婚約破棄されまして(笑)

連載

サテュロスゲットの旅 31

清々しい朝を迎え、宿で懐かしのメニューの朝ご飯を頂き全員割と低めのテンションで宿を後にしました。街を出てすぐの大街道で隊列を整え、全員集合するまで待つ。待ってる間の重い雰囲気……まるでお通夜。何となく想像がつくけど聞きたくないです。人間は一度覚えた快楽は中々忘れられないのと同じで、美食（笑）に慣れ親しんだ舌には塩味メニューはちょっぴり切ない。さすがにフードファイターな彼が人並の量で終了してるのを見ると、悪い事をしてるようで何だか罪悪感が芽生えた。黄昏れてる隊員達の事もこのままでは士気に関わる気がする。前方を見ながら待機してると前からトールお兄様が騎乗したままやって来た。

「エリーゼ。」

何となくだけど、予想が付く。

「はい。何でしょう。」

「可能な限り街に宿泊するのは仕方ない事なんだが、その分野営の食事を量多めで作って貰いたい。」

「分かりました。」

そう返事をするとお兄様は先頭へと戻って行った。
ですよね～！と心の中でツッコむ。さすがにあれっぽっちしか食べない彼を見たらそうなりますよね。私ですら心配なのに、ずっと一緒にいるお兄様のお気持ちを考えると一刻も早く美味しい食事を与えなければ！って思いますよね。私もアニスから笑顔が消えたので今日のお昼ご飯は頑張るつもりです。
余談ですが、島送りにしてたカワイコちゃん達を朝呼び戻した時……チラッと見たノエルとルチル。あまりに対照的で心の中でゴメンね！と叫んだわ。とにかく今日のお昼は男の食い付きナンバーワンと前世聞いたショウガ焼きの丼にするわ！具沢山の豚汁と白菜の浅漬けも付けようと思うの。それ位しないと皆のテンション上がらないと思うの。それにしてもこの重苦しい雰囲気……む？何だ？視線？バッ！と見たらルークの腰の籠からピョコと頭の……目の辺りまで出して私を凝視してるルチルと目が合いました。何かコエーよ！いや、むしろこの機会を利用しない手は無い！そう！雷系には刺激物！の法則です。クワイに乗って待機してるルークへとチョロギーを寄せる。

「どうかしたのか？」

「うん。ルチルにおやつあげても良い？」

一本ならおやつで良いと思うの。

「ん？ああ、構わないが……」

手の平の上に赤い新鮮な唐辛子を一本出す。

「ほーら、ルチル。元気の出るおやつだよ～。」

無言で受け取りシャリシャリとあっという間に食べたルチル。

「ピカピカピーーーーッ！」

ルチルが叫んだ（笑）

「なにピカ！ホントにげんきでたピカ！」

「良かった。」

そう笑って離れた。何故なら先頭がゆっくりだけど動き出したから。やっと出発です。