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第二部4章 表裏一体 抱く光は闇 抱く闇は光の章
8.女神の腕(かいな)①
しおりを挟む「リヴァイア・ランス!」
【ダークネス・ロンド!】
バルドが氷を纏った水槍を、ギルが衝撃波を放つ漆黒の刃を、俺たちに迫り来る火球に放つ。
「「ブレイク!!」」
二人の声がハモり、火球が空で爆発した。
「ッッッ!!!」
結界があるとはいえ、怖いモンは怖い!バルドとギルが俺に駆け寄り、前面両サイドで守るように立ち塞がる。
二人が睨み付ける先には、ラゼルを包み込んだ火柱。
「くっ!クックッ!アッハッハははははは!!なるほど…少しはやりおるな?が……!!」
ラゼルの笑い声が聞こえ、逆巻いていた火柱が、ラゼルの腕の一振り一瞬で霧散する。
「まるで、児戯よ。我には効かぬな」
優雅とさえいえる微笑を浮かべ、佇むラゼル。傷はおろか、衣服に焦げさえない。
「おい…!冗談にしても笑えねぇぞ…」
「チッ!!やはり、効かぬか…!」
嘘だろ?何か、本格的にマズいかも…相手は神とはいっても、こっちは二人(俺もいるけど…ほとんど役に立たない…)も居るのに!?
これ、かなり無理ゲー?(汗)
「貴様の魔導で無理なら、俺の全破棄が通じるとは思えんが……やってみるか?」
「やめよ…無駄な魔導を使うでない。ラゼルを倒す倒さぬは二の次。問題は、台座を如何にして破壊するかだ」
ラゼルの動きを封じないことには、台座に近づくことさえできない。
「如何した?諦めるなどと、つまらぬことを申すでないぞ?見苦しく足掻く様が楽しく美しいのだ。我を失望させるな」
クックッと笑うラゼルに、俺たちは身構える。
こいつ…!完全に遊んでる!!((((;゚Д゚)))))))
「人がどうこうできる域を超えてるって…!」
「台座を破壊以前の問題だな…俺たちとて、女神の魔導と呼ばれる者だ。敵わなくとも、突破口くらいはあると思ったが……ここまで、力の差があるなんざ、思いもしなかった」
ギリギリと歯を噛みしめるバルドに、ギルもまた渋い顔で押し黙る。
二人がどうにかできないようなもの、俺が加わったところで、焼け石に水。第一、俺には攻撃系の魔導は一個しかなく、その魔導も神化し何とか使える代物。今の不安定な状態では使えない。
「如何した?来ぬのか?なれば、我から参ろうか?」
ニヤリと笑い、ラゼルが両手を広げ、手のひらを上に向ける。パリパリと電光のようなものが立ち上がる。赤黒いそれを握り込み、ラゼルが再び広げた両手の平を合わせる。
【ブラッディ・メイス】
部屋の四方八方に黒い電柱が立ち上がり、バリバリッとけたたましい音を立てた。
背中に走る、言い知れない怖気に、俺の体が竦み上がる。
「グレインバルド!アヤを守れ!これは……!!」
「ッッッ!?」
「チぃッッッ!!!」
ギルが叫び、短く詠唱し前方に結界を張るのと、バルドが同じく結界を張り、俺に覆い被さるのが同時。物凄い衝撃と、一瞬の重力。鼓膜が破れるのではと心配になるほどの轟音。目も開けられないくらいの光の後、閉じた瞼が一気に闇に堕ちた。
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ほんの数分、気を失っていたらしい。
震える瞼を押し開き、ゆっくり目を開けた。
「……ぅ……ッ!くっ!!」
ズキンと走った体の痛みに呻く。体が重い。何か、上に乗ってるような……?
ハッと目を開け、体を起こすと、俺の上に乗っていたもの。バルドの体がグラリと傾ぐ。
慌てて抱き留めた。
「バルドッ?!バルド!バルドッッッ!!」
俺を庇い、結界を突き破ったラゼルの魔導を受けたらしい。あちこち怪我を負い、血が流れていた。
「うっ…!ぐ…ぁ!は、ぁ……ア、ヤ?」
「バルド…大丈夫か?!」
「……つッ!あ、あぁ…かなり、いってぇけどな…なん、とかだ」
必死に呼びかけると、顔を盛大にしかめつつ、バルドが目を開けた。こめかみから顎まで血が流れ落ちている。
「ギル…!ギルは?!」
無事を確認し、思い出して見渡すと、俺とバルドの正面にギルが跪いていた。
「ギルッ!!?」
「……っ、!ぐぅ……、大、事ない!」
「何、言って…!だって!!」
ギルは……バルドより、ひどい。ラゼルの魔導を直に受け、正に、満身創痍。
あり得ない。女神の魔導の結界だ。それを、まるで、ビニールの膜を破るかの如く、安々と……
「加減はしておいた。早々に壊れては興醒め。我は長く戯れたいでな」
腕を組み、場違いなほどに柔らかく微笑むラゼルに、俺は怒りと恐怖に体を震わせる。
駄目だ…
力が、違いすぎる。
のろのろと俺を庇った二人に目をやる。
悔しい。力がない。俺だって……目の前の大切な人たちを守りたいのに。守られてばかりの、力がない自分が情けなくて、悔しくて……
涙が溢れ、唇を噛み締め固く目を閉じ、俯いた俺の耳に、不意にそれは聞こえた。
『仕方ないわね…手のかかる子達だこと』
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