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⑦パーティー

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「おや、本日の主役であるカトリーヌ王女は居ないのか?」

嫌味な言い方をする国王。側で困った顔をしているクリストフ様。

パーティーには、バッチリ間に合った。リリアの予想通り会場も変更されていたが、可能性のある場所を探したらすぐ見つかった。城の地図は頭に入っているから、迷う事なく遅刻せず会場に入れた。入る時に招待状を見せるだけだから、すんなり会場入りできたわ。立食形式のパーティーは入場したら最初は歓談の時間だから誰が居るか判断しにくい。わたくし達はわざと他国の招待客に最初に挨拶をした。これで、開始時間には会場に居た証明になる。本当はクリストフ様や国王にも挨拶をしたかったのだが、人だかりだったので諦めた。このようは立食パーティーでは主催への挨拶は終わるまでに行えば良いので問題ない。

今のうちに招待された王族の方々に挨拶をしておく。

歓談の時間は、誰が何処にいるか分からない。けれど招待客は時間通り会場に入るから、遅刻すると目立つ。ましてや、ホストであるカドゥール国の国王陛下から名指しされてその場に居なければ、大きな恥となる。

それを狙ったのでしょうけど、残念ね。

「カトリーヌはきちんと来場しておりますよ。我々の為に開いて頂いたパーティーに来ないなどあり得ませんからね。この度は素晴らしいパーティーを開いて頂き誠にありがとうございます。既に何名かご挨拶させて頂いたのですが、国王陛下やクリストフ様はお忙しそうでしたのでご挨拶が遅れて申し訳ありません。カトリーヌ王女の夫になりました、リュカ・ド・ゼムと申します。どうぞお見知り置き下さい」

「なっ……!」

言葉を失う国王と、ホッとしたご様子のクリストフ様。

「この度は素晴らしいパーティーを開いて頂きありがとうございます。カトリーヌ・ド・ゼムですわ。夫はとても優秀で優しくて、わたくしを心から愛してくれますの。どうか、今後ともよろしくお願い致します」

「リュカは私を見かけてすぐに挨拶してくれたんだよ。一回しか会ってないのに、名前を覚えてくれていて嬉しかった」

最初に挨拶をした、隣国の王族の方が言いました。

「こちらこそ私の事を覚えておいて頂けて光栄です」

「私はリュカを1人を覚えるだけだが、リュカは婚約発表の時と結婚式の2回しか公式な場に出ていないだろう? 大勢の人と挨拶した筈だ。それなのに私を覚えていてくれた。とても嬉しいよ」

「それは……事前に予習したんです。すいません、ズルしたみたいで」

「ますます素晴らしいよ。カトリーヌ王女、良い伴侶を得られましたな」

「ありがとうございます。リュカはとっても真面目で、勉強熱心なんです。リュカに影響されて、弟達も更に勉学に勤しんでおりますわ」

「そうでしたか。それは素晴らしい。実は娘がローラン様と同い年でね。良ければ一度お会いしたいんだが……」

やりましたわ! ローランのお相手候補、ゲットです。

「かしこまりました。後ほど書簡を送りますわね」

「よろしくお願いします」

あまりがっついてもいけません。後で連絡を取る約束をして、会話を終わらせます。

「改めてご挨拶致しますわ。国王陛下、王妃様、クリストフ様、カドゥール国にお招き頂き誠にありがとうございます。夫と2人で行う外交は初めてですから緊張しますわ」

「なぁに、リュカが居れば大丈夫でしょう」

先程お話しした方がフォローして下さいました。きっとあの方は、リュカを馬鹿にしようとした国王の意図に気が付いています。

「そうですわね。ねぇ、リュカ」

「まだ王族の仲間入りをしたばかりで未熟な身ですが、全身全霊で妻を守ります。国王陛下、素晴らしい部屋の手配、誠にありがとうございます。部屋の時計まで完璧に整えられていましたよ」

「そっ……そうかっ……それは良かった。では、パーティーを楽しんでくれ」

リュカがクリストフ様に目配せをすると、先程まで縮こまっていたクリストフ様が嬉しそうに笑いました。まるで仔犬のようですわ。

さしずめ、リュカはご主人様かしら?

駄目よ! リュカはわたくしの夫なんだから!

最近、クリストフ様にライバル意識が湧いて参りますの。あまりに純粋にリュカを慕うものですもの。

リュカも、クリストフ様に優しいのです。最近は会う度に時間を作って2人で話しているようですわ。

「クリストフ様を見習い今後も精進致します」

ほら、またそうやってクリストフ様を褒めるんだもの。

ま、これはカドゥール国への牽制でもありますけれどね。

本日の主役の1人であるリュカが、クリストフ様を褒め称える事でパーティーは成功だと印象付けられます。リュカが時計の事や会場が変わった事を暴露すれば、恥をかくのはあちらですもの。
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