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37話
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「お姫様ー!」
「今日も綺麗!」
足元を子供達が駆けていく。
数日に1度、こうして俺はラーサティアを抱き上げて買い出しに向かう。
前日までに行きたい場所を2人で決めて、天気が良ければ向かうのだ。
このラーサティアの美貌と、子供達が読むおとぎ話の物語に出てくるような横抱きをされている姿を見て子供達はラーサティアをお姫様と呼ぶ。
厳密には王子様なのだが。
それに、俺が時折騎士達と話をしているものだから、騎士服を着ていなくても俺を騎士だと思い込んでいる子供もいる。
「申し訳ありませんニクス様」
だいぶ体重も戻りつつあるラーサティアだが、長時間は歩かせない。
せいぜい店の中を歩かせる程度にさせている。
「いや、だが子供達は真相を見抜くのだなと感心しているところだな」
俺の言葉の意味がわからないのか、ラーサティアは小首を傾げて見せる。
「お姫様だと」
「あ」
頬を染めたラーサティアは目を伏せる。
その姿が愛らしいと常々思い、もっと違う姿も見てみたいと思わせられた。
「体勢は辛くないか?」
時折、抱く腕の位置を変えてやったり、下ろしてベンチに座らせたりしている。
「はい、私は大丈夫です……ニクス様、あちらのお店ですね」
毎日飲むお茶が少なくなってきたと、今日は茶葉の買い出しに来た。
王室御用達の茶葉では無いが、それなりに安価でもラーサティアが気に入り愛飲している。
四角い缶のラベルに書かれているロゴと同じものが店先に掲げられている、可愛らしい店だ。
「下ろそう」
店先でそっとラーサティアを下ろしてやると、腕を差し出す。
其処に手を添えたラーサティアを気遣いながら扉を開いた。
扉の向こうは並べられた大きめの瓶に詰まった茶葉がところ狭しと並べられており、落ち着いた明るい雰囲気のお店だった。
「凄いですね」
「俺も来たのは初めてだ」
今まで飲んでいたのは差し入れに貰ったものたちで、正直ラーサティアが何を好むかわからなかったからだ。
最近は温めたミルクを注ぐのと、蜂蜜を落とすのが好きなようでミルクはできるだけ毎日新鮮なものを届けて貰うようにしている。
「いらっしゃいませ」
出迎えてくれたのは若い女性で、白いシャツに黒のベスト、ギャルソンエプロンをつけている。
「この茶葉を……」
俺は缶を取り出した。
畏まりましたと、女性は缶を受け取り銘柄を調べて同じものを探す。
「大変申し訳ございません、この銘柄は品切れでして……来月か再来月には入荷があるかと思われますが」
申し訳なさそうに頭を下げる女性に、俺はそれならば仕方ないかとラーサティアを見下ろした。
「今日も綺麗!」
足元を子供達が駆けていく。
数日に1度、こうして俺はラーサティアを抱き上げて買い出しに向かう。
前日までに行きたい場所を2人で決めて、天気が良ければ向かうのだ。
このラーサティアの美貌と、子供達が読むおとぎ話の物語に出てくるような横抱きをされている姿を見て子供達はラーサティアをお姫様と呼ぶ。
厳密には王子様なのだが。
それに、俺が時折騎士達と話をしているものだから、騎士服を着ていなくても俺を騎士だと思い込んでいる子供もいる。
「申し訳ありませんニクス様」
だいぶ体重も戻りつつあるラーサティアだが、長時間は歩かせない。
せいぜい店の中を歩かせる程度にさせている。
「いや、だが子供達は真相を見抜くのだなと感心しているところだな」
俺の言葉の意味がわからないのか、ラーサティアは小首を傾げて見せる。
「お姫様だと」
「あ」
頬を染めたラーサティアは目を伏せる。
その姿が愛らしいと常々思い、もっと違う姿も見てみたいと思わせられた。
「体勢は辛くないか?」
時折、抱く腕の位置を変えてやったり、下ろしてベンチに座らせたりしている。
「はい、私は大丈夫です……ニクス様、あちらのお店ですね」
毎日飲むお茶が少なくなってきたと、今日は茶葉の買い出しに来た。
王室御用達の茶葉では無いが、それなりに安価でもラーサティアが気に入り愛飲している。
四角い缶のラベルに書かれているロゴと同じものが店先に掲げられている、可愛らしい店だ。
「下ろそう」
店先でそっとラーサティアを下ろしてやると、腕を差し出す。
其処に手を添えたラーサティアを気遣いながら扉を開いた。
扉の向こうは並べられた大きめの瓶に詰まった茶葉がところ狭しと並べられており、落ち着いた明るい雰囲気のお店だった。
「凄いですね」
「俺も来たのは初めてだ」
今まで飲んでいたのは差し入れに貰ったものたちで、正直ラーサティアが何を好むかわからなかったからだ。
最近は温めたミルクを注ぐのと、蜂蜜を落とすのが好きなようでミルクはできるだけ毎日新鮮なものを届けて貰うようにしている。
「いらっしゃいませ」
出迎えてくれたのは若い女性で、白いシャツに黒のベスト、ギャルソンエプロンをつけている。
「この茶葉を……」
俺は缶を取り出した。
畏まりましたと、女性は缶を受け取り銘柄を調べて同じものを探す。
「大変申し訳ございません、この銘柄は品切れでして……来月か再来月には入荷があるかと思われますが」
申し訳なさそうに頭を下げる女性に、俺はそれならば仕方ないかとラーサティアを見下ろした。
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