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370 そこはかとなく、書き作れば
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ヒリヒリとしたトライアンドエラーの空気に眩暈がしそうだ。ガルドは榎本との妥協なきツイン・プレイに明け暮れながら思う。ゲームとは本来こうあるべきだ。スリルとストレスと悔しさがなければ。達成できない目標にイライラしながらプレイしなければ。ここ最近の氷結晶城に漂う日常=ゲーム世界という間伸びした空気にNOを突きつける意味でも、ガルドは榎本と共に高みを目指した。
「で、別にRTAでも時間測ってた訳でもないのに練習しまくってたの? 登山道連続クエストばっかり?」
「せっかくの連休なのに何やってんだ」
「つか大将、相変わらずゴリゴリやってるんだな。そんなに頑張らなくともアンタらに勝てるプレイヤーなんてもういないだろ」
「海外勢はペットもいなけりゃ空も飛べないんだから」
酒場は笑い声で包まれた。様相はファンタジーだが、日本の大衆居酒屋でよく聞く大声の笑みにガルドもつられて笑みを浮かべる。手に包んでいる小さなショットグラスを飲み干し、注文も面倒だったためA独自の権限を貰って使えるようになった管理者操作で新たな酒を表示した。
テキーラの楽しみ方は隣の席に座っている酒豪プレイヤー・吟醸に教わった。
親指と人差し指の間をライムで濡らして塩をのせ、舐めてから、テキーラをショットで一気に飲み干す。
テキーラが口のなかに残っているうちにライムをかじり、最後にまた塩を舐める。繰り返す。
「いい飲みっぷりだよね~」
「ん」
おつまみとしてアイテム欄から呼び出したナチョスのチーズを引き伸ばしながら口に放り込む。サルサソースが特にテキーラとよく合う。酸味が欲しくなる味だ。ライムでは少々物足りない。そう思いつつナチョスにトッピングされているハラペーニョを二つ三つと摘んでからショットグラスへ手を伸ばした。
ふと隣を見ると、吟醸が手にしている果物の色の違いに気づく。
「……レモン?」
「合うんだよねぇ、これがさー」
吟醸はガルドと同じくテキーラを飲みながら、酸味の強そうなレモンのくし切りをジュっと口で絞って眉間に皺を寄せた。
「くぅー!」
「……ふむ」
ガルドも早速レモンを呼び出す。吟醸はやはり、いつも美味しそうに酒を飲む。先輩の姿勢やテクニックを見習いながら、ガルドは絞るようにレモンを唇で噛み締めた。
「で、別にRTAでも時間測ってた訳でもないのに練習しまくってたの? 登山道連続クエストばっかり?」
「せっかくの連休なのに何やってんだ」
「つか大将、相変わらずゴリゴリやってるんだな。そんなに頑張らなくともアンタらに勝てるプレイヤーなんてもういないだろ」
「海外勢はペットもいなけりゃ空も飛べないんだから」
酒場は笑い声で包まれた。様相はファンタジーだが、日本の大衆居酒屋でよく聞く大声の笑みにガルドもつられて笑みを浮かべる。手に包んでいる小さなショットグラスを飲み干し、注文も面倒だったためA独自の権限を貰って使えるようになった管理者操作で新たな酒を表示した。
テキーラの楽しみ方は隣の席に座っている酒豪プレイヤー・吟醸に教わった。
親指と人差し指の間をライムで濡らして塩をのせ、舐めてから、テキーラをショットで一気に飲み干す。
テキーラが口のなかに残っているうちにライムをかじり、最後にまた塩を舐める。繰り返す。
「いい飲みっぷりだよね~」
「ん」
おつまみとしてアイテム欄から呼び出したナチョスのチーズを引き伸ばしながら口に放り込む。サルサソースが特にテキーラとよく合う。酸味が欲しくなる味だ。ライムでは少々物足りない。そう思いつつナチョスにトッピングされているハラペーニョを二つ三つと摘んでからショットグラスへ手を伸ばした。
ふと隣を見ると、吟醸が手にしている果物の色の違いに気づく。
「……レモン?」
「合うんだよねぇ、これがさー」
吟醸はガルドと同じくテキーラを飲みながら、酸味の強そうなレモンのくし切りをジュっと口で絞って眉間に皺を寄せた。
「くぅー!」
「……ふむ」
ガルドも早速レモンを呼び出す。吟醸はやはり、いつも美味しそうに酒を飲む。先輩の姿勢やテクニックを見習いながら、ガルドは絞るようにレモンを唇で噛み締めた。
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