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30.家族会議

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「ところで、シーク(家族になったから、下の名前呼びに変えることにしたらしい)とコリン。この前の事で、なにか疑問に思ったこととか何かないか? 疑問というか‥なにか、気になったことというか‥。黒幕に繋がるかもしれないし、何でも思い出したことを言って欲しい」
 ザッカが、ローテーブルを挟んで向かい側の席を進めながらシークに聞いた。
 今まで「親父呼びを強請」させていた男と同一人物とは思えない、真剣な顔だった。
 ‥仕事のスイッチが入ったって奴だ。
 コリンとシークも自然と表情を険しくした。
「アンバーの件ですか? 」
 一人掛けのソファーに座りながらシークがザッカを見る。
「アンバー? ああ、あのトカゲの尻尾切りで切られた魔術士か」
 ザッカが聞きなれない名前に一瞬首を傾げ、直ぐに「ああ‥もしかして‥」と話を繋げる。
 今回の事は、色々と情報操作されて、新聞には、ちょっとした事故‥という位の記事しか出ていない。
 裏に、魔術士がいたことは、伏せている様だ。
 新聞は、国よりだから、「国に都合が悪いこと」は書かれないんだ。
「国民に不安を与えたくないからね」
 と、それらしいことを騎士団長が言っていた。
 因みに、ばっちりそこにいた地域住民には、災害救済金という名の「口止め料」が払われていた。
 ‥国のお偉方に、そういう汚い奴がいると思ったらゾッとする。
「彼は‥どうなるのかな‥やっぱり、上に‥切られる‥」
 とナナフルが眉をひそめた。
 心配してるんだ、優しいです。やっぱり女神です。 
 ‥そういう顔も麗しいです。
 コリンはきゅんとなってナナフルを見上げる。
 ‥やっぱり、理想のお母さん‥。
 お母さんは、こうじゃなきゃ。
 心配性で、優しくって‥。そして、守りたいような儚さ‥(← コリンにもあった王子な血。ここらは完璧お母さんの血)
 守りたい儚さと、守ってもらってる安心感‥。お母さん‥。
 ほう‥。
 ため息をつく。
 ザッカがナナフルの肩をポンと叩き。
「殺しはしないだろう」
 と、中途半端に慰めていた。
 しかも、根拠ゼロだな。適当に言っただけだな。‥ホント、どうとも思ってないんだな。
 ‥ナナフルさんの事以外どうでもいいんだろうな‥。‥それも、ちょっとどうかと思うけど、まあ、‥拳で分かり合った僕たちとちがって、ザッカさんはアンバーさんの事知らないからそれも仕方が無いか‥。
 それにしても‥
 と、シークがため息をつく。
「しかし、‥助けるそぶりもない、とか、仲間じゃないのか? 」
 と、シークさんは腹立たしそうだ。
 シークさん、可愛い。友情とか、そういうの信じてるとか‥可愛い。
 悪の組織に友情とかあるって信じてるとか、‥ホント、シークさんって‥擦れてない。
 でも、‥ちょっとちょろすぎる? 心配だよ‥。僕がついてないと‥。(← そして、気付いていないが、コリンは「お父さん気質」)
「仲間とは思ってないでしょ。‥所詮、都合のいい駒でしょ」
 コリンがあっさり言うと、シークはちょっと眉をひそめた。
 ふふ
 コリンは苦笑いして、ザッカを振り返ると
「切られるにしても、まだ、アンバーが解放されてないからなんとも‥まだ、アンバーに接触して来た者もいないみたいですね。‥もっとも、接触された時が最後、アンバーが消される時ですからね。気を付けておかないといけませんね」
 言った。
 これで、優しいナナフル母さんは安心できるだろう。


