6 / 12
⑤受付嬢マチルダ(中編)
しおりを挟む誰の誘いも乗らないヴァルドがカフェ・四つ葉のクローバーの看板娘であるブリュンビルデと付き合っている・・・・・・らしい。
「それって単なる噂じゃないのか?」
「だって、相手は笑顔で誘いを断るブリュンビルデちゃんだぜ?」
「いや、本当にあの二人は付き合っているんだって!現に俺達はこの前のヴィオラ祭りの時に、ブリュンビルデちゃんがヴァルドと腕を組んで市場を歩いていたのを見たんだからな!」
ヴィオラ祭りというのは、菫の花が咲く頃になるとこの地で開催される祭り───住人にとって楽しみの一つであると同時に若い男女にとっては出会いの場でもある。
現代風に言えば合コンのようなものであると言われたら、ヴィオラ祭りがどのようなものかがイメージ出来るのではないだろうか?
「しかもだ!その時のヴァルド・・・いつもの冷笑ではなく穏やかって言うの?優しいって言うの?そんな感じで笑っていたんだよーーーっ!!!」
な、なんだってーーーっ!!!
顔はいいが目つきが悪いからなのか、どちらかといえばダークヒーロー的な印象があるヴァルドが【穏やかな笑み】や【優しい笑み】を浮かべているところを一同は想像してみる。
・・・・・・・・・・・・
「こ、怖えよ・・・」
「天変地異の前触れだよ・・・」
リア充め!!
ヴァルド、爆散しろ!!
「ヴァルドさんに彼女が出来たのはショックだけど・・・・・・」
「相手はブリュンビルデさんだもの・・・」
あの人が相手だったら、あたし達が逆立ちしても敵わないのは当然よね~
ブリュンビルデを狙っていた冒険者や薬師ギルドの職員といった野郎共は血の涙を流し、ヴァルドを狙っていた女性冒険者や薬師ギルドの女性職員達は超優良物件を取られて悔しいと思うと同時に、相手が貴族令嬢と言っても差し支えのない看板娘であれば仕方ないと悟ってしまっているのか、どこか遠い目をしていた。
(何で?!私が狙っていたヴァルドさんを後からポッと出てきた悪役令嬢なんかに取られないといけない訳!!?)
そんな中、マチルダだけがブリュンビルデに対して敵意と殺意を抱く。
最初の頃のマチルダは確かに金持ちの男と結婚し自分は外に出て働かなくてもいい───言うなれば金を思うままに使える贅沢三昧な専業主婦目的でヴァルドを狙っていた。
だが、自分でも知らないうちにマチルダは、自分に対して・・・というより他者にも一線を引いた態度を取るヴァルドの心を解かそうと本気になっていたのだ。
そんな冷徹なヴァルドに穏やかで優しい笑みを浮かべさせたのが、ブリュンビルデというカフェの給仕。
確かに彼女の外見は物語に出てくるお姫様みたいであるが、所詮はヒロインに対して嫌がらせをした結果、最後は【ざまぁ】される悪役令嬢。
元は貴族令嬢であっても今のブリュンビルデは平民。
同じ平民でも、薬草や薬に対して専門的な知識を有している自分とは格が違うのだ。
世間を知らないお嬢様に自分が狙っていた男を取られたという事実がマチルダのプライドを傷つけたのか、彼女にある思いを抱かせる。
(殺してやる!あの女を・・・悪役令嬢のブリュンビルデを殺してやる・・・!!)
嫉妬に狂う今のマチルダは悪鬼そのものであった───。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
51
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる