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2話

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ぽとりと落ちた花は、野に咲く良く見かける花だった。
行軍の際に馬上から見ることが多く、春を告げる花。
それが何処から落ちてきたのか。
何度考えても自分の口からとしか考えられないのだが。
そんな花が落ちてくる理由がわからない。
机の上の花を摘まみ上げて光へ翳す。どう見ても作り物ではなく、本物の花に見えた。

「何故だ?」

驚いたからだろうか、少しの体調不良は吹き飛んだようで少しスッキリとした胸を撫で下ろしてから、吐いた花をダストボックスへと入れた。
気持ち悪い。
俺は何かの病なのだろうか。
ふとした考えにふらりと立ち上がると俺は普段足を向けない医務室へと向かう。
其処に居たのは俺よりも年若い医者だった。

「悪い、ある病気について知っていたら教えて欲しいんだが」
「団長?どうしました」

どうぞと促されて俺は医務室に入る。
マグカップに注がれた珈琲がことりとテーブルの上に置かれた。

「まずはどうぞ、そのままで宜しかったですよね?」

ふわりと立ち上る香りを嗅いでから俺は座ると意を決した。

「花を吐く病……と言うのは聞いたことがあるか?」

まどろっこしい事は嫌いだと、単刀直入に問う。
すると軍医は何やら立ち上がると、戸棚から1冊の本を取り出した。

「この辺りに載っていたはず」

ペラペラとページを繰り、ある場所で手を止めると俺に向けて差し出してきた。
【嘔吐中枢花被性疾患】

「断言はできませんが、この病の可能性が高いですね」

軍医はくいっと片手で眼鏡を押し上げた。
通称【花吐き病】原因はわからないが、口から生花を吐き出す病。
花の種類は人により異なる。
同じ花を吐き続けることもあるが、吐く度に花が変わる事もある。
完治することもあるが、何故治るかは不明。
特効薬なし。

読んで愕然とした。
特効薬なし。

「最近また、流行りがきているようですね。何十年かに1度流行するようですが、未だに詳しくは解明されていない病です」

軍医はこくりと珈琲を飲んだ。

「どなたかお心当たりでも?」

普段穏やかに見える軍医の顔が今日は直視できずに俺は曖昧に濁すしかない。
これからどうしたらいいのだろう。
珍しくも弱気になり目を伏せた。



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