「アンバーに印でもつけて来た? 」
 シークがコリンを振り向き、コリンが頷く。
「ええ」
 コリンが頷き、にっこりと微笑む。
「追跡型ではないですけどね。‥追跡型は、ずっと魔力を使わなければならないから。連れていかれる場所が分かっているから、識別型で充分かと。あれなら、ちょっと意識する程度だから、そんなに魔力を使わないんです」
 追跡型なら、それこそお手洗いに行く時移動する際も、ずっとそれを意識で追っていることになる。だけど、認識型は、言うなれば監視カメラを仕掛けている様なもんだ。目的の場所に監視対象者がつけば、そのままそこでとどまり、その辺りの魔力の流れをこっちに流してくる。
 伝わってくるのは、映像じゃない。魔力の流れだけだ。
 例えて言うならば‥監視カメラとサーモグラフィーカメラ位違う。温度差と違って、そこにある魔力が色分けで分かる。対象者は、青。そして、その周りに固定でいる見張りやなんかは、緑で表され、新しく動きが‥別の人物が来たら赤色が表示されて分かりやすい。‥顔は分からないけど。
 映像と違い別にずっと見ておく必要は無い。
 そういう欠点はあるものの、魔力使用量も少ないから集中力もそう要らないので便利だ。
 因みに、‥魔力の精度を上げれば、顔を見ることも出来る。
 魔力に違和感があれば、意識を更に集中させて見ればいい。
 別の人物が来た時と、後は、対象者の精神状態に著しい変化が現れた時やなんかも、表示される色が変わる。青から紫位に変わることが多い。
 やっぱり動揺したり何かしら、魔力にもその影響が出るからね。
 あとは‥そうだな‥監視対象者が殺気を出せば、魔力は一気に跳ね上がって色がまた変わる。黄色とかになるんだ。‥魔力が消えたら、それは‥もう、‥ね。
 ‥だけど、国の管轄している牢獄で‥いくら何でも堂々と殺しは行わないだろう。行うとしたら、アーバンが牢獄から出てから‥ということになるだろう。
 接触した人数やらは、相手に魔力があれば分かりやすいんだけど、相手に魔力が無いこともあるからね。
 あくまで、誰か接触があったって分かる位だと思ってもらえればいい。
 どうしても詳しく知りたければ、視覚だけ転移させればいいしね。
 ‥場所の移転より、魔力と集中力を使うから、そう頻繁にはしたくないんだけどね‥。
 コリンとシークの会話に首を傾げているナナフルに、そういうことをかいつまんで説明すると、
「そういうことも出来るんだね」
 ナナフルが感心した声を出し、コリンが頷く。
 ‥やっぱり、凄いな。コリンは
 さすが、魔術士と誓約士の職業紋持ち。
 ハイスペックさが半端ない。
 ‥自分は、剣には自信はあるが、魔術にはからっきしだからな‥。
 シークは、感心すると同時に、何か「置いて行かれたような感じ」になる。
 ‥もとから置いて行かれているんだけどね。
「それで、第三者の接触が分かった時‥どうするんだ? 」
 ザッカが、視線をコリンに移す。
 コリンが薄く頷く。
「接触が分かった瞬間、転移魔法でアンバーの元に飛びます。‥そして、接触した相手に誓約を執行します。警察や国家と相棒を組んでいるわけではないので、法的に尋問は出来ませんが、‥そうですね、インタビューしましょうか」
 ニヤリ、と薄く笑う。
 その顔が、恐ろしい。
 美人のニヤリ、恐ろしい程美しいんだけど‥ただただ恐ろしい。
 多分、美人だから、‥恐ろしい。
「あなたは誰で、何をしている人なのですかって」
 ふふ、とその顔のまま、低い声で付け加える。
「それと、何を企んでるんですか? もですね」
 ゾッとした。
 あんまり綺麗で、
 あんまり視線が冷たくって、
 ゾッとした。

「危険だ! 」
 ザッカとナナフルが即座にコリンの言葉に反応して、叫んだ。
 ‥おお、凄い。俺はコリンに迫力負けしてたぞ‥。
 シークは、コリン・第二の両親の底力に感動した。
「‥こっちに、そいつを‥アーバンとその接触者を転送するってことは出来ないのか? 」
 提案をしたのは、ザッカだった。
 誓約をしたなら、相手はコリンに抵抗は出来ないだろう。
 ‥危険はないだろうが、それでも敵陣だ。もとから周りにいる者だって、敵ではないとは限らない。
 というか‥絶対に敵だろう。
 牢獄は、敵の手下の巣窟で、そこに、どれくらいのクラスか分からない敵のボスが来るっていう最悪な状況だ。
 それに、インタビューは自分たちの方が向いている。
 場数を踏んでいる。
 コリンは暫く考えて‥
「‥出来ますね。二人位なら問題はないです。‥分かりました。では、僕が移転して、それから、アンバーと第三者を連れてこっちに戻ってきます」
 しぶしぶ了承した。
 二人が自分の能力を認めていないって思ったんだろう。
 だが、‥それにはシークも賛成だった。
 敵が多すぎる。いくらコリンが凄腕の魔術士だとしても、だ。

 それにしても‥
 ‥合計三人を転移できるのか。
 シークは心の中で小さくため息をついた。
 コリンは本当に‥どれだけ‥


 ‥でも、接触する相手って一人とは限らないんじゃ‥ない?
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