王妃の鑑

ごろごろみかん。

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美青年(2)

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「それで?お名前は、お嬢さん」

「…………ネアモネ。ネアモネ・ハッセーヌ」

「わあ、高貴な人だと思っていたけど、マジモンのお偉いさん………お偉いちゃんかぁ。下手したら俺、首跳ねられちゃうね」

茶化すように笑って、ノアが言う。

「改めまして俺はノア。よろしくね、ネアモネちゃん」

………私が公爵令嬢だと知っているのに、ノアはあっけからんと笑う。なんだか、掴みどころがなくて不思議な人だわ………。




次の週。
私はリリアベルと数人のお供をつけて都をたった。ノアとはヨエンの谷で落ち合う予定だ。ヨエンの谷では単独行動も許されている。ただし、リリアベルと共に、であれば。
今回、殿下から許可は降りたが、両親はかなり渋っていた。

馬車に揺られながら、お母様たちの言葉を思い出す。

ーーーはしたない。旅行に行きたいだなんて、みっともない真似しないでちょうだい

そう呟きながら軽蔑するようにこちらを見るお母様。

ーーーどうしてこうも出来が悪いんだ。一人で旅行………しかもヨエンの谷に行くなど、正気じゃない。

そして心底呆れたように言うお父様。

ーーーいい?ネアモネ。あなたは出来損ないの娘なのですよ。ただでさえ出来が悪いのだから、勝手な行動は慎みなさい。

空虚な言葉に、意味の無い言葉たち。
そばにいたリリアベルが、なにか言いたそうにしていたのを覚えている。
以前はこの言葉たちを聞く度に変わろう、変わらなければ。親の期待に応えなければという気持ちでいっぱいだった。だけど、今は空っぽ。無機質で色のない言葉がクルクルと踊るだけ。私は表面上かしこまって、彼らに告げた。

「勝手なことをして、申し訳ございません………」

と。私が未来を変えたいと。そう願うのであれば、彼らとの関係にも決着を付けなくてはならない。それは、きっと殿下との関係性を考えるよりも難しいだろう。私が窓の外を見ながらぼつりとこぼすと、同じように外を見ていたリリアベルがこちらを見た。
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