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22.種明かし2
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「陛下は、シルビア様を愛しておられるのですよね?」
「じゃなきゃマーガレットと別れたりしないよ」
どこか作り物めいた笑顔。
……そうだ。前国王陛下や王妃様の前で笑うフィリップは、いつもこんな顔をしてた。
まさか。
「あぁそうだ。この場で不敬は無しで。今まで通りフィリップと呼んでくれ」
「ありがとうございます。ねぇフィリップ、貴方……いつから嘘を吐いていたの?」
「いつからだと思う?」
「まさか……わたくしと婚約してから、ずっと?」
「それは僕を評価しすぎ。正解はね……」
「待って! 少しだけ考えるから時間をちょうだい」
フィリップは、ずっと優しかった。甘いと思った事もあるけど彼の優しさは本物だ。あとは、少しだけ冷酷さがあればきっと素晴らしい王になる。そう思っていた。
だけどわたくしはいつの間にか、仕事を押し付けるフィリップに嫌気が差して……そんな風に思っていた事を忘れていた。フィリップが変わったと思ったのは……。
「学園に、入ってから?」
「正解。正確には学園に通う直前さ。マーガレットは学園に通う必要はない、仕事をさせると両親が言った時、そこまで大変な状況になってるんだと思った。マーガレットに常々自分の考えを言って欲しいと言われてた事もあって、初めて父に意見したんだ。僕も学園に通わず仕事をしますってね。王家が危機的状況なのは分かってたし、マーガレットと父と母、みんなで頑張らないといけない。そう思ったんだ。けど違った。父は仕事なんて全部マーガレットに押し付けたら良い。僕は子を産む女をできるだけ多く探せって言ったんだ」
「……それはまた。控えめに言ってもクズですね」
「僕もそう思うよ、マーク。父の言葉を聞いた時、怒りでおかしくなりそうだった。腹の底が熱くなり、父を殴りたくなった。生まれて初めて、怒りという感情を知ったんだ。だけど僕が父に歯向かっても無駄だ。父は国の最高権力者だからね。なんとか冷静になった時、マーガレットがいつも言っていた言葉を思い出した。貴族や王族が贅沢を出来るのは、民の代表だから。なら、父や母は? あいつらに代表としての資格はない。僕はあの瞬間、父と母を引き摺り下ろそうと決めた」
「だから……指示通り女性と……シルビア様と親しくなったの?」
彼女といちゃつくフィリップはなんだか変だった。恋は人を変えるのだと思っていたけど、違ったんだわ。
「そう。父の命令に従う必要があったからね。マーガレットと別れると決めたのも学園に入ってからだ。父は、僕とマーガレットの間に愛情がない事に気が付いていた。だから、マーガレットを正妃にして働かせて、自分のように愛する人を見つけろ。そう言ったんだよ。最初はシルビアが近寄って来た時、都合が良いと思ってた。彼女は頭が良くて人気もある。父が気に入りそうな女の子だったからね。けど、僕がシルビアを好きになったのはマーガレットを越えようとする野心があったからなんだ。僕はずっと、マーガレットには敵わないと思っていた。けど、シルビアを見てるとそんな事ない、そんな風に思えるようになった。自信がついたんだ。最初は打算でシルビアと親しくなった。けどね、僕が彼女に癒されていたのは本当だよ。マーガレットの事は、好きだったよ。けど、何か違う。ずっとそう思っていた。シルビアと一緒に居ると癒される。シルビアを愛してる。それは本当さ」
「奇遇ね。わたくしもそう感じていたわ。フィリップは優しくて、真面目で……貴方の事が好きだった。けど、本気で好きにはなれなかった」
「だよね。結婚式に誘った時、マーガレットの顔を見てやっぱり僕とマーガレットは合わないと思ったよ」
「じゃなきゃマーガレットと別れたりしないよ」
どこか作り物めいた笑顔。
……そうだ。前国王陛下や王妃様の前で笑うフィリップは、いつもこんな顔をしてた。
まさか。
「あぁそうだ。この場で不敬は無しで。今まで通りフィリップと呼んでくれ」
「ありがとうございます。ねぇフィリップ、貴方……いつから嘘を吐いていたの?」
「いつからだと思う?」
「まさか……わたくしと婚約してから、ずっと?」
「それは僕を評価しすぎ。正解はね……」
「待って! 少しだけ考えるから時間をちょうだい」
フィリップは、ずっと優しかった。甘いと思った事もあるけど彼の優しさは本物だ。あとは、少しだけ冷酷さがあればきっと素晴らしい王になる。そう思っていた。
だけどわたくしはいつの間にか、仕事を押し付けるフィリップに嫌気が差して……そんな風に思っていた事を忘れていた。フィリップが変わったと思ったのは……。
「学園に、入ってから?」
「正解。正確には学園に通う直前さ。マーガレットは学園に通う必要はない、仕事をさせると両親が言った時、そこまで大変な状況になってるんだと思った。マーガレットに常々自分の考えを言って欲しいと言われてた事もあって、初めて父に意見したんだ。僕も学園に通わず仕事をしますってね。王家が危機的状況なのは分かってたし、マーガレットと父と母、みんなで頑張らないといけない。そう思ったんだ。けど違った。父は仕事なんて全部マーガレットに押し付けたら良い。僕は子を産む女をできるだけ多く探せって言ったんだ」
「……それはまた。控えめに言ってもクズですね」
「僕もそう思うよ、マーク。父の言葉を聞いた時、怒りでおかしくなりそうだった。腹の底が熱くなり、父を殴りたくなった。生まれて初めて、怒りという感情を知ったんだ。だけど僕が父に歯向かっても無駄だ。父は国の最高権力者だからね。なんとか冷静になった時、マーガレットがいつも言っていた言葉を思い出した。貴族や王族が贅沢を出来るのは、民の代表だから。なら、父や母は? あいつらに代表としての資格はない。僕はあの瞬間、父と母を引き摺り下ろそうと決めた」
「だから……指示通り女性と……シルビア様と親しくなったの?」
彼女といちゃつくフィリップはなんだか変だった。恋は人を変えるのだと思っていたけど、違ったんだわ。
「そう。父の命令に従う必要があったからね。マーガレットと別れると決めたのも学園に入ってからだ。父は、僕とマーガレットの間に愛情がない事に気が付いていた。だから、マーガレットを正妃にして働かせて、自分のように愛する人を見つけろ。そう言ったんだよ。最初はシルビアが近寄って来た時、都合が良いと思ってた。彼女は頭が良くて人気もある。父が気に入りそうな女の子だったからね。けど、僕がシルビアを好きになったのはマーガレットを越えようとする野心があったからなんだ。僕はずっと、マーガレットには敵わないと思っていた。けど、シルビアを見てるとそんな事ない、そんな風に思えるようになった。自信がついたんだ。最初は打算でシルビアと親しくなった。けどね、僕が彼女に癒されていたのは本当だよ。マーガレットの事は、好きだったよ。けど、何か違う。ずっとそう思っていた。シルビアと一緒に居ると癒される。シルビアを愛してる。それは本当さ」
「奇遇ね。わたくしもそう感じていたわ。フィリップは優しくて、真面目で……貴方の事が好きだった。けど、本気で好きにはなれなかった」
「だよね。結婚式に誘った時、マーガレットの顔を見てやっぱり僕とマーガレットは合わないと思ったよ」
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