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第三部1章 嫁取り騒動再発 逃避の蜜月編
1.卵持参で逃避行?宰相様、いい加減にして下さい(怒)③
しおりを挟む「…ヤ?ア~ヤ~?」
「ふへ?」
ショボショボする目で、どうやらうつらうつらしていたようだ。
呼びかけられ、我ながらマヌケな声が出た。
「大丈夫かな?グレイが、また無理をさせたようだね?」
ニッコリ柔らかく微笑むアレイスター様の顔が目に映る。
あれ……?何で、ここにいるんだっけ?
えっ、と……………………………………………………
………………………………………………………………
………………………………………………………………
………………………………思い出した!
サーーっと青褪めた。
何だよ!?さっきのマヌケな返事!
「ご、ごめんなさ…じゃなくて!申し訳ありません!国王陛下!!」
「構わないよ。それより、国王陛下って呼び名、やだなぁ。アヤには可愛く「義兄上♡」って呼んでほしいな」
ニコニコと言われるけど、呼べるわけないし!確かに、バルドのお兄さんだけど、一国の王陛下に向かって、気安すぎるだろ?!
うぅっ…大失態だ!
それもこれも…………
ちらっと横を見ると、俺の疲れの元凶が、しれっとカップのお茶を優雅に飲んでいる。
多少気怠そうだけど、色気ダダ漏れで、妙にスッキリしてるのが何かムカつく!
こっちは絶倫皇子様の威力フル発揮されて疲労困憊、ヘロヘロなんですけど?!
結局、あれから部屋から一歩も出る事はなかった。と、いうか、出してもらえなかったが正しい。
「いけない事」って言葉の意味を散々啼かされて白状させられ、いたくお気に召した皇子様に延々抱かれて、いつもの如く、意識がブラックアウトして終わって、今日は翌日だ。
あまり深く考えず言った言葉だけど…ほんとに「いけない事」になってしまった。
乱れに乱れ、啼きまくり、思い出すだけで憤死しそうだ。
宰相大臣と争っていたってのに、何やってんだか……
「兄上」
「おや?珍しい。今日は”陛下”じゃないんだね?」
バルドの呼びかけに、アレイスター様が揶揄する。どこか嬉しそうなそれに、バルドが軽く顔をしかめつつ口を開く。
「今日は頼みがあります」
「ふむ?今日はほんとに珍しいね?グレイから、私に頼み事…あまり、ある事じゃない」
訝しそうにしつつも、やはり嬉しそうに微笑む。
「何かな?私にできる事かい?」
「しばらく、クレイドルを離れる。都合して下さい」
「バルド?!」
「それは………」
いきなりの発言に、慌てる俺。アレイスター様が少しだけ黙り込む。
「う~ん……急だねぇ?すぐに?」
「なるべくなら」
「行く当ては?」
「ナ・コルテスのお祖父様の所へ行こうかと」
「原因は、レズモント宰相と大臣たち、かな?」
アレイスター様の問いに、バルドは答えない。
「もう少し待てない?」
「何か都合が?」
「う~ん……まぁ、そうだね」
困ったように微笑むアレイスター様に、俺もバルドも?顔だ。
ふんわりしていながら、アレイスター様はかなり即決の方。こんなに歯切れが悪いのは珍しいかも。
「実は……”実”が孵りそうなんだよ」
「?????」
み?みって……??
「兄上……やはり使ったのですか?」
「勿論。だって、せっかくお願いして取ってきてもらったからね」
だから何を??
ふふっと、悪戯っぽく笑うアレイスター様に、バルドが嘆息する。
「それなら、尚更こちらのお願いを聞いてください。困った時に何があっても協力してもらう。それを条件に、あれは取ってきたんですから」
だから何をだよ??
イライラしてる俺を無視して、二人だけで話すんな!
「しょうがないね~……分かった。ナ・コルテスには私から報せをやろう。グレイが受けてる書類は、私の執務室へ移しておくれ」
「ありがとうございます。では、よろしくお願いします。アヤ、行くぞ?」
手を取られ立ち上がらせられた。困惑する俺に構わず、そのまま辞する挨拶をし部屋を出て行く。
ヒラヒラと手を振るアレイスター様に、軽く会釈し、俺も後に続いた。
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