【完結】女好きプロゲーマーが恋愛ごっこを卒業するまで

ソラ太郎

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 3戦目。ここで勝てば優勝。負ければ2位。

 どちらであっても名誉なことではあるのだが、シロサイに何かよからぬことを吹き込んだであろうメガネたちに負けたくない。
 プロゲーマーとしての名誉以前に、そういう汚い奴らに負けて黙るのは気分が悪い。

 ここで勝つか負けるかで、全てが決着する。


 2戦目で俺たちの連携的な猛攻になす術なく撃破された敵はこれまでのような姑息な技に加え、手投げ系の破壊工作を始めた。

 こちら側の隠れる場所が削られていくが、そんなことで怯んで居られない。

『適当撃ちきた』
『やば、ちょっと掠った』
『砲弾何十発持ってんだ』

 敵はなりふり構わない感じに見える。

 無茶苦茶に暴れる敵は冷静さを欠いていると取れるが、怒涛の攻撃には身を潜めながら守備良く立ち回る必要がある。

 好きに動けないのはこちらの方である。
 砲弾で弾け飛んだブロックが当たればそれだけでダメージは受ける。

『ちょっとずつ体力削られてんな』
『こんなので負けたくない』

 同感。

『高台まで全力移動。からの』
『おっけ、トラッキングね』
『追いエイムで良い』
『りょ!』

 シロサイが威嚇しつつ敵の接近を防ぐ。
 その間に俺は自らの位置取りを済ませスコープを覗き狙撃の精度を上げて待機。

『ここバレてそーな気もするけど』
『私が守るよ』
『心づよー』

 その言葉を信頼すればこそ、敵の姿が見えるその一瞬に集中できる。
 スコープを覗くと遠くの敵が画面にアップで映る代わりに視野が狭くなるため、スナイパーは狙撃体勢に入った段階で回避力はほぼ皆無なのだ。

『赤い車の向こうに1人』
『任せろ』

 シロサイの誘導でスコープを少し移動させると、車の影に隠れた人影を察知。
 狙い目はもう定まっていたのだ。敵が移動開始し、車の影から飛び出した直後に撃ち抜いた。

『ナイス』
『詰め』
『おけ』

 もう遠慮は要らない。
 残った敵へと、一気に迫った。

 これはペア戦なのだ。
 2人で協力すべきバトルで、敵が1人しか残っていないとなれば勝負は見えた。

 挟み撃ちにしてダブルで撃ち抜き、勝負は決した。


『決まったーーー!!
 1人目へのスナイパーライフルが火を噴いた時に、勝負は決まっていたようです!
 勝利! ムジンフリーリィ&シロサイ!』


 俺とシロサイは同時にヘッドホンを外し、立ち上がった。お互いに向き合うと躊躇うことなく抱きしめ合った。そのまま2人で飛び跳ねる。

「やった」
「やったよぉ高山くんーっ」

 優勝が決まった瞬間に会場内が湧き、拍手と歓声に包まれた。司会者のマイクパフォーマンスにも熱が入り全体がお祭りムードに呑まれた。

 相対する向こう側の席で2人のメガネは落ち込んでいたり頭を抱えていたりする。
 が、そんなのも俺の目には入らなかった。

 〝勝つ〟
 それだけが目的で、その目的を達成したのだ。
 これまでの大会よりも高い達成感。

「高山くん」
「ん?」

 抱き合ってた身体を離すとシロサイは俺を見上げて、言った。

「好き」

 周りは歓声で賑やかだし、俺以外の誰にも聞こえてないだろう。
 俺には聞こえていたけど、シロサイは繰り返した。

「好き!」

 今、言うのかよ。


『おめでとうございます。
 表彰式はチーム戦の後になりますが、まずはお二人に優勝インタビュー致しましょう!
 ムジンフリーリィさん、率直にいかがですか』

『やりましたー』


 生配信をするカメラ、会場にいる観客、観客席から見てくれて居るブルースさんとレッドビーさんに、順番にVサインを見せていった。


『このピースが全てを物語っていますね。
 続けて、シロサイさん、いかがですか?』


 マイクを向けると、シロサイは司会者の手ごと掴んでそれを握りしめた。
 そして大きな声で、会場全体に響かせた。


『私は! ムジンフリーリィのことが!
 好きなんです!!』


 一瞬時が止まったかのように、会場全体が静まり返った。賑やかしの音楽だけが鳴り続け、みんなの視線はシロサイに集まった。

「ふっ……」

 今かよと思ったその告白はもう、今度は俺以外にも伝わったことが明白で。

「ふっははは……あははははは。
 あはははっはっははは……」

 俺はもう堪えきれずに、泣くほどに笑ってしまった。時が動き出し、今度はみんなの視線がシロサイから俺に向けられた。


『じっ、情熱的な告白ですが、どうしましょう! 笑ってる場合じゃないですよ、ムジンフリーリィさん!』


 再度俺に向けられたマイクを前に、かっこいいことを言おうという気にもならず。
 笑いを堪えて答えた。


『シロサイは俺のことが好きなので、俺も高校時代からシロサイを好きだったことにします』


 会場は無駄に湧いたが、後から結局事務所からお叱りを受けたのだった。


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※トラッキング……動く敵を狙う
※エイム……照準
※詰め……距離を詰める

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