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第十七章
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時間は深夜近くになっていて、忠臣は一度タクシーで家に帰り、シャワーを浴びて着替えてから、桜が運ばれた病院へと向かった。
使用人には「大切な人が怪我をしたから」と言って、両親にも伝える様に頼んでおき、またタクシーで病院へと向かう。
いつだったか、警察の仕事を扱う特番でナレーションが「眠らない街」とテンプレートの様に言っているのを聴いたのを思い出し、今となってはそれが妙にしっくりくるな、と思う。
交通機関はもう止まっている時間なのに、ネオンは煌々とついて人々が街を練り歩き、車の列は途切れる事がない。
もう少し時間が進めばそれが途切れる事もあるのかもしれないが、腕時計を見ればまだ酒を飲んでいる者などにとっては、いい気分真っ最中の時間だ。
彼女の命が危ぶまれているのに、この街は変わらない。
通りを歩いている人も、このタクシー運転手すらも、桜がどんなに素敵な女性で、そして彼女が地獄を垣間見た事を知らない。
仮に自分があの時桜に会いに行くという選択をせず、今頃桜が部屋の中で一人で冷たくなっていたとしても、この街も、人々も変わらない。
脱力してシートにもたれかかり、外の景色をぼんやりと眺めている忠臣の左目から、涙が一筋零れて頬を濡らした。
使用人には「大切な人が怪我をしたから」と言って、両親にも伝える様に頼んでおき、またタクシーで病院へと向かう。
いつだったか、警察の仕事を扱う特番でナレーションが「眠らない街」とテンプレートの様に言っているのを聴いたのを思い出し、今となってはそれが妙にしっくりくるな、と思う。
交通機関はもう止まっている時間なのに、ネオンは煌々とついて人々が街を練り歩き、車の列は途切れる事がない。
もう少し時間が進めばそれが途切れる事もあるのかもしれないが、腕時計を見ればまだ酒を飲んでいる者などにとっては、いい気分真っ最中の時間だ。
彼女の命が危ぶまれているのに、この街は変わらない。
通りを歩いている人も、このタクシー運転手すらも、桜がどんなに素敵な女性で、そして彼女が地獄を垣間見た事を知らない。
仮に自分があの時桜に会いに行くという選択をせず、今頃桜が部屋の中で一人で冷たくなっていたとしても、この街も、人々も変わらない。
脱力してシートにもたれかかり、外の景色をぼんやりと眺めている忠臣の左目から、涙が一筋零れて頬を濡らした。
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