーは一切つけてなかったけれど、指輪型の駄菓子があるぐらい一般に普及していた。隊長達からしたら、指輪は武具みたいだから戦闘において何の効果も発しないこの指輪の意味はあまり理解できないのかもしれない。
「それをただの装飾品と呼ぶか?いや、うん。お前には見えてないのか」
意味深だな。
俺に見えてないとなるとまた魔力関係の何かか。
「隊長には何が見えてるんですか?……レ……ナタスンさんも何か見えてるんですか?」
隊長の隣に座っていたレフさんに声を掛けようとしてその隣のナタスンさんに声を掛けた。
ハイケンさんほどでは無いけれど、レフさんも『聖女』信者だった様で……どうやら俺のファンっぽいのだ。
隊長から、あまりルノさんにベッタリしているところをレフさんに見せてやるなと注意を受けている。
急に話を振られたナタスンさんはサンドイッチを咀嚼しながら俺の左手を指差した。
「それか?その指輪から副隊長のに似た魔力を感じる。副隊長も同じのしてるけど……あっちは逆に副隊長の魔力を吸ってるな」
「吸ってる!?」
さらりと言われたけど、大事じゃ無いか。魔力を吸うって呪いの指輪と同じじゃん!!
「ルノさん!!魔力吸われるの気付いてたんですか!?そう言う事は早く言ってくださいよ!!」
早く外させようとルノさんの席に走ったけれど、ルノさんは動揺もせず指輪を見せるように手を軽く持ち上げる。
「これぐらいの魔力吸収量なら何の支障にもならない。むしろ余剰分を吸収してくれて助かっている」
余剰……魔力の詳しい事は知らないけれど、ルノさんは魔力量が多過ぎて常に体外に魔力を撒き散らしていると悩みを聞いているけれど……本当に大丈夫なのだろうか?
俺だけルノさんの変化に気づけないのは寂しいけど、見えないからこそ大丈夫と言われても心配でルノさんの体を上から下まで何度も目で往復する。何故スキルはそんな機能をつけてくれたのか……余計な機能だ。
「シーナ……昼間っから見せつけてくれるなよ~」
ニタニタ笑いながらベルンさんに後ろから肩を組まれる。
「何も見せつけてないでしょうが」
そんなに近づいた訳でもないし、普通に会話をしているだけだが……ベルンさんの頭が他人に対しても恋愛脳なのは今更なので仕方がない……恐らくこの人は例え道端の石でも擬人化して萌えられている人だと密かに思っている。
「いやいや、もう指輪から副隊長の『俺のものに近づくな』って想いが溢れてるっての。俺らにも牽制しまくりじゃん?」
「なるほど……そういう効果があるのか」
それはルノさんは思ってもなかった様で感心しながら俺の指輪を見て嬉しそうに微笑むので、その笑顔に俺も曖昧に笑って、鍋を火にかけたままだったと言い訳しながら厨房へ逃げ込んだ。
恥ずかしい。
ペアリングをつけている時点で『付き合ってます』のアピールではあるけれども……『俺のものに近づくな』って……束縛されすぎると嫌になる物だろうが、好きだといいながら放置プレーだったルノさんの細やかな執着は……ちょっと嬉しいかも。
ルノさんが意図してやっている訳では無いにしろ愛されてるって感じるよね、俺にルノさんの魔力は見えないけどさ。
左手の指を見てついつい、にやけてしまった。
ーーーーーー
街が落ち着いてきて、ルノさんも一緒だという事もあり、帰り道は街を散策して帰る事が日常的になってきた。
まだ南区にはあまり近づけさせてもらえないけれど、街の人たちとも顔見知りになってきて、マルトリノさんのお店以外にも、常連店が増えてきた。
……と言ってもこの辺りのお店はマルトリノさんが取り纏めており、ぼったくりなどいわゆる『阿漕な商売』と言われる様な犯罪めいた店が出ない様に目を光らせているらしい。
そうやって取り締まるかわりに、仕入れ先や従業員、借金何かの相談にも乗って面倒を見ているらしい。
レイニート様のお陰で奴隷商の人間も居なくなったし、治安はかなり良くなったとの事。
喧嘩などいざこざは有るものの、それぐらいは日本でだって普通に目にしてきたし、流石にそこまで完全に争いのない社会なんて逆に気持ち悪い。
でも平和になってきたおかげで、街にとてもいい変化が訪れた。
「いらっしゃいませ!!あ、シーナさん。今日のおすすめは西区の畑で採れたパンキュルプンです!!」
元気良くお勧めのパンキュルプンを持ち上げて見せてくれたのは、カカルさんのお姉さん。
カカルさんは故郷から家族を呼んで、お父さんとお母さんは西区で野菜を育て、カカルさんとお姉さんで八百屋さんを始めた。
マルトリノさんがユノスの街以外から仕入れて来た物を扱い、この街で採れた野菜はカカルさんのお店で扱うマルトリノ支店。
「大きなパンキュルプンですね、パンキュルプン3つとメリザンガを6本ください。今日はルーミさんお一人ですか?」
年頃の女性が一人で店番が出来る。
それがこの街に起きた大きな変化だった。
「カカルは丁度見回りに出たところです。もうすぐ帰ってくると思います」
お姉さんに見えない様に、ルノさんから背中を突かれた。
カカルさんはルノさんを見かけると称賛の嵐が始まるので未だに苦手らしい。
受け取った野菜を収納鞄にしまうと頭を下げて店を後にした。
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