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翌朝、稽古の後、王城へ飛ぶ、事件の進展を聞く為だが、騎士隊が再編されて居ない状態なので、場内は騒然としている。宰相に会いたかったのだが、都合が付かずに会えなかった。
仕方が無いので今度は冒険者ギルドへ行って見る。ここの所毎日行っているのだが、ほんの僅かでも良いから情報が欲しいと言うのが現状だ。
ギルマスにアポイントを取って暫く待つ。
30分程で2階に呼ばれた。
「どうです、事件の進展は?」
「無いに等しいな。」
「やはりそうですか。情報が無さすぎてこっちも動きが取れません。あまりにも不自然ですよね。」
「確かに、目撃者はおろか噂も出て来ないとは徹底している。」
「犯人は本当に人間なんですかね?自然現象って事は無いでしょうが。」
「流石に自然現象ってのはありえないが、人間が犯人と言うのもどうなんだろうな。これ程の事件を起こす程の人材がこの国に居るとは思えんのだがな。」
なんで、そこで僕をチラッと見たんだ?
「人では無理ですか?では魔人とか?」
「魔人は人間より知能が劣ると言うのが通説だ。今回の事件はもっと頭の良い奴がバックに居ると考えた方が良さそうだな。」
「それは僕も感じました。ただ、頭の良い人間は得てして行動力が伴わないんですけどね。」
「ん?ちょっとまってくれ。今のお前さんの言葉で思い出したんだが、俺がまだ駆け出しの頃だから15年位前の話になるが、テイマーって解るか?」
「テイマーですか?魔物使いの事ですよね?今はあまり居ないとか。」
「ああ、テイマーってのはある程度強い魔物を複数テイムしないと戦闘で勝てない。だから上級職と言われている。」
「そのテイマーがどうしたんですか?」
「テイマーってのは通常知能がある程度高い魔物を使役する。だがな、あまり知能が高い魔物は使役出来ない。例えばドラゴンとかな。」
正確には知能が低い魔物をテイムできない訳では無い。知能が低い魔物はテイムしても言う事を聞いてくれないと言う訳だ。
「で、今回の件とテイマーが何か関係があると?」
「昔の話だがな。居たんだよ。アンデットを使役するテイマーってのが、通常アンデットは知能が低い。ゾンビやスケルトンをテイムする者は居ない。だが、上級のレイスやリッチなら使役できると豪語していた。」
「ほう?リッチですか?それが出来るならゾンビパウダーの大量入手も可能になりますね。」
「だろう?だが、そいつがそれからどうなったかが判らんし、今回の件は別人の仕業かもしれん。」
「いや、でも、捜査のとっかかりにはなりますよ。もし本当にアンデットを使役できるテイマーが居るのであれば、重要参考人になります。」
僕はギルマスに礼を言って勢いよくギルドを飛び出した。
リッチをテイムするテイマー。ゾンビパウダーの増産は可能だろうが、今回の事件の黒幕とは思えない。だが、黒幕に辿り着く手掛かりにはなりそうだ。
アンデットをテイムするテイマーなら冒険者達の間で噂になっているはずだ、だが、王都のギルドでは聞いた事が無い。これは、アンデットが住むダンジョンのある町のギルドで聞き込みをするしかない。
この王国でアンデットが出るダンジョンは南東にあるダンジョン一つだけだ。僕が知っている南東の町と言えばブレイルだけだ。まずはブレイルに飛ぶ。
ブレイルのギルドでアンデットの出るダンジョンの情報を聞く。村人が消えた村はブレイルから南西に1日の距離にある。その更に西にダンジョンのある町、バーナムがある。王都から見れば南東だが、ほぼ王国の中央の南寄りにある町だ。
ブレイルからバーナムまでは馬車で5日と言った所だろう。バーナムに着くと冒険者ギルドを探した。
ギルドはすぐに見つかり、近くに居た冒険者に情報を聞いてみる。すると意外と簡単に情報が手に入った。なんでもアンデットを使役出来るテイマーは実在するそうだ、ただ、ここ1か月程姿が見えないらしい。
あれ?やはり何かが起こっている?黒幕に連れ去られたか?
