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第3章

アガルデン公爵

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 雪が舞う頃、リリスはセリアに会うことが出来た。今では新王を支えるため忙しくしているようだ。

「久しぶりだね、リリス。元気そうだ」
「ありがとう、セリア。元気よ、あなたも」

「分かっているよ。俺に面会に来た理由は…悪かったね。リリスを利用してしまった。リリスは下級貴族だし、絶対に花嫁候補にはなれないと思っていたんだ。だからリリスとの婚姻の条件を出していたんだよ。済まない」

 どうやらリアンはセリアにも癒の魔法をかけていたようだ。精霊の縛りがなくなりセリアは正常に戻っていた。癒の精霊のすごい所は自分が操られてたと気が付かない所だろう。

「兄と相談をして3人の婚約者も解消してもらったよ。どうかしていた」
「結婚はまだ考えてなかったのね…」
「ああ、そうだよ。まだ色々忙しいこんな時期に結婚している暇はないと言っていたんだけどね。なぜ、急に承諾してしまったのかな?恋人がほしかったのかも。まだ当分無理だろうな。「レイジュの泉」の道を作るのに何十年と掛かる。その初動は大事だからね」
「それを聞いて安心したわ。その条件を聞いて頭がおかしくなったのかと思ったもの、ふふ」
「君は…バル殿と…?」
 セリアは後ろに控えているバルに目をやる。
 頬を赤らめ、にこりと笑う。
「…そうか、お似合いだと思う」
「ありがとう」

「君の母上や父上にも迷惑をかけてしまったようだ。そのことに関わった貴族どもは降格にしたよ。もう嫌がらせはないから安心してくれ。賠償金も正規な裁きを受け支払うつもりだよ。迷惑をかけた」

「よかったわ」
「君の父上はドルフェスを廃すると言っているらしいね。この嫌がらせが原因ならもう大丈夫だから廃するのを撤回させようか?」
「ううん、違うの。それは父が決めたこと。この数年間の短い間だったとはいえ自分には不向きだと感じたらしいわ。それに士爵の称号は1代限りだし、もう必要ないと思ったみたい」

 ドルフェス家は他の国々から入国拒否をされている。ドルフェスでなくなれば問題ない。印を解除してもらえればいいのだろうが、また世界各国の重鎮一同が顔を合わせるなと無理である。
 印を解除するには、印を結んだ本人同士が必要なのだ。国同士の印ならばその代表でもいいのだが入国拒否は個人で結んでいた。個人が死ねば印は解かれる。

「それからさっきセリアが言ったようにバルと私は近く結婚するの。で、新しく別の国に行こうと思っているの」
「え?なぜだい。もう嫌がらせはないよ?」
「そうなんだけど、私もこの国しか知らないし4人でゆっくり旅をしながら家族で回ろうと思うの」
 元国王様に危害を加えている。今のところ、リアンはまだなにも行動を起こしていない。しかし、魔力と精霊が戻れば、上級貴族に危害を加えたことにより拘束されるかもしれない。その前に国に出ようと4人で話合ったのだ。

「そう…でもまた会えるだろう?相談したい事があったらメールしていいかい?」
「ええ!もちろん。私たちもなにか困ったらセリアを頼るわ」
 メールとは以前のメール便の事だ。リリスがメール便を安く使い勝手よくするようにとお願いしていた件だが、メール便はリアン政権の時に当時のソロモン殿下に任され、開発が進められていた。別の国のメール事情を探らせ、いい所は取り入れ改良された。今では貴族やお金持ちなら一家に1台、普通の家庭でも5軒に1台に普及している。小型化も今は進み、以前の約半分にまでなっている。代金も格段に安くなり、それを以前と同じでスズカで取引をする。リリスはキキと協力して自分たち用にもっと小さく改良して家族で1人1台持っている。まるで携帯電話のようだ。頑張れば精霊の力でスマホが出来るかもしれない。

「それと…セリアにお願いがあるの」
「ん?めずらしいね、なんだい?」
「私が言う事ではないけど、リアン、リアン様とたまに連絡を取ってあげて、お寂しそうよ」
 ストーカーとは、ほっとかれるとその思いが拡大する。暇を持て余すから変な思考に走るのだ。後は息子たちにお任せします。

「ああ、リリスはたまに、父上とお茶会をしていたんだったね」
「リアン様に誘われて…、街造りの相談とか出来ればと思っていたんだけど」
「父上はリリスを気に入っていたからバル殿との結婚も不快に思うかもしれないね。ん?それで国を出るのかい?それだったら…」
「それもあるけど、違うわ。本当に旅をしたかったの」
 元国王に乱暴している。許されるばずがない。権力に物を言わせたらどうする事もできない。
「わかった。父上の事はもう気にしないで。いつかまた帰って来なよ」
「ありがとう」

 セリアとの誤解も解けた。もうリアンと関わらなくていいのだが、あの後から会っていないので状況が分からない。セリアにはまだリアンに色々した事は伝わっていないようだ。精霊たちも返さないといけない。ジュリエッタの精霊は自分の意思で戻らない事を決めていたが、リアンの精霊は無理やり縛っている。戻さないと可哀そうだが、また裏でソロモンやセリアを誘導されても困る。


「リリスはリアン様にも情をかけるのだな、俺は許せないけど」
「まあ、やり方は兎も角、住民の為の政治をしてきたは確かよ。レイジュ様の件でも泉の件でも荒らさないと印を結んでくれたのは誰でもないリアン様よ。それは感謝してる。過去の行いをすべてなしには出来ないわ」

「そうか、俺はそういうリリスが好きなんだな」
「えぇ?き、急に、な、何言ってんの?」
 リリスは真っ赤だ。

「…リリスでもそんな顔するんだな、っぷ」
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