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  森を進んで行くと、順当に食べれる魔物が現れ、手際良く、ノルゼスが一太刀で仕留めた。

  聖女と共に魔王を倒したパーティの1人であるノルゼスに、ただの魔物が勝てるはずも無く、あっという間に終わる。


「うわぁ……す、凄いんだね、冒険者って」
  圧倒的な力量を見せられ、感激するサクヤ。


  ただの冒険者では無いですからね。強いのは当然です。

  お願いですから、次、村に来た無関係の冒険者を、同じ土台に並べないであげて下さいね。と、心の中で思った。


「何、対した事は無いさ」

  魔王を対したパーティの騎士が対した事無ければ、他の冒険者はどうなってしまうのでしょうか???



「いやーほんま凄いなぁ、リーシャはんの元・お仲間はん」
「……そうですね」

  手際良く魔物の解体作業に入るノルゼスを横目に、リーシャは頷いた。

「今日は解体作業手伝いたいって言わへんねんな」

  普段のリーシャなら、率先して手伝いを申し出る。
  何故か全身が血塗れになるのを危惧して、手伝いを断っていたが、肉屋マルシェでの修行の甲斐あって、全身血塗れになる事は無くなった為、少し前から、許可が出た。
  嬉しそうに、手際はまだまだ悪いが、一生懸命、作業する。



「……させてくれると思いますか?」

  ノルゼスに教わる形で、サクヤがお手伝いしている様子を見ながら、リーシャは尋ねた。

「まー無理やろな」
  まだ出会って少ししか経っていないが、その間にも伺えた超絶過保護な様子からは、全力で拒否されるのが目に見えている。


  リーシャは大人しくその場に座り込み、イマルもまた、隣に腰掛けた。

「イマルは行かないんですか?」
「してくれるゆーなら、俺は甘えるわ」
「そうですか…」
「元気無いなー」
「…そう、ですか?」
「そらな。いつもより全然、口数少ないし」


  そう言えば、聖女の時は、あまり口を開かなかった気がする。
  必要な事だけしか話さなかったから、ノルゼスとも殆ど会話した事は無かったし……

  ノルゼスと会ったから、聖女の時の感覚が戻ってしまったのかもしれない。


「元気に見えないのは、駄目ですね」
  そう見えてしまっては、国民が不安になる。
  聖女は、国民の希望だから、常に気高く、強くいなくてはならないーーー。



「何で?えーやん。元気無い。で」
「えーー」

「誰かでいつも元気な訳ないやろ。俺かて元気無い時もあれば、機嫌悪い時もあるで」
「元気が……無くても……良い……」


  当然の事のように言うイマルの言葉は、リーシャには衝撃的なもので、目をパチパチさせながら、言葉を噛み締めた。


「元気無いんやろ?」
「……はい。元気……無いのかも、しれません」

  少し考え込みながらも、今度は、リーシャは頷いた。

  ノルゼスが村に来てから、何となく落ち着かなくなって、一緒に狩りに行く事になって、急に、聖女に戻された感覚になって、胸の奥に、重みが落ちたような、暗い気持ちに、なった。


「そか。ほな、終わったら気分転換に、サクヤはんも誘って一緒に美味しいもんでも食べに行きましょか」

「……美味しい、もの」
  一緒に、食べに、行く?


「落ち込んだ時は、美味しいもん食べたり、友達と話したり、酒飲んだり、楽しい事せなな」

「ーーそれはーーとても、嬉しい申し出ですね!」

  イマルの誘いを受け、リーシャは村を出てから初めて、微笑んだ。






  ギューーーーっと、森から戻った後、サクヤはリーシャの腕に抱きつき、離れないまま、歩いた。

「サクヤ?どうされたのですか?」
「お姉ちゃん、落ち込んでたでしょ?ノルゼスって人が来てから、お姉ちゃんちょっと調子おかしいし……」


  イマルだけで無く、サクヤにも気付かれてしまっていたようで、心配をかけてしまっていたのだと認識する。

「ごめんなさい。心配をおかけして……」
「違うよ!謝って欲しいんじゃなくて!元気出して欲しくて!僕、何か出来る事あったら、するから!あのノルゼスって人からお姉ちゃんを守るから!」


  完全に敵認定されたらしく、サクヤは周りを見渡しながら、ノルゼスの姿が見えないかを確認した。
  森から戻った後(結局念入りのエスコートを受けた)、丁度、村長から呼び出しがかかったノルゼスは、3人から離れ、寝床を提供してくれている村長の家に戻った。


「大丈夫ですよ。私に害を与える事はしないと思いますし」
「そらせんやろな。過保護なくらい守っとったからな」

  目の前に8歳の男の子がいれば、リーシャよりサクヤを優先しそうなものだが、サクヤには目もくれず、最後までリーシャ優先。



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