サンタクロースのすすめ〜留年したくない僕とヤリチンチャラ男のサンタ学〜

つむぎみか

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3. 初めてのキス。サンタの心得は守らないと?

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「恋人がいるなら、その相手としてもらうのが手っ取り早いんだけど……ちなみに今相手はいるの?」
「い、ない……」
「そうだよねぇ。リタちゃんが他の奴と一緒にいるところ、見たことないもん」

 もうここまで来たら、変な意地を張っても意味がないだろう。僕は聞かれたことに対して、全て正直に答えることにする。

「仕方ない。ここは俺が一肌脱ぐか」
「えっ⁈」
「リタちゃんの成績上げないと、俺も留年しちゃうみたいだし? 大丈夫、るからには死ぬほど射精かせてあげるから、安心してよ♡」

「まっ、待って……待って! ゃ、やるって、僕とせっ……す、するってこと……⁈」
「今そういう話の流れだったでしょ?」
「本気!? 他に方法はないの……っ?」
「そりゃあ他にもあると思うけど、覚えるにはセックスが一番はやいんだよ。リタちゃん、時間がないからさぁ」

 たしかに時間はあと一週間しかないけど!
 でもまさかサイとそんなことをしなくちゃいけないほど、僕ってば切羽詰まっている状況だったの!?

 仕方ないのかな?っていう気持ちと、いやいやおかしいでしょって思う考えがごちゃ混ぜになって、僕はなんとか今の状況を回避することが出来ないかと、必死になって頭を働かせた。

「でも、だって……アレは、好きな人とすることで……」
「俺はリタちゃんのこと好きだよ~? ちっちゃくて可愛いし、前から食べたいなって思ってた♡」
「僕は女の子じゃないってば!」

 憤慨して答えれば、あからさまに驚いた顔をしたサイがこちらを見てくる。
 えっ、なに?僕おかしなこと言った!?

「あれっ、リタちゃん。もしかして、男同士でも気持ち良くなれるって知らないの?」
「えぇっ!?」
「そっかぁ、なるほどそういうことか……知らないなら仕方ないのかな。ごめんね、まさか知らない奴がいるなんて思ってもなかったから」

 まるで可哀想なものを見るかのような視線に居たたまれなくなる。

 同性同士カップルが存在することはもちろん僕でも知っているけど、それってごく一部の人の話なんじゃないの?
 今は恋愛に心躍らせるような余裕はないけれど、いつかきっと優しくて、可愛くて、僕よりも背の小さな天使みたいな女の子と付き合うんだって夢見てた。当たり前のように相手は異性だって思い込んでいたけど、もしかして今はそんなの気にしている方がおかしいの!?

「結構常識だと思うし、そんなことあるはずがないと思ったんだけど。リタちゃん、本当に知らないの?」
「まっ、まさか!? もちろん知ってるに決まっているだろ!」

 うう……。思わず知ったかぶりをしてしまった。
 そんな常識的なことを僕は知らなかったのか……。

 教科書だけでは分からない、現代の知識というのもあるんだな。もっとちゃんとニュースを見たり、本を読んで考えをアップデートしていかないとダメだ。

「なぁんだ、びっくりした~。そうだよね? 知ってるよね?」
「う、うん。常識だもん」
「よかった。でもさ、知ってるなら男同士でセックスしたって何も問題ないよね」
「えっ、ええっ?」

 なんとか危機を乗り切れたと思ったら、今度はその新たな常識が自分自身に降りかかる。

「はやく成績を上げなきゃいけないけど、恋人はいない。目の前に自分を好きな男がいて、セックスをしようって言ってるんだよ? リタちゃんにとってイイコトだらけじゃない?」

(そ、そうなのか……?)

 当たり前のような顔で、当たり前のように言われると、その通りかも?なんて思い始めてしまう。
 本当なら初めては可愛い彼女のために取っておきたかったけど、サイで練習をさせてもらうんだって考えたら、もしかしてこれってまたとないチャンスなのかもしれない。自分より幾分も背の高い男を、彼女と見立てるのは少々無理があるようにも思えたが、これもサンタクロースになる為の試練だと思えば乗り越えられるだろう。

「大丈夫。余計なこと、何も考えられないくらい、気持ち良くしてあげるから♡」

 いつの間にか僕の隣まで近付いてきていたサイは、ついに僕が決意を固めたのを理解しているかのように、絶妙なタイミングで腰に手を添えてきた。
 導かれるように身体を向かい合わせにした状態で、サイの太腿に乗り上げるようにして座らされる。顔を覗き込んでくるサイがちょっと動けば唇と唇が触れてしまいそうで、恥ずかしくなった僕は身を捩って距離を取ろうとするけれど、がっちりと回されたサイの腕に阻まれてほんの少し離れただけに留まってしまった。

「じゃあ、まずはちゅーしよっか」
「えっ、キス!? そんなことまでするの……っ?」

 これはただの勉強なんだから、義務的に擦って出すだけ、みたいな行為で終わるかと思っていたのに、まさかのキス!?
 流石にファーストキスまで男に奪われるというのは、少し悲しすぎはしないだろうか!?

 この期に及んで嫌だという感情を隠そうともしない僕に、流石のサイも呆れたようで、大きなため息を吐くと少しだけ低くなった声で問いかけてきた。

「しょうがないな……リタちゃん、『サンタの心得』言える?」
「え……?」

 突然どうしたんだ。『サンタの心得』ってサンタ学で一番最初に学ぶ、あの心得のことか……?

「『サンタの心得』その一。ほら、言ってみて」
「……あ、愛は全ての子ども達に平等に与えよ……?」
「うん、そうだよね。だからさ、リタちゃんの愛は、全ての者に平等じゃないといけないんだよ」

 んん?
 なんだ?そのとんでも理論は。

「恋人じゃなかったらキスしちゃいけないの? ちゃんと平等に与えてくれなきゃ」

 こつん、と額をくっつけながら、サイの蒼い瞳が「ね?」と語りかけてくる。

「ほら、怖くないよ。ちょっとだけ勇気出して、くっつけてみて? きっと気持ちよくなれるから」

 ああ、こいつはこうやって数多の恋人たちを堕としてきたんだろうな、と経験の少ない僕ですら分かってしまう程に、こうして迫ってくるサイの魅力は計り知れなかった。あんなに嫌だと思っていたはずなのに、僕はいつの間にか、引き寄せられるようにそっとサイの唇に自分のそれを重ねていた。

 漫画みたいに、ちゅっ、なんて音はしない。皮膚と皮膚が触れ合って、離れた。ただそれだけの事なのに、僕の唇は燃えるように熱いし、きっと首まで真っ赤に染まっていることだろう。
 とんでもないことをしてしまったのではないかと、涙まで出てきそうだ。

 縋るようにサイを見つめれば、蕩けそうな笑みを浮かべた男は甘く囁く。


「……いい子♡」




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