またしても、情報が途絶えた?いや、まだ、ここのダンジョンがある。ここのダンジョンには唯一アンデットが出る。何か事件に関係あるかもしれない。
僕はダンジョンに潜る事にした。事前に情報を入手するのは忘れて居ない。ここのダンジョンは現在34層まで突破されている。それより下は未知の世界だ。ちなみにアンデットが出るのは5階層からで、まとまって出る事は少ないらしい。リッチが出るのは20階層前後だそうだ。
ダンジョンの魔物は地上の魔物とは色々と違いがあるらしい。僕は準備をキッチリとしてから潜る事にする。今日は準備で潜るのは明日になるかもしれない。
さて翌日、僕的には翌々日なのだが、ダンジョンに潜る事にした。ダンジョンの入り口で一人か?と聞かれたので頷くと、ソロは危険だぞと言われたのでギルドカードを出して黙らせた。
このダンジョンはいわゆる、普通のダンジョンだ。迷路タイプとも言われる、日本人がダンジョンと言われて真っ先に思い出すあのダンジョンだ。
まず、1階層では魔物に出会う事は無い。これは絶対数が少ない事と先行したパーティーが倒してしまうからだ。このダンジョンでは魔物の復活に半日かかるらしい。
ダンジョンに潜っている冒険者の絶対数が多いのか、上層では殆ど魔物に出会わなかった。まあ、目的はリッチなので他の魔物はどうでも良いのだが。ちなみに、上層には罠も無く道も解り易く迷う程分かれ道も無かった。
5階層からアンデットが出ると聞いていたが、実際に遭遇したのは6階層だった。最初はスケルトンだ。基本死なないが、バラバラになると戻るのに時間が掛かるので簡単に逃げられる。
そして、8階層でようやくゾンビに出会った。こいつも不死身だが、頭部を破壊すると動かなくなる。見た目は映画などで見るゾンビその物だが、匂いがとにかく臭い。風魔法を使って換気する。
とりあえず強い魔物が出て来ないのでどんどんと奥へと進んで行く。気が付けば20階層までもう少しだ。
とそんなタイミングでレイスが出た。アンデットって意外と数が少ないのかな?
レイスと言うのは簡単に言えば幽霊だ。知能はあるが攻撃力は無い。ただ、倒す方法も少ない。レイスは人に乗り移ってパーティーメンバーを同士討ちさせる。僕みたいなソロはどうするんだろう?倒すには光属性の浄化魔法で成仏させるしかない。
まあ、今日の目的はレイス退治ではないので、体に光属性の魔法を纏ってスルーする。レイスは近づいて来なかった。
20階層を超えたが肝心のリッチが見つからない。しょうがないのでどんどん下層へ降りて行く。
あれ?気が付くと34階層を超えて居るぞ?リッチは何処へ行った?
ここまでサーチを掛けながら降りて来た。リッチの反応は無い、何処へ消えたんだ?これってゾンビパウダー事件と関係があるのかな?
さて、どうする?ここまで来たんだから、もう少し降りてみるか?
サーチを掛けながらもう少し降りてみる事にする。40階層まで降りて何も無ければ帰ろう。
ここから先は冒険者が入っていない。大量の強い魔物が出る可能性もある。慎重に行こう。そう決心したのだが、大した敵は出て来なかった。
しかも40階層を目指していたのに、サーチでは38階層が最下層らしい。とことん期待を裏切ってくれるダンジョンだ。
だが、38階層に足を踏み入れた途端、雰囲気が変わった。空気が変わったとも言う。なんと言うか、アンデットの気配だ。どうやらこのダンジョンのマスターはアンデットらしい。
あれ?アンデットの王ってリッチだよな?ノーライフキングだっけ、あれも確かリッチの別名だった気がする。
最後の最後でリッチに会えるのか?
