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第3章

この子誰の子?

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 リリスはお茶会を断らなかったのはリアンを恋愛対象として見ていたのではなく、元国王であるリアンと友好な関係を築けていけば、色々と治安の件や貧しい地域の事で利用出来るかもと下心があったのだ。利用と聞こえは悪いがいい街づくりが出来るのではないかと期待したのだ。お茶会の中で散々、下町の話や治安の話をしていたのだが聞いて貰えていなかったようだ。

 リリスはリアンがまさか、本当に婚姻を考えていたとは思っていなかった。リアンは退位し暇になり、なにか刺激がほしいと考えているのかと思いお茶会を通じて街づくりを提案しようとしたのだ。
 リリスは貧しい人たちに何かしたかった、だからポストを設置したのだが、それだけでは広がらない事は分かっていた。だから暇になった元国王のリアンとなら何か一緒に出来る事があるのではと考えたのだが、リアンと結婚してまで街づくりをしたい訳ではない。そこまでの自己犠牲は考えていない。


 友好関係を築くのはやはり簡単ではないなとリリスは紅茶を啜る。

 気を持たせたのが悪かったのかな?でも気を持たせるような事何かしたかしら?ああ、私は生まれ付きの魅了があったんだっけ?でもそもそも婚姻の意思表明もされてない。まったく王様気質は治らなかったようだ。よくそれで「平民に俺はなる!」とか言ってたな。悪の根源だわ…


「ずいぶん落ち着いているね。もう逃げられないと思うがね」

「逃げられないって、逃げる女を捕まえてどうしようっていうんです?」

「君も私と一緒になればわかる。私に惚れるはずだ」
 こんなことを告白している男をなぜ惚れると思うのだ。アホか…
「惚れませんけどね」

「今日の所はここまでにしよう。帰ってご両親と話合うといいよ」

「そうですね、その前に」



 リアンは突然、座っていた場所から無様に倒れこんだ。身体に力が入らず起き上がれない。リアンに付いている家臣たちは下がらせているので誰も助けに来ない。目の前に座っているリリスは落ち着いてリアンを見ている。助けに行こうともしない。

「な、何をした…」

 リアンは豪華なチェアから転がり落ち、地面に這いつくばっている。元王は小鹿のように手足をピクピクとさせ懸命にリリスに手を伸ばす。

 リリスは冷えた紅茶を啜ると自身の魔力を放出し数体の縛っている精霊を元国王に見せつけた。


「私が誰の子かお忘れですか?ニールヴァンス王国の王女ジュリエットの娘、そしてあのジュリエッタの姪ですよ?ジュリエッタに出来て私に出来ないことがありますか?」

 冷たい視線を送るリリスにリアンは戦慄する。

「あなたの精霊をすべて奪いましたし、魔力も底まで奪いました。さてどうします?」
 リリスは面倒そうにリアンに語りかける。

「どうやって…だれ…た、助けてく、くれないか…」
 残り少ない魔力で懸命に当たりを見渡すも誰もいない。リリスに助けを求めるのが精一杯であった。

「あら?条件は?」
「魔法をと、解く…」

「各国の重鎮たちの?印を結んでるんでしょ?無意味ね」

「…セリアの件を約束しよう」

「では、魔力だけ返しますから迅速に、精霊は人質にしますので、よろしく」

「な、精霊なしでどうやって、せ、説得するというのだ」

「えー?今まで王様してたんでしょ?まさかすべて癒頼みだったの?ダサいわね」
 リリスは既に帰ろうとしている。
「精霊なしで少しは苦労してみてはいかが?」
 歩き出すリリスは、思い出したかのようにリアンに向き直る。

「そういえば、あなたはいつも紅茶にジュリエッタが作った魅了ポーションを混ぜてたわね?ものすごく微量を。気が付かないとでも思ったの?でもジュリエッタもバルには効かなかった。たぶん、少しでもウザイと思っていたら効かないんじゃない?ま、私は魔力でその成分を分解させてたけど」

 リリスは目を見開いて怯えているリアンに近づき言葉を掛ける。 
「ああ、だからすぐに惚れると豪語してたのね」

「あなたのこの国に対する功績は大変素晴らしいのですが、個人にこのようなことをするのであれば精霊はお返しする事は出来ませんので…どうしましょ?」

「父と母に相談しますね」
 リリスはにっこりと笑い、リアンに魔力を返すとそのままバルの元に行く。


「止めなかったのね」
 バルは近くにいて事の成り行きを見ていたようだ。
「…まさか、リアン様がリリスにあのような事をするとは…私が愚かだった」

「バルは仕事をしていただけよ。帰りましょ」
 リリスはバルの腕を組み、そのまま転移をした。

「待ってくれ。精霊を返してくれ!」
 リアンは動けるようになるとリリスを追って来た。しかし転移したリリスたちを追っては行かなかった。リリスは転移出来るほどの魔力まで返していないのだ。

 
「戻らなくてもいいの?」
 バルは転移したリリスの邸の前で固まっている。

「俺は…泉の件をセリア様に引き継いだら貴族を廃そうと思っていた。でもリリスの件を聞いて…俺はなにをしているのかと…」

「なによ?どうしたの?」

 バルはリリスの手を取り、自分の方に引き寄せた。
「俺に、俺にリリスを守らせてほしい。リリスを幸せにするのであれば、リアン様でもセリア様でもいいと思っていた。でもムリやり、リリスを自分のモノにしようとしているあんな奴らに渡せない。俺が幸せにする」

 リリスを抱きしめキスをした。

 バルを払いのける事はリリスにとっては朝飯前だ。しかし力が入らず、黙ってキスを受け入れた。そして、バルの胸の中に納まる。
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