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第三章 王族決闘編

107話 サラマンドラ

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『わぁー、ししょう、お鳥さんとお友達なの?』

『うん? 友達かぁ……厳密には、ちょっと違うかな。
 彼は、私の使い魔だよ』

『つかいま?』

『自身が召喚し、使役するもののことさ。
 基本的にはモンスターを使役する。こういう風にな。あ、人間を使い魔とした例も聞いたことがあるな』

『? モンスターと仲良くなれるってこと?』

『あはは、そうだな。そういう意味では、友達と言ってもいいかもしれない』

『ふぅん』

『基本的に、使役できる使い魔は一体だけ。一度主従関係を結んだら、どちらかが死ぬまで関係は切れないという、強固な絆が両者の間に結ばれる』

『でもししょう、いっぱいお鳥さんに囲まれてる』

『使い魔と言っても、やりようによっては複数のモンスターを使役しているように見せることも、できる。
 これは、親となる鳥と関係を結んで、その親と通じて子たちにも協力してもらってるんだ』

『なんかよくわかんない。
 でも、つかいま召喚っていうの、わたしにも教えて!』

『うーん、エランにはまだ早いかな。
 いつか、その時が来たら学ぶことになるよ』

『ぶー』


 ……私が小さい頃、師匠は使い魔を使役していろんなことをしていた。私は、師匠に使い魔召喚のやり方をせがんだものだが……
 結局、教えてもらえなかったな。

 だけど、今ならわかる。師匠は教えるではなく、学ぶことになる、と言っていた。それは、きっと内容
魔導学園ここで……
 ゴルドーラは、私たちはまだ習っていないと言った。いずれ、授業で使い魔召喚を習うのだろう。

 まったく、師匠め……それならそうと、言ってくれればいいものを。

「……? なにを笑っている。今の状況がわかっていないのか……それとも、ようやく事の重大さを理解して笑うしかなくなったか?」

 おっと、自分でも気づかないうちに笑っちゃってたのか。
 つい、懐かしくて。

 今私の目の前には……圧巻とも言える光景が、広がっている。
 十五体のゴーレムと、巨大なサラマンドラ。それも、サラマンドラは炎を吐く。かなり高火力の。
 気が触れて、笑うしかないと思われたのか。

「いや、ちょっと懐かしいこと思い出してまして」

「……よほど余裕なようだな。
 一つ訂正しておくぞ。貴様は先ほどこいつをとかげと言ったが、個体によってはそのような大きさのものもいる」

「へぇ、使い魔の個体で大きさも変わるんですか」

「小さき個体は、その名をサラマンダー……そして、俺の召喚した個体はその上位、サラマンドラだ」

 上位種……! 魔物、いや魔獣と似たようなものかな。
 だけど、魔獣なんかと比べ物にならない力を感じる。魔獣騒ぎの時に、あのサラマンドラが居れば、魔獣は瞬殺だったろう。

 私が凍らせて封じたのとは対照的に、きっと塵も残さず消し去ってしまっただろう。
 まあ森だからそんなことしたら二次被害ヤバいけど。

「余裕を見せているようだが、それも時期剥がれる。
 いけ、ドラ!」

「ゴギャァアアアアアアアア!!」

 大きな口が開き、咆哮が響く……胸の奥にまで響くような、感覚。この圧倒的な存在感……!
 魔獣を前にした時とは、また違った感情! これは……

「私、わくわくしてる……?」

 魔獣を前にしたあの時は、後ろに内容守るべき人ルリ―ちゃんがいた。だから、そんなもの感じる余裕もなかった。それどころじゃ、なかった。
 でも今は……一対一の決闘で。他に邪魔が入る心配もなくて。魔法や魔導具を駆使しても追い詰められなくて。むしろ私が追い詰められていて。私がまだ会得していない使い魔召喚なんてのを見せられて。

 ……あぁ、私今……

「楽しんでる……!」

「ゴォオオオオ!」

「!」

 地面に、影が差す。顔を上げると、私を踏み潰そうと、サラマンドラが巨大な足を振り上げていた。
 いつの間に……!? あの巨体だ、それなりにスピードは遅いんじゃないかと思っていたけど。

「思ったより速い……!」

 私は、足のみ魔力で身体強化して、その場から飛び退く。直後、私が立っていた地面が踏み潰される。
 結界の中だから、踏み潰されてもぺちゃんこにはならないだろうけど……

 容赦ないねぇ!

「てや!」

 飛び退くと同時、サラマンドラに向けて複数の氷の弾を放つ。それは、狙いが狂うことなくサラマンドラの皮膚へとぶつかるが……
 ……まったく、効いていない。皮膚に触れた瞬間、氷が蒸発した。

 さっき、サラマンドラの皮膚を炎の鎧って表現したけど……本当に、炎を纏っているかのよう。

「ドラにばかり気を取られていていいのか?」

 ドラ、というのはサラマンドラの名前だろう……とどうでもいいことを考えつつ、周囲を見る。
 ゴーレムが、私を囲むように立っている。魔力強化で飛び退いたってのに、それに追いついてきたのか。

 ゴーレムをも魔力強化しているのか、それとも素でゴーレムの身体機能が高いのか……
 いやそもそもゴーレムを強化できるのか?

「もちろん、ちゃんと注意してますよ!」

 だけど、ゴルドーラに言われるまでもない。周囲のゴーレムにはちゃんと気づいていた。
 私は、私を中心に魔法で突風を巻き上げる。それに巻き込まれ、周囲のゴーレムは風にさらわれていく。

 囲まれた場合、こうやって自分中心に風を発生させれば、囲んでいたやつらをいっぺんに剝がすことができる。
 ただ、私の狙いはそれだけじゃなくて……

「そ、ぉ、れぇ!」

 複数のゴーレムを風に巻き込み、一塊にする。いわば、ゴーレムで固めた巨大なボールだ。
 それを、サラマンドラへと思い切りぶん投げる。ゴーレムを処理しつつ、それを同時に攻撃にも利用する方法だ。

 いくらゴーレムでも、風で浮かせれば重みも感じないし、ぶん投げることも難しくない。
 このまま、サラマンドラにぶつかって倒すことができれば、楽なんだけど……

「ゴォオオオオ!」

 サラマンドラの口から、灼熱の炎が吐き出される。それは、自分にぶん投げられたゴーレムの塊を、無情にも焼き尽くしていく。
 いくらゴーレムが不死とはいえ、あれじゃあ……核ごと焼き尽くされて、終わりだろう。

 結果として、うっとうしかったゴーレムは処理できたけど……

「まさか、ゴーレムをあんな形で利用するとは……
 予想外のことばかりする、面白い女だな」

 ゴルドーラ自身とサラマンドラに関しては、ノーダメージか。
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