「ここまで来るとは何者だ?」
「んー、そっちが名乗ったらこっちも名乗るぞ。」
仕方が無いので今度は冒険者ギルドへ行って見る。ここの所毎日行っているのだが、ほんの僅かでも良いから情報が欲しいと言うのが現状だ。
ギルマスにアポイントを取って暫く待つ。
30分程で2階に呼ばれた。
「どうです、事件の進展は?」
「無いに等しいな。」
「やはりそうですか。情報が無さすぎてこっちも動きが取れません。あまりにも不自然ですよね。」
「確かに、目撃者はおろか噂も出て来ないとは徹底している。」
「犯人は本当に人間なんですかね?自然現象って事は無いでしょうが。」
「流石に自然現象ってのはありえないが、人間が犯人と言うのもどうなんだろうな。これ程の事件を起こす程の人材がこの国に居るとは思えんのだがな。」
なんで、そこで僕をチラッと見たんだ?
「人では無理ですか?では魔人とか?」
「魔人は人間より知能が劣ると言うのが通説だ。今回の事件はもっと頭の良い奴がバックに居ると考えた方が良さそうだな。」
「それは僕も感じました。ただ、頭の良い人間は得てして行動力が伴わないんですけどね。」
「ん?ちょっとまってくれ。今のお前さんの言葉で思い出したんだが、俺がまだ駆け出しの頃だから15年位前の話になるが、テイマーって解るか?」
「テイマーですか?魔物使いの事ですよね?今はあまり居ないとか。」
「ああ、テイマーってのはある程度強い魔物を複数テイムしないと戦闘で勝てない。だから上級職と言われている。」
「そのテイマーがどうしたんですか?」
「テイマーってのは通常知能がある程度高い魔物を使役する。だがな、あまり知能が高い魔物は使役出来ない。例えばドラゴンとかな。」
正確には知能が低い魔物をテイムできない訳では無い。知能が低い魔物はテイムしても言う事を聞いてくれないと言う訳だ。
「で、今回の件とテイマーが何か関係があると?」
「昔の話だがな。居たんだよ。アンデットを使役するテイマーってのが、通常アンデットは知能が低い。ゾンビやスケルトンをテイムする者は居ない。だが、上級のレイスやリッチなら使役できると豪語していた。」
「ほう?リッチですか?それが出来るならゾンビパウダーの大量入手も可能になりますね。」
「だろう?だが、そいつがそれからどうなったかが判らんし、今回の件は別人の仕業かもしれん。」
「いや、でも、捜査のとっかかりにはなりますよ。もし本当にアンデットを使役できるテイマーが居るのであれば、重要参考人になります。」
僕はギルマスに礼を言って勢いよくギルドを飛び出した。
リッチをテイムするテイマー。ゾンビパウダーの増産は可能だろうが、今回の事件の黒幕とは思えない。だが、黒幕に辿り着く手掛かりにはなりそうだ。
アンデットをテイムするテイマーなら冒険者達の間で噂になっているはずだ、だが、王都のギルドでは聞いた事が無い。これは、アンデットが住むダンジョンのある町のギルドで聞き込みをするしかない。
この王国でアンデットが出るダンジョンは南東にあるダンジョン一つだけだ。僕が知っている南東の町と言えばブレイルだけだ。まずはブレイルに飛ぶ。
ブレイルのギルドでアンデットの出るダンジョンの情報を聞く。村人が消えた村はブレイルから南西に1日の距離にある。その更に西にダンジョンのある町、バーナムがある。王都から見れば南東だが、ほぼ王国の中央の南寄りにある町だ。
ブレイルからバーナムまでは馬車で5日と言った所だろう。バーナムに着くと冒険者ギルドを探した。
ギルドはすぐに見つかり、近くに居た冒険者に情報を聞いてみる。すると意外と簡単に情報が手に入った。なんでもアンデットを使役出来るテイマーは実在するそうだ、ただ、ここ1か月程姿が見えないらしい。
あれ?やはり何かが起こっている?黒幕に連れ去られたか?
