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前までは午前中で帰り、母の昼食を準備していた真広だが、今は九時五時で働いていた。
時給は千円ほど。休憩が一時間あるので日給は七千円だ。
その額に情けなさを感じたが、それよりも悲しかったのは働く時間が延びて疲れたことだ。午前だけとは全然違う。終わった時には体力がほとんど空になっていた。
「お疲れ様です」
そう言ってから休憩室で休んでいた真広はこの言葉の本当の意味が分かった気がした。
すると正社員の安達が入ってきた。真広を見つけると笑顔で話しかける。
「お疲れ様です」
真広が会釈すると年下の正社員は続けた。
「そうそう。正社員になるための試験があるんですけど、受けますよね?」
「ああ。はい。受けたいと思ってます」
「じゃあ店長に言っときます。いやあでもようやくですね。この店でも一番の古参だし。いつからでしたっけ?」
「高校生の頃からですね」
「すごいな。総菜の伊藤さんよりも昔なんですよね」
伊藤はもう六十歳のおばさんだった。
真広は「ええ、まあ」と気まずさを隠しながら頷いた。
「なにか分からないことがあったら言ってくださいね」
「ありがとうございます」
「じゃあ、また」
安達が休憩室から出て行くと真広は静かに嘆息した。
自分より七つも若い上司に心配されている。助けてくれるのはありがたいが、同時に歯痒かった。
安達はもう結婚して子供もいるという。なのに自分はまだ正社員にもなれていない。比較すべきじゃないことは分かっているが、どうしても真広は自分と比べてしまった。
時給は千円ほど。休憩が一時間あるので日給は七千円だ。
その額に情けなさを感じたが、それよりも悲しかったのは働く時間が延びて疲れたことだ。午前だけとは全然違う。終わった時には体力がほとんど空になっていた。
「お疲れ様です」
そう言ってから休憩室で休んでいた真広はこの言葉の本当の意味が分かった気がした。
すると正社員の安達が入ってきた。真広を見つけると笑顔で話しかける。
「お疲れ様です」
真広が会釈すると年下の正社員は続けた。
「そうそう。正社員になるための試験があるんですけど、受けますよね?」
「ああ。はい。受けたいと思ってます」
「じゃあ店長に言っときます。いやあでもようやくですね。この店でも一番の古参だし。いつからでしたっけ?」
「高校生の頃からですね」
「すごいな。総菜の伊藤さんよりも昔なんですよね」
伊藤はもう六十歳のおばさんだった。
真広は「ええ、まあ」と気まずさを隠しながら頷いた。
「なにか分からないことがあったら言ってくださいね」
「ありがとうございます」
「じゃあ、また」
安達が休憩室から出て行くと真広は静かに嘆息した。
自分より七つも若い上司に心配されている。助けてくれるのはありがたいが、同時に歯痒かった。
安達はもう結婚して子供もいるという。なのに自分はまだ正社員にもなれていない。比較すべきじゃないことは分かっているが、どうしても真広は自分と比べてしまった。
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