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XX ライリー-I

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 気温が落ち着き、薄着でも外出が出来る様になった7月。夏を感じる温かな風が首筋を撫でる中、のんびりと1人街を歩く。
 この街へ来て、早3ヵ月。街への買い出しにも慣れ、街の人達とも親しくなり、充実した毎日を送っていた。

 そんな私にとって、最早日課となっている事。それは、買い出しの帰りにライリーの店に寄る事だ。
 彼女は、私がセドリックと共に暮らしている事を知る数少ない人物。最初は同居を訝しんでいた物の、今ではすっかりと仲良くなり、色々な相談に乗り合う仲になった。
 今日も買った食材を手に抱えながら、ふらりと彼女の店に立ち寄る。

「こんにちは、ライリーさん」

 商品台の向こう側で退屈そうにしていた彼女――ライリーに声を掛けると、退屈そうな表情は花の咲いた様な笑顔に変わった。

「待ってたよ、エルちゃん。この時間は客が来なくて暇でね、いつも来てくれて本当に助かってるよ」

「あら、嬉しいわ。迷惑になっていないか心配だったの」

「またそんな事言って。迷惑じゃないっていつも言ってるだろう」

 彼女と軽い会話を交わし、商品台の上に置かれたお目当てであるロケットペンダントを手に取る。
 それは、初めてセドリックと共にこの街へ来た時に一目惚れをした物だ。もう3ヵ月も前の事になるが、未だにそのペンダントには心を奪われたまま。
 傷1つ無く、光が当たる度にきらきらと輝くそれは、何度見ても芸術品の様に美しい。

「綺麗ね…」

 思わず漏らした言葉に、ライリーが屈託無く笑った。

「やっぱり、他のアクセサリーには興味ないかい?」

「興味が無い訳では無いの。どれもとっても素敵よ。でも、どうしてもこれが綺麗で…」

 私の言葉に、再び彼女が笑う。
 
 彼女が言うには、相変わらずこのペンダントは「可愛くない」という理由で他の客からは好まれないらしい。中には、他の可愛らしいアクセサリーと並ぶに相応しくないとまで言う客も居るのだとか。
 本来なら、人気の無いアクセサリーは撤去を考えるそうだ。だが、私が特別気に入っているという理由で撤去せず、ずっと此処に並べておいてくれているらしい。

 そんな彼女の心遣いに応じて、私もこのペンダントを購入したいとは思っている。気に入った物は、出来る事ならいつでも手に取る事が出来て、更には身に着けていたいとも思うものだろう。
 だが如何せん、私には自由になるお金が無い。
 セドリックには、あまり高価な物でなければ気に入った物は買っていいと言われている。しかし、自分の私欲にお金を使う勇気など少しも無かった。
 その為、ライリーには申し訳無いが、毎日こうしてお店に寄ってはペンダントを眺めさせてもらっている。


「――そういえば、エルちゃんには話してなかったね。そのロケットの話」

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