またしても、情報が途絶えた?いや、まだ、ここのダンジョンがある。ここのダンジョンには唯一アンデットが出る。何か事件に関係あるかもしれない。
僕はダンジョンに潜る事にした。事前に情報を入手するのは忘れて居ない。ここのダンジョンは現在34層まで突破されている。それより下は未知の世界だ。ちなみにアンデットが出るのは5階層からで、まとまって出る事は少ないらしい。リッチが出るのは20階層前後だそうだ。
ダンジョンの魔物は地上の魔物とは色々と違いがあるらしい。僕は準備をキッチリとしてから潜る事にする。今日は準備で潜るのは明日になるかもしれない。
さて翌日、僕的には翌々日なのだが、ダンジョンに潜る事にした。ダンジョンの入り口で一人か?と聞かれたので頷くと、ソロは危険だぞと言われたのでギルドカードを出して黙らせた。
このダンジョンはいわゆる、普通のダンジョンだ。迷路タイプとも言われる、日本人がダンジョンと言われて真っ先に思い出すあのダンジョンだ。
まず、1階層では魔物に出会う事は無い。これは絶対数が少ない事と先行したパーティーが倒してしまうからだ。このダンジョンでは魔物の復活に半日かかるらしい。
ダンジョンに潜っている冒険者の絶対数が多いのか、上層では殆ど魔物に出会わなかった。まあ、目的はリッチなので他の魔物はどうでも良いのだが。ちなみに、上層には罠も無く道も解り易く迷う程分かれ道も無かった。
5階層からアンデットが出ると聞いていたが、実際に遭遇したのは6階層だった。最初はスケルトンだ。基本死なないが、バラバラになると戻るのに時間が掛かるので簡単に逃げられる。
そして、8階層でようやくゾンビに出会った。こいつも不死身だが、頭部を破壊すると動かなくなる。見た目は映画などで見るゾンビその物だが、匂いがとにかく臭い。風魔法を使って換気する。
とりあえず強い魔物が出て来ないのでどんどんと奥へと進んで行く。気が付けば20階層までもう少しだ。
とそんなタイミングでレイスが出た。アンデットって意外と数が少ないのかな?
レイスと言うのは簡単に言えば幽霊だ。知能はあるが攻撃力は無い。ただ、倒す方法も少ない。レイスは人に乗り移ってパーティーメンバーを同士討ちさせる。僕みたいなソロはどうするんだろう?倒すには光属性の浄化魔法で成仏させるしかない。
まあ、今日の目的はレイス退治ではないので、体に光属性の魔法を纏ってスルーする。レイスは近づいて来なかった。
20階層を超えたが肝心のリッチが見つからない。しょうがないのでどんどん下層へ降りて行く。
あれ?気が付くと34階層を超えて居るぞ?リッチは何処へ行った?
ここまでサーチを掛けながら降りて来た。リッチの反応は無い、何処へ消えたんだ?これってゾンビパウダー事件と関係があるのかな?
さて、どうする?ここまで来たんだから、もう少し降りてみるか?
サーチを掛けながらもう少し降りてみる事にする。40階層まで降りて何も無ければ帰ろう。
ここから先は冒険者が入っていない。大量の強い魔物が出る可能性もある。慎重に行こう。そう決心したのだが、大した敵は出て来なかった。
しかも40階層を目指していたのに、サーチでは38階層が最下層らしい。とことん期待を裏切ってくれるダンジョンだ。
だが、38階層に足を踏み入れた途端、雰囲気が変わった。空気が変わったとも言う。なんと言うか、アンデットの気配だ。どうやらこのダンジョンのマスターはアンデットらしい。
あれ?アンデットの王ってリッチだよな?ノーライフキングだっけ、あれも確かリッチの別名だった気がする。
最後の最後でリッチに会えるのか?
「ここまで来るとは何者だ?」
「んー、そっちが名乗ったらこっちも名乗るぞ。」
応援ありがとうございます!
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