婚約破棄されまして(笑)

連載

サテュロスゲットの旅 5

野菜やベーコンがトラジの両前足の持つ包丁によってシュパパパパンッ！と切られてく。まな板の上でトントン切るんじゃなくて、空中で縦横無尽に包丁が動きまくってまな板の上にパラララランッと纏まって落ちてきた。凄いとしか言えない。

「ご主人！なべをおねがいしますにゃ！」

「あぁ、うん。」

寸胴鍋をドンドンと出して置く。

「わけていれるにゃ！」

「はいにゃ！」

「がんばるにゃ！」

タマとノエルが元気一杯に具材を鍋に入れていく。最早助手。どこかで見たアイルーキッチ◯のようです！
鍋一杯の具材が手際良く入れられます。

「なべをはこぶにゃ！」

えっ！結構重いのに！タマとノエルが協力して寸胴一個をトテトテと言うかヨロヨロと言うべきか、頭の上に持ち上げて運びコンロへとドスン！と置く。
シュタッ！とトラジがコンロへと一気に跳び乗った！作ったバーベキューコンロはコンロ兼テーブルとして使えるように作った代物だからトラジが乗った所で一切問題無い。無いけど……熱くないのか？

「あ、水！」

「もんだいないにゃ！ボクのスキルでちゃんとできたにゃ！」

……本当に入ってた。料理だから他の系統の魔法とか関係無いんだ……

「マジか……」

ルークが呟きました。分かります。地獄焼きとかあるんで何か攻撃の応用に出来るんじゃないか？と思っちゃいました。
お玉を持ったトラジが鍋をかき混ぜ始めました。そして聞こえる例の鼻唄。

ニャンニャニャッ♪ニャニャニャッ♪ニャンニャニャッ♪ニャニャニャッ♪ニャニャンッニャニャンッニャニャンッニャニャンッ♪ニャニャニャニャニャッ♪

最期決めポーズをしました。が、出来上がった訳ではありません。

「つぎのなべにゃ！」

黙って見ていたタマとノエルが新しい鍋をエッチラオッチラ持って来ます。同じようにトラジがかき混ぜながら鼻唄を歌います。そんな事を鍋全部に行いました。

「みんなでまぜるにゃ！」

「がってんにゃ！」

「がんばるにゃ！」

次々と跳び乗るニャンコ達。

「ちょっとあついにゃ！」

「けっこうあっついにゃ！たいへんにゃ！」

やはり経験の差か……ちょっとのタマと結構なノエル。

「しゅぎょうにゃ！いちにんまえににゃるとあつくなくなるにゃ！」

スゲェな料理スキル暑さ耐性か無効がつくのか……

「がんばるにゃ！いつかボクのてりょうりをご主人にたべてもらうにゃ！」

いや、今の時点で手料理だと思うよノエル……いや、ノエルだけの手料理という意味なら違うか。

「ノエル！そのいきにゃ！ボクたちはトラジをおてほんにガンバルだけにゃ！」

タマの熱意が凄い！

「さ！みんなでつくりあげるにゃ！」

トラジのかけ声で三匹が例の鼻唄を歌い出しました。コンロ台の上でお尻フリフリお玉をかき回します。
ザワリ……と感じる人の気配……覚えがある……かつて朝の集会で感じた気配……そしてチラチラと私を見るルークの視線。鼻唄が終わりに近づく。
アイコンタクトを交わす。
鼻唄が終わり、決めポーズを決める三匹。尻尾ピーン！おひげも耳もピンピンして自信満々です。

「「上手に出来ました！」」

私とルークでお決まりのセリフを叫びました。なぜかニャンコ達も誇らしげです。
ミネストローネが出来上がり、メッチャ美味しそうでお腹空きました！