婚約破棄されまして(笑)

竹本 芳生

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新天地を! 21

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盛りつけ台に大きなボウルが出される。そこへドンドコ鳥肉を入れて積み上げていく。そんなの事を何回も繰り返し、まるで何かの工場のように鳥肉だらけのボウルが幾つも出来た。

「後、手羽もあるけどどうしよう?」

「構いません。ここに出して下さい。食べやすい大きさにして外で焼くようにしますんで」

なる程……何もそのまま焼かなくてもここである程度削いでしまえば良いのよね。

「分かったわ」

ドスンドスンと手羽を一羽分出す。室内だと迫力増すわね……

「では切り分けてから焼きましょう。川魚はこちらに」

言われるままに別の盛りつけ台に川魚を出していく。ニジマスっぽいのから鮎っぽいの、鯉に似てるのから鱒っぽいのまで何か色々あった。

「これは随分とありますな。どれもこれも美味しい魚です、特にこれなんかは滅多に捕れないから旦那様も大喜びですね」

鱒っぽいのを指さしてニカッと笑う料理長。

「おっ!こいつら卵持ちか。産む前で良かったな」

鱒の卵?それはイクラじゃないですか!

「りょっ……料理長……その卵ってどうするの?」

「捨てちまうな」

即答!

「何て勿体ない事すんの!食べるから!ボウル持ってきて!」

率先して鱒っぽいのを捌いて筋子を出す。パンパンの筋子はちょっと重くて、期待しかない!
懐かしい作業に没頭する。料理長はじめ料理人達も集まってるので、適当な指示出しをしながら動く。勿論、料理人達も見てるだけじゃなくて盛りつけ台のあちこちで私を見ながら同じように捌いて筋子を取り出してる。

「先にショウユのタレを作って。ほんのちょっと甘さを感じる塩っぱさで!」

手の空いてる料理人達がタレを作り出す。

「お湯……ヌルいのが良いから……手を入れて熱いかな?位よ!別のボウルに作って!」

サッと手元に出され、そこに筋子を突っ込んでキュと指に力を入れて筋子をバラす作業に入る。
ポロポロとバラし、キレイに薄皮から取っていく。かき混ぜてフワリと浮いた薄皮を流す。
何度か水を足してかき混ぜてを繰り返し薄皮が残ってないか確認する。パラパラと指から零れるように動くイクラに少し楽しくなる。

「こんなもんかな?ザル頂戴」

ボウルの上にザルを置きイクラの水気を切る。

「タレの味見したい。後、タレは冷たくして」

小皿にタレが注がれ渡される。指先に付けて味見をして、丁度良い塩っぱさにニコリと笑う。タレの入った鍋はそれよりも大きな鍋に入れられた。鍋同士の隙間に氷が入れられタレの鍋が回される。

「お嬢!冷えやしたぜ!」

うん、ジムよ嬉しそうだね。
冷え冷えのタレの鍋にイクラを入れていく。これでイクラ丼食べれる!イエーイ!
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