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「だから、借財を肩に財産管理権諸々頂いてしまった方がいいな、と思いました。」
「なるほど…それで」
「ええ、身ぐるみ剥がして、公爵家にいられないようにしようかと…領地を手に入れた段階で私の思惑は半分以上達成していました。」
「半分?」
「恋心を踏みにじられた私の傷を彼にも受けてもらおうと思いまして…」

流石に少し言いづらそうに話すアリアナを真剣な眼差しでケイビスは見つめる。

「実は、ベスにクレメント様の気をひくように頼んだのです」

ギョッとした顔で見たケイビスにアリアナは困ったように苦笑した。

「幻滅されるかもしれませんが…ベスのために愛人の方と別れた後に、ベスからも手ひどく振られる、という筋書きでした」
「…」

絶句するケイビスにアリアナは謝った。

「申し訳ございません」
「なぜ?あなたが謝る必要はないでしょう。もともと裏切ったのは兄の方だ」
「ですが…」
「アリアナ殿の気持ち、褒められたものではないかもしれませんが…よく分かる気がします」
「ふふ、お気遣いありがとうございます。」

しばらく沈黙が流れる。先に沈黙を破ったのは、ケイビスだった。

「それにも関わらず、公爵領の立て直しを早急に尽力してくださったのはなぜですか?このまま公爵夫人として治めてくださるからでしょうか」

その声に、そうであってほしいという願いが含まれているのに気づいてアリアナは悲しげに微笑んだ。

「いいえ、ごめんなさい。そうではありません。」
「それならなぜ…」
「クレメント様とは離縁いたします。そしてクレメント様から取り上げた公爵の地位や財産権をケイビス様にお渡しして、私は公爵家から去るつもりです。お忙しいケイビス様に領地の立て直しの着手までは手が回らないだろうと思い、最低限だけは整えておこうと思いました。」
「そんな」
「私の勝手で申し訳ありませんが、受けていただけますか。」
「それは…ですが…あなたにとって、それでは全く得るものがない…」
「私は、クレメント様への仕返しのためだけに嫁いできたのです。その罪滅ぼしと思っていただければ。ですがクレメント様に関しては最後まできっちり清算していただきます。ケイビス様を巻き込んでしまい申し訳ございませんが。」

強い瞳で告げたアリアナにクレメントは小さな溜め息を一つ落として答えた。

「兄に関しては自業自得でしょう。アリアナ殿の気の済むように…もとより夫婦間の話に私が口をだすことではありません。ですが領地にかかった費用、借財を肩代わりして頂いた分に関しては必ずゾーイ家にお返しします。」

ケイビスの答えを聞いて、アリアナは頷いた。
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