婚約破棄されまして(笑)

竹本 芳生

文字の大きさ
539 / 1,492
連載

新しい日々 46

しおりを挟む
「何でそんな事に……」

幾らなんでもそこまで酷くなるなんて思ってもみなかった。
え?ちょっと待って?そんな短期間に経済が悪化するなんて、幾らなんでもおかしすぎるでしょう?

「谷から王都へ向かう帝国の商隊が使う大街道の通ってる通行税が高くなって王都に行く帝国の商隊が無くなったのが始まりよ」

お母様の冷たい声が聞こえる。
帝国の商隊は通る各領地で売買をしてく。そのおかげで各領地が潤う。だからこそ通行税は上げないのが普通なのに、通行税を上げる?愚かだとしか言えない。

「何故、通行税を上げたのかしら?」

「第三王子妃のせいよ。あれで大街道が通ってる下位貴族家が自分の娘も王家に食い込めると勘違いしてお金をかき集めようと通行税を上げたのよ。大抵は寄子だから親の貴族家が慌てて通行税を下げさせようとしたけど、言う事を聞かなくて外された下位貴族もそれなりにいる。けれど王都に近い下位貴族は既に商隊が来なくなってにっちもさっちも行かなくなったのよ」

「え?でもうちの領地には多くの帝国商隊来てますよね?」

領都にだって多くの帝国商隊が来てるし、商売をしてる。

「ええ、うちから塩街道側の一部領地には商いをしてるわ。それでも王家直轄地までよ」

王家直轄地……あの小さな集落しかない領地か……商いに繋がらないなら選択しないか……
帝国商隊はいわば物流のメインみたいな立ち位置だった筈、荷馬車の数も多く商人も多かった。小さな商隊は魔物怖さに領地から出ないのが普通だった。
じゃあ物流の止まった王都は僅かな生命線だけで?バカな!

「ではどうやって生き延びるというの……」

「今、我が家の定期便は数を増やし物品も増やしました。可能な限り物資を王都に送り続けてます、もし王家からの要請があっても大丈夫なようにしてます。勿論、他の貴族家からの要請があれば対応出来るようにもしてます」

さすがお母様いえ、お父様かしら?便数も増やして量も増やしてるなんて!

「なら安心かしら……」

「そうね……」

お母様の歯切れは悪い。

「でも、多くの貴族は余程切羽詰まらないと助けを求めて来ないでしょうね」

お祖母さまが放った一言にハッとする。そうだ、貴族は弱味を見せない。もし貧しくても我慢出来るなら限界まで我慢する可能性の方が高い。

「ええ……今、何とかやり取りをしてるのはギョーム公爵家、キンダー侯爵家、ロズウェル伯爵家、ウナス伯爵家辺りね。ギョーム公爵家は王家の分も少し賄ってると思うわ、そうしなければ到底賄いきれないでしょうしね」

脳内に地図を広げて確認する。ギョーム公爵領から王都へはギョーム公の寄子貴族とロア公爵家の寄子貴族とロア公爵領しか無いから何とか物資を運ぶ事も出来る。
それでもシビアな状況だ。
王家だけじゃなく、王家が抱える騎士や兵士もいる。王都民まで回す余裕は無いんだろう……
しおりを挟む
感想 5,648

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?

水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」 「はぁ?」 静かな食堂の間。 主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。 同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。 いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。 「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」 「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」 父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。 「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」 アリスは家から一度出る決心をする。 それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。 アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。 彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。 「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」 アリスはため息をつく。 「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」 後悔したところでもう遅い。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです

との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。 白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・  沈黙を続けていたルカが、 「新しく商会を作って、その先は?」 ーーーーーー 題名 少し改変しました

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ

青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。 今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。 婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。 その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。 実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。 それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。 ※全3